LINEが提供する無料通話・チャットアプリ「LINE」では、5月2日にiPhone版のバージョンアップが実施され、電話番号に有料で発信できる通話サービス「LINE電話」に対応した。Android版LINEでは、すでに3月よりLINE電話に対応しており、今回のiPhone版のバージョンアップによって、iPhoneでもAndroidスマートフォンでもLINE電話が使えるようになった。

スマートフォンでの音声通話と言えば、NTTドコモが6月1日より国内通話を定額にする新料金プランを提供する予定だ。今後、他キャリアからも同様の通話定額プランが発表される可能性もあるが、あまり通話する機会が多くない人や、月によって通話時間が変動する場合などは、必ずしも通話定額プランがお得になるとは言えない。そのため、スマートフォンの費用をより低く抑えたいユーザーにとっては、LINE電話などの格安通話サービスの活用は、これからも選択肢になりそうだ。

本稿では、数あるスマートフォン向け格安通話サービスの中から、より実用性の高いサービスとして、「LINE電話」と「G-Call」を比較してみたい。

「LINE電話」と「G-Call」の概要をおさらい

まずは、LINE電話とG-Call、両サービスの概要をおさらいしておこう。

LINE電話は、従来のLINEアプリ同士の無料通話とは別に、国内外の固定・携帯電話に有料で発信できる通話サービス。iPhone版およびAndroid版のLINEアプリから利用でき、格安な通話料で電話番号宛に電話をかけられる。

LINEアプリから格安な通話料で電話をかけられる「LINE電話」

料金の支払いは前払い方式となり、通話時間分をチャージする「コールクレジット」または、30日間上限時間(60分間)まで通話できる「30日プラン」を事前に購入する必要がある。決済方法は、アプリ内課金のほか、クレジットカード払い、LINEプリペイドカード、LINEコイン(Android版のみ)を利用可能だ。

コールクレジットを利用した場合の通話料は、携帯電話宛が14円/分、固定電話宛が3円/分。また、30日プランの料金は、固定電話と携帯電話に通話可能なプランが390円/30日間(通話料6.5円/分)、固定電話のみに通話可能なプランが120円/30日間(通話料2円/分)。ちなみに、通話料はユーザーが支払う最終金額となっており、これ以上、消費税などがかかることはない。

なお、LINE電話を利用する場合、携帯電話番号を使ってSMSまたは音声で認証を行う必要があり、Facebook認証のみのアカウントではLINE電話は利用できないので注意しよう。

一方のG-Callは、ジーエーピーが提供する格安通話サービス。通話発信する際に、相手の電話番号の前に4桁の番号を付加することで、格安な通話料で電話をかけられる。iPhoneおよびAndroidスマートフォン向けに専用アプリが用意されており、アプリから通話発信することで4桁の番号を自動で付加して電話をかけることが可能。なお、利用にはあらかじめ申込みが必要となる。

10円/30秒の通話料で電話をかけられる「G-Call」

G-Callの通話料は、携帯・固定電話宛ともに10円/30秒。LINE電話と比べると若干割高に感じられるが、それでも各キャリアのスマートフォンにおける従来の料金プランの通話料20円/30秒(税別)の半額だ。さらに、G-Callは国際回線を利用しているため、消費税は非課税となっている。

LINE電話とG-Callはどう違う?

通話料の単純な比較では、LINE電話のほうがG-Callよりもお得に見えるが、ここからは通話料以外の両サービスの違いについて見ていきたい。

まず、LINE電話とG-Callが大きく異なるのは、通信方式の違いだ。LINE電話は、LINEアプリ同士の無料通話と同様に、パケット通信を利用する通話サービスとなっている。LINE電話では、「複数の大手回線事業者のプレミアム回線を利用」し、音声品質にも自信を持つとされるが、一般的にはパケット通信を利用した通話の場合、電波状況が悪い環境では、スマートフォンの通常発信と比べて音声品質が劣化したり、遅延が発生することがある。

また、Wi-Fiで利用する分には問題はないが、LTE/3Gで通信した場合、パケット定額サービスで定められた月間7GBなどのデータ量を消費することにも注意が必要だ。

一方、G-Callは、パケット通信ではなく電話回線を利用する通話サービスとなっている。先述の通り、4桁の番号を付加して発信するのがポイントで、これにより専用の電話回線を経由した通話となり、格安の通話料で利用できる仕組みだ。電話回線を利用するため、音声品質はスマートフォンの通常発信と同等で、音声の遅延も少ないのが特長だ。

また、携帯電話へ発信した際の相手への電話番号通知に関しても、両サービスでは違いがある。G-Callの場合、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど、どのキャリアの携帯電話へ発信した際にも、自身のスマートフォンの電話番号を通知でき、スマートフォンの通常発信と同様だ。

一方、LINE電話では、番号通知機能を搭載しているものの、正常に通知されるかどうかは相手のキャリアによって対応が異なっている。ソフトバンク宛の場合、自身のスマートフォンの電話番号が通知されるが、KDDI宛の場合は相手の端末によっては、「81」が最初に付いた国際電話番号形式の電話番号が通知されることがある。また、NTTドコモ宛の場合は、すべて"非通知"となる。

相手のキャリアによって番号通知の可否が異なるのは、LINE電話がパケット通信を利用していることによる要因が大きい。スマートフォンの電話回線を利用する通話ではなく、IP電話の通話に対し、LINEの認証に使用した電話番号を通知する仕組みを用いているためだ。なお、LINE電話では、これらの仕組みを悪用した発信番号偽装を防止する対策が導入されている

LINE電話にはプリペイド方式の注意点も

先述の通りLINE電話の通話料は、あらかじめ通話料をチャージする前払い方式となっている。クレジットカードなどを登録することなく、気軽に利用できるというメリットもあるが、いくつかの注意点もある。

まず、通話の途中でチャージした残高がなくなってしまった場合、通話は切断される。残高がなくなる1分前に警告音が鳴るため、切断前に通話を切り上げることは可能だが、通話中にチャージを行うことはできない。そのため、残高が少ない状態では、重要な通話に使うのは避けたほうが良さそうだ。

また、通話料がより割安な30日プランの場合、30日経過後に余った残高を繰り越しできないことにも注意が必要だ。1回あたりの通話料は割安になるものの、使い切らずに期間が過ぎてしまうと、コールクレジットを購入するよりも実際には割高になる可能性がある。頻繁に通話する人であれば、30日プランのほうがお得になると言えるが、そこまで通話時間が長いのであれば、キャリアの音声定額プランも選択肢に入ってくるのが悩みどころだ。

一方、G-Callは、クレジットカードによる後払い方式となっており、月額基本料などもかからないため、使った分だけ支払う形となる。チャージした金額が"塩漬け"になってしまったり、"たくさん通話しないと損"といった状況がないのは、同サービスのメリットと言えるだろう。

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スマートフォン向け格安通話サービスについて、LINE電話とG-Callを比較してきた。通話料の安さではLINE電話に軍配が上がるが、音声品質の良さや番号通知などを含めた総合面では、G-Callも選択肢になりそうだ。とりわけ、ビジネスなどの重要な通話では、音声品質や番号通知が重要であり、チャージした残高がなくなって通話が途中で切断されてしまうリスクを考えれば、LINE電話は使いにくいかもしれない。もちろん、両サービスとも初期費用や月額基本料は無料なので、シーンによって使い分けるという使い方も良いだろう。スマートフォンの通話料を節約したい人は、ぜひ参考にしていただきたい。