台湾のASUSTek Computerは、TAITRA(台湾貿易センター)が主催した日本の報道関係者向け取材ツアーの中で記者説明会を開催。既に台湾などで販売をしているAndroidスマートフォン「ZenFone 3」の開発に関する説明とともに、日本市場には9月に投入することを明らかにした。

台湾のASUSTeck Computer(ASUS本社)

ZenFone 3は、日本でも好評を博しているSIMフリースマートフォン「ZenFone 2」の後継機種となる。6月に台湾で開催された国際展示会「COMPUTEX TAIPEI 2016」と同時期に発表されており、日本でもリリースが待望されている人気機種だ。

現在、台湾をはじめとする国では、5.5型「ZE551ML」と5.2型「ZE552KL」の2機種に、LPDDR3メモリが3GBまたは4GB、ストレージが32GBまたは64GBのモデルが発売されている。プロセッサにQualcommのSnapdragon 625(MSM8953)を採用したミドルハイクラスのスマートフォンで、高品質なデザインながら高いコストパフォーマンスが特徴だ。

日本でも発売が予定されているZenFone 3

今回のASUSTeck Computer記者説明会では、プロジェクトコンセプトデザイン部門上席エンジニアのロッシ・リン氏が、ZenFone 3の特徴でもある高品位なデザインの秘密を話してくれた。

プロジェクトコンセプトデザイン部門上席エンジニアのロッシ・リン氏

ZenFone 3はZenFone 2と比較して、いくつかの向上しているポイントがある。1つはやはり高級感であり、高級時計をイメージして開発されているそうだ。また、ZenFone 2のプラスチックを多用した筐体に対し、ZenFone 3はガラス(両面ガラス)と金属(アルミ)が多く採用されている。ところが、ZenFone 2に比べ重量は約10%、厚さでは30%もの軽量薄型化を実現した。

背面はアルミ製に見えるが、実際にはガラスの下に特殊なフィルムを貼り付けるという手法で軽量化を図っている。フィルムには強度を保つための樹脂を組み合わせ、十分な強度も確保。また、両面のガラスはコーニング社のGorilla Glass 4だ。強靭なガラスを2.5Dガラスとして組み込んだことは、グリップ感の良さにも貢献している。

アルミではなく、金属風処理をした特殊樹脂パネルをガラスと組み合わせている

「アルミ風」フィルムの採用には別の理由もある。本体の背面などに実際のアルミを使用すると、電波を遮断してしまう可能性があるからだ。アルミを用いる場合、LTE/3GやWi-Fiなどのアンテナが入る上下の部分にプラスチックを採用する必要がある。一体感ある背面デザインとするために、実際のアルミではなく、「アルミ風」フィルムを採用した一面もあるわけだ。

ボタン類も工夫されている。ホームボタンなどは、ボタンを示すアイコンをガラス面の下にプリントしていて、一体感を出すのに一役買っている。ZenFone 2では背面にあったボリュームキーが側面に移動し、背面にはタッチ型の指紋センサーを新たに配置した。ボリュームキー位置の変更についてリン氏は「社内でも従来と同じく背面はボリュームにしたほうがいいのではないかという意見もあった。だが、ロック解除(指紋センサー)のほうがお客さまの使い勝手に、より大きな影響を与えると判断した」と述べた。

なお、ボタンに関しては、初期の段階でSamsungのGalaxyシリーズのような物理キーも検討されていたという。実際には採用されなかったが、その可能性があったことは非常に興味深い話であった。

多くのパーツを見せていただいたが、どれも高品質かつ高級感が伝わってくる

デザイン全般の苦労に関して、リン氏は「金属のような高級感を、製造段階で再現できるかが重要なポイントだった。中国や韓国のサプライヤーと1,000枚以上のサンプルを作り、半年ほど研究した」と話している。その成果が、ZenFone 3に見られる妥協のない高級感を持ったデザインへと反映されているのだ。

今回の訪問では、発売予定のフリップ型ケースも披露されている。さらに、海外で流通しているZenFone 3のフリップケースとは別の製品も用意しているとのこと。先行して発売されているのは、これまでのZenFone 2と同じく前面のフリップ部に窓が開けられ、閉じた時にはその窓に各種情報が表示されるというものだ。

未発売のタイプは、液晶部をフリップですべて覆い隠すが、着信や通知などがあると、フリップの周囲が光って教えてくれるというもの。後者は珍しいタイプの製品なので、ZenFone 3の日本投入の際には、同時に発売して欲しいと感じた。

販売を予定している新フリップケース

ASUSTek Computerで説明を受け、ZenFone 3に対する期待が一層ふくらんだ。実際に台湾の市場に出て話も聞いてみたが、5.2型モデルは品薄状態であるようだ。9月予定の日本発表がとても楽しみである。