米Aio Wirelessは5月9日(現地時間)、年契約なしで携帯電話を利用可能なサービスを開始すると発表した。現在米テキサス州ヒューストン、同フロリダ州オーランド/タンパの3都市のみでの販売に限られているが、Aio自体は米AT&T子会社であり、AT&Tの全米規模のカバーエリアを4G LTE含めて利用できるのが特徴。先日、契約フリープランを大幅に拡充したT-Mobileへの対抗とみられている。
Aio Wireless (「エイオ」と読む)は3種類のスマートフォン料金プランと1種類のタブレット用料金プランを持つ。スマートフォン料金プランは基本的に通話/データ通信ともに無制限となっているが、1月あたりに高速通信可能な容量に応じてプランが分かれている。「Aio Smart」はちょうど中間にあたり、月額料金55ドルでデータ通信2GBまでの高速通信が可能。「Aio Pro」は月額70ドルで7GBまでとなっている。一番安価な「Aio Basic」は月額40ドルで契約可能だが、データ通信は250MBまでに限定されている。またタブレット用契約プランとして、月額15ドルで250MBのデータ通信が可能。こちらには音声通話は含まれていない。また各々のプランのデータ通信容量上限を超えた場合、月額10ドルで1GBの通信容量を別途購入できる。BYOD (Bring Your Own Device)プランも用意されており、SIMロックフリー端末を自分で持ち込んでAio Wirelessを利用することも可能。その場合、10ドルの基本料金でまずSIMを購入する。
一度契約したプランは自動更新で次の月へと持ち越せるが、更新前であれば自由にキャンセルして利用を止められる。いわゆるプリペイドサービスにあたるもので、ポストペイドを中心としたAT&Tと別ブランドとして立ち上げた形となる。現在、3位以下のキャリアを中心にポストペイド契約が全体に低調で、プリペイド比率が増加する傾向が顕著になっている。特に第4位のT-Mobileは先日のiPhone販売開始に合わせて今回のAio Wirelessに近い年契約不要の料金プランを導入し、こうしたトレンドに乗ろうとしている。わずか1カ月程度だが、AT&Tが急遽プリペイド専門プランを立ち上げた理由はここにあると関係者らは指摘している。
とはいえ、Aio Wirelessが多くのユーザーにとって魅力あるサービスになるのはまだ時間がかかるとみられる。1つはサービス提供地域の狭さで、現在は上記3都市のごく一部のストアのみで展開され、今後数週間で3都市内での提供ストアが増えていく。そして来年いっぱいにかけて全米規模でのサービス展開を進めていくとAio Wirelessでは説明している。カバーエリア自体はAT&Tのものをそのまま利用しているため、他のプリペイド専業キャリアに比べると快適だといえるが、実際に多くのユーザーがサービス購入を行える広域展開にはまだしばらくかかるだろう。
あとは端末とサービス料金が若干高くつくのも若干頭の痛い問題だ。例えば低価格端末であればZTE Preludeが49.99ドル、Nokia Lumia 620が179.99ドル、ZTE Veloxが179.99ドルといった値段でスマートフォンが購入できる。だがiPhoneを利用する場合は、中古iPhone 4の8GBが349.99ドル、新品iPhone 4の8GBが449.99ドル、中古iPhone 4Sの16GBが499.99ドル、新品iPhone 4Sの16GBが549.99ドル、新品iPhone 5の16GBが649.99ドルといった具合に、中古品であっても比較的高めの料金設定になっている。2年間の縛りがないとはいえ、最新製品が200ドルで購入可能な状況に比べ、ユーザーがこれら端末にどれだけ魅力を感じるかは微妙だといえる。また料金自体もAT&Tの月額サービス料金と大きく変わらず、データ通信も含めて無制限で利用可能なプリペイド専業キャリアに比べれば、容量キャップ付きのAio Wirelessのサービス料金体系は若干割高だと考える。今後ユーザーの動向を見つつ、新しいサービス施策を打ち出してくることに期待したい。