アップルのiPhone 5s/5cが9月20日に発売されてから、早くも3週間が経つ。かねてからiPhoneを取り扱っていたソフトバンク、KDDIに加え、今回からNTTドコモが参入したことで、新型iPhoneの販売では三つ巴の戦いが繰り広げられている。どのキャリアの新型iPhoneがもっとも売れているのかに注目が集まるが、「BCNランキング」によれば、10月6日までの累計ではiPhone 5s/5cともにソフトバンクの販売台数が首位であるという。そこで本稿では、新型iPhoneのネットワークとキャリアメールに着目し、ソフトバンクが販売台数首位となった理由を考察していきたい。

家電量販店での実売データにもとづくランキングを公開しているBCNランキングでは、9月20日から10月6日までの新型iPhoneの累計販売台数のキャリア別順位を紹介している。それによれば、ハイエンドモデルのiPhone 5sの販売台数は、ソフトバンク、ドコモ、KDDIという順で、ソフトバンクがもっとも売れている。また、エントリーモデルのiPhone 5cの販売台数でも、首位となったのはソフトバンクだという。

同記事では、各社の新型iPhoneの違いとして、「ネットワーク」と「キャリアメール」の2つを紹介しているが、本稿ではソフトバンクが首位となった理由を探りながら、各社のネットワークとキャリアメールの違いについて詳しく見ていこう。

iPhone 5s(左)とiPhone 5c

各社のLTEネットワークは周波数帯に注目

まず、新型iPhoneのネットワークといえば、高速通信のLTEだ。iPhone 4や4s、フィーチャーフォンから新型iPhoneに機種変更する場合など、LTEを初めて利用するユーザーも多いかもしれないが、各キャリアのLTEを比較検討する際に、注目すべきなのが周波数帯だ。各社がLTEに利用している周波数帯には違いがあり