キャリアのスマートフォンよりも低料金で利用できる"格安スマホ"が注目を集めている。格安スマホとは、MVNOサービスのSIMカードを使用したスマートフォンのことで、実際にSIMカードと端末をセットで提供しているサービスもあるが、SIMカードのみを提供し、端末はユーザー自身が用意したものを使うというサービスも多い。

また最近、MVNOサービスで増えているのが、090/080/070番号で通話できる音声通話機能付きのSIMカードだ。これらの音声通話SIMを利用すれば、キャリアのスマートフォンとほぼ同等の使い方ができるため、今後はキャリアからMVNOサービスへの乗り換えも増えてくると思われる。

そこで本稿では、各MVNOサービスの音声通話SIMとして、So-netの「So-net モバイル LTE +Talk S2プラン」、ケイ・オプティコムの「mineo デュアルタイプ」、IIJの「みおふぉん ミニマムスタートプラン」、ビックカメラの「BIC SIM音声通話パック ミニマムスタートプラン」、BIGLOBEの「BIGLOBE LTE・3G 音声通話スタートプラン」、また格安スマホとしてイオンの「イオンスマホ」を比較し、どのサービスが最もリーズナブルで使いやすそうかについて考えてみたい。

スマホが格安になる"音声通話SIM"とは?

まずMVNOサービスと音声通話SIMについて簡単におさらいしておこう。MVNOサービスとは、仮想移動体通信事業者(MNVO)が提供するモバイルデータ通信サービスのことで、キャリアの移動体通信網を借り、低料金でサービスを提供しているのが特長。データ通信の通信速度や利用できるデータ量を制限することで、低料金を実現している。

MVNOサービスを提供する事業者としては、インターネットプロバイダのほか、家電量販店やスーパーなど、様々な企業が参入しており、それぞれ月額料金やデータ量、付随サービスなどに特徴があるサービスを展開している。

MVNOサービスでは、これまでデータ通信専用のSIMカードが多く提供されてきたが、ここへ来て増えているのが、データ通信に加えて、090/080/070番号で通話も利用できる音声通話SIMだ。データ通信専用SIMでも、IP電話アプリなどを使えば音声通話が可能だが、050番号しか使えないことや、通信状況によっては音声品質が劣化するといったデメリットもあり、キャリアのスマートフォンと同様に利用できるとは言い難かった。

だが、音声通話SIMでは090/080/070番号を使うことができ、音声品質もキャリアのスマートフォンと同等となる。さらに、音声通話SIMの多くは、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)での転入にも対応しているため、これまでキャリアで使っていた電話番号のまま乗り換えることもできる。キャリアのスマートフォンの料金が高いと感じている人にとっては、音声通話SIMが最有力の乗り換え先と言えるだろう。

各社の音声通話SIMを比較してみた

キャリアからの乗り換え先としても有力な選択肢となり得る音声通話SIMだが、料金やサービス内容は、各社ごとに様々だ。そこで、実際に音声通話SIMを利用する際に、何を基準にサービスを選択すれば良いのかを考えていきたい。

今回は、音声通話SIMでも割安な月額2,000円以下のおもなサービスを比較してみたので 紹介しよう。

図1 月額2,000円で利用できる音声通話SIMおよび格安スマホ(金額はすべて税抜) (※拡大画像はこちら)

まず注目したいのは、各サービスが対応するサービスエリアだ。前述の通り、MVNOサービスではキャリアの通信網を借りて、モバイルデータ通信サービスを展開している。そのため、どのキャリアの通信網を利用しているかによって、サービスエリアが異なっている。 So-netやIIJ、BIGLOBEなどのMVNOサービスでは、NTTドコモのXi・FOMA網に対応しており、サービスエリアもXi・FOMAと同様となる。一方、ケイ・オプティコムが提供する「mineo」では、KDDIのau 4G LTE網に対応する。ここで注意しておきたいのは、同サービスが対応するのがKDDIのLTE網のみであり、3G網には対応していないことだ。そのため、3Gでしか通信できないエリアでは、データ通信が利用できないことになる。なお、同サービスの音声通話では、KDDIの3G網を利用している。

