米Amazon.comが音楽ストリーミングの世界に参入を計画していると米国メディアが報じている。配信はオンデマンド方式で、主にAmazon Primeのユーザーをターゲットにしている点で、同社Instant Videoサービスの音楽版に近い存在といえる。一方で従来のダウンロード方式のMP3ストアのビジネスも維持していたいと考えており、レコード会社との価格交渉や、2種類の音楽ストアでの差別化のためにどの程度試聴制限をかけるかなど、水面下での駆け引きが続いているという。

同件はWall Street Journalが3月11日(現地時間)に関係者の話として報じている。前述のように、Amazon Prime契約者を主な対象としているが、試聴制限でどの程度までユーザーが楽曲ライブラリにアクセスできるかの検討が続いているという。また現在、レコード会社との価格交渉中で、音楽ストリーミングにおける楽曲利用料の支払いは利用ベースではなく、固定金額ベースでの一括支払い方法を提案しているようだ。

Amazon.comのPrimeサービスの年額は79ドルと日本よりも高いがVODサービスが利用できるなどサービスも充実している

ある音楽権利者の話によれば、Prime向けの音楽ストリーミング提供のために全会社合計で2000万ドルの積み増し金提案が行われたともいう。一方で提示価格に対して合意していない会社もあり、同サービスへの新譜の提示を控えることも検討されるなど、細かい調整が行われているようだ。

Amazon.comは以前よりMP3ストアでのダウンロード販売実績を積み上げており、業界でも古参の1社となっているが、一方で最近は年額79ドルのPrimeサービス加入ユーザーからの収入も増やしており、主にVODサービスのPrimeユーザーへの一部無料開放で好評を得ている。

日本では配送オプション等での優遇がメインのPrimeサービスだが、米国をはじめとする一部の国ではこうした無料ライブラリへのアクセスが主な特典となっている。同社ではこのPrimeの年額を119ドルまで引き上げる予定であり、その新サービス提供の一環として今回の音楽ストリーミング提供を計画したようだ。

Amazon.comは長年にわたってPandora MediaやSpotifyといった音楽ストリーミングでのライバルらがシェアを獲得しているのを観察しており、既存のMP3ストアをそのまま活かしつつ、いかに新サービスとの間でバランスを取っていくのか腐心しているとみられる。