ちなみに、通常のサイクルもスーパーサイクルも、そもそもはAppleの製品投入タイミングの中で生まれた概念だ。テクノロジー業界では新しいモノをいち早く届けることが是とされている中で、Appleは、1年に1度ではなく2年に1度というゆったりとしたペースを設定した。
ユーザーにとって受け入れやすいものであり、Appleのハードウェアとソフトウェアの作り方にも反映されてきた。もちろん、iPhone向けのアプリ開発者にとっても、ハードウェアが緩やかに変化した方が、より多くの人にアプリを届けやすいプラットホームになりうると言える。
買い換えサイクルのコントロールについても、Appleが施策を打っていると考えられる。今回の決算発表のカンファレンスコールの中で、おそらく1つ目の山とカウントされているスーパーサイクルについて、Tim Cook CEOは言及している。それはiPhone 6だったという。iPhone 6はそれまで4インチだった画面サイズを4.7インチ、5.5インチへと大型化させ、多くのユーザーに対して訴求することに成功した。特に中国市場の立ち上がりに勢いを付け、Appleにとっては米国市場に次ぐ第二の売上規模を誇る市場へと急成長させた。
これまでの2年から、サイクルを長期化させたスーパーサイクルを今年仕掛けるとしたら、その理由は、「iPhone 6の買い替え需要を巻き取るタイミングは、2年ではなく3年だ」とAppleが判断したからだと考えている。
スマートフォンの買い換えサイクルは2020年頃までに、緩やかに2.5年程度へと長期化していくとの予測がある。既にスマートフォンの基本性能は頭打ちになるほど充実しており、2017年秋にリリースされるiOS 11は、2013年発売のiPhone 5sをサポートするほどだ。また、WeChatやLINE、Facebookなどのメッセージングアプリ、SNSアプリの多機能化で、端末の買い換えなしに生活インフラに対応できる道も拓けており、必ずしも最新のスマートフォンが生活を豊かにするとは限らなくなった。そうした環境の変化から、2年ではなく3年というサイクルを選択し、2017年モデルに、iPhone 6以来の「山」を作り出していこう、と考えが覗ける。
今回の決算では、Appleがある程度許容と予測をしてきた下落トレンドが続かなかった意味で、ポジティブなサプライズだった、と考えてよいだろう。Apple以上に厳しくなるのは、Androidデバイスを製造する競合メーカー、ということになる。