また、各MVNOサービスで利用可能な端末が、対応する通信網によって異なることにも注意が必要だ。So-netなどのドコモの通信網に対応するMVNOサービスでは、SIMフリー端末に加えて、ドコモのXiまたはFOMAに対応する中古端末を利用することができる。家族などが使っていたドコモのスマートフォンを再利用できるという面でも選択肢は幅広いと言えそうだ。

一方、ケイ・オプティコムのmineoの場合、iPhone 5s/5cなどのSIMフリー端末とKDDIの一部のLTE対応端末のみで利用が可能だ。LTE非対応の3G対応スマートフォンなどでは利用できないため、選択肢は限られてくると言える。

"格安スマホ"は本当にお得か?

次に見ていきたいのは、音声通話SIMのみを提供するサービスと、いわゆる格安スマホと呼ばれる端末とSIMをセットで提供するサービスの違いだ。上記の一覧表では、月額2,000円以下で利用できる格安スマホとして、イオンの「イオンスマホ」を取り上げているが、同サービスでは5インチの3G対応Androidスマートフォン「geanee」が提供される。

なお、イオンスマホのSIMカードには、一覧表にもあるBIGLOBEの音声通話SIMが採用されており、SIMカードの通信速度は下り最大150Mbpsだ。しかし、geaneeが3G対応端末であり、LTEには非対応のため、端末で利用できる通信速度はFOMAの下り最大14Mbpsとなっている。端末代込みで月額2,000円以下という料金は魅力的と言えるが、高速通信を利用したい人にとっては、下り最大14Mbpsという通信速度は不満かもしれない。

このように、格安スマホとしてSIMカードと端末がセットで提供される場合、安さだけでなく、端末の通信方式などのスペックにも注目しておきたいところだ。その点、SIMカードのみを提供するサービスの場合、自身で端末を用意することになるため、目的に応じてLTE対応端末などを自由に選択できるのがメリットと言える。

月額2,000円以下で最もリーズナブルなプランは

最後に注目したいのは、月間に利用できるデータ量だ。MVNOサービスの各プランでは、月間の総量制限として、高速通信を利用できるデータ量が定められており、上限値を超えると通信速度が低速に制限される。ケイ・オプティコムの「mineo デュアルプラン」、BIGLOBEの「BIGLOBE LTE・3G 音声通話スタートプラン」、イオンの「イオンスマホ」では、月間1GBのデータ量が設定されている。

また、IIJの「みおふぉん ミニマムスタートプラン」、ビックカメラの「BIC SIM音声通話パック ミニマムスタートプラン」では、月間1GBの"バンドルクーポン"を付与し、高速通信を利用したいときにクーポンを使うという形式になっている。

一覧表の中で、月間のデータ量が最も多いのは、So-netの「So-net モバイル LTE +Talk S2プラン」であり、他社よりも500MB上回る月間1.5GBの高速通信を利用可能だ。なお、各社のサービスでは、データ量を追加チャージすることも可能だが、たとえばIIJやビックカメラ、BIGLOBEのサービスでは、500MBチャージするためには1,500円の追加料金が必要になる。月額2,000円以下で利用できるプランとしては、So-net モバイル LTE +Talk S2プランのデータ量が最も多く、リーズナブルと言えそうだ。

なお、同プランの月額1,890円という料金には、So-netのコース料金として「モバイルコース」(月額200円)が含まれている。固定回線のプロバイダとして、So-netを利用している場合、モバイルコースの料金は不要なため、月額1,690円というさらに割安な料金で利用することが可能だ。

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本稿でも紹介した通り、音声通話SIMを選ぶ際には、月額料金はもちろん、対応する通信網や利用可能な端末、月間のデータ量などをよく吟味するとよいだろう。家族などが使ったドコモの中古スマートフォンが余っている場合には、ドコモのXi・FOMA網に対応したMVNOサービスの月額2,000円程度のプランがおすすめだ。中でも、月額1,890円で月間1.5GBのデータ量が使えるSo-net モバイル LTE +Talk S2プランは、他社と比べて最もリーズナブルでお得な選択肢と言える。キャリアのスマートフォンなどからMVNOサービスの音声通話SIMへの乗り換えを検討している人は、ぜひ参考にしていただきたい。