カドカワ ファミ通グループ代表の浜村弘一氏

カドカワ ファミ通グループ代表の浜村弘一氏は15日、東京都・中央区の自社セミナールームにて、講演「2016年春季 ゲーム産業の現状と展望」を実施した。

本講演は毎年2回、エンターテインメント業界を担当するマスコミ関係者を対象に実施。最新マーケティングデータをもとに、浜村氏がゲーム業界の状況を分析するもので、今回のテーマは「リアルとバーチャルの消えゆく境界」。国内・海外の市場動向をはじめ、VR(バーチャルリアルティ 仮想現実)やコンピュータゲームやビデオゲームを用いた競技「eスポーツ」の話題について幅広く解説した。

今回の注目は、ゲームを皮切りに広がりつつあるVR市場。2014年頃から「ハコスコ」(1,000円~)や「Gear VR」(14,000円前後)などのスマートフォンで利用できる手軽なVRシステムが登場し、2016年には「Oculus Rift」(599ドル)、「HTC Vive」(799ドル)といったハイスペックPCを必要とする高性能VRシステムが次々に発売。さらに2016年春にはPCやスマホを不要とするオールインワンタイプ「Sulon Q」(599ドル前後)が、2016年10月にはSCE「PlayStation VR」(4万4,980円)がいよいよリリース予定となっている。

「秋までには価格・性能が異なるあらゆるターゲット層にフィットするVR製品が出揃う」とVR熱の高まりを力説した浜村氏は、VRの臨場感を最大限に引き出すHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の視野角についても言及。1990年代に登場したHMDの初期モデルの視野角は20°、2010年代の3D対応HMDは40°といったものであったが、2016年には視野角は110°と大きく広がり、さらに昨年行われた「E3 2015」では視野角180~200°のHDMも発表された。その進歩の要因は、スマホの普及によってモニターが進化し、高精細なものが安くなったことによるものだと分析した。

また、浜村氏は、ハイスペックVRとしては「PlayStation VR」が価格で有利だが、欧米ではPCゲームを楽しむユーザーも多く、認知度としては「Oculus Rift」が現在のところ一番。しかし、日本経済新聞電子版“ソニー「プレステVR」、399ドルで試すヒットの法則”と題した記事において、PSプロダクト事業部 事業本部長 兼ソフトウェア設計部門長・伊藤雅康氏が将来的には「PlayStation VR」がPCに対応する可能性があることを明かしたことで、今後「PlayStation VR」が価格的優位性でデファクトスタンダードになる可能性を秘めていると予想。

一方、VRには「VR酔い」というものが存在するほか、リアルなホラーゲームでの心臓への負担や、オンラインハラスメントといった問題も抱えており、これらの問題にも慎重に取り組み、対応策を考えなければならない」と話した。

最後に浜村氏は、「『ingress』や『Pokemon Go』、VR、eスポーツなど、最近のゲームの話題には共通点がある。それは『ゲームがリアルに飛び出し始めた』ということ。ゲームとリアルの世界が地続きに繋がり、バーチャルとリアルの境界がなくなり始めたというのが今のトレンド」と述べ、加えて「新しいゲーム性をあと押してムーブメントを大きくしたのはSNSによるプロモーション。また、ユーザー個々が拡散力を持ち、パワーを持ったのは、スマートフォンの普及によるものが大きい」と語った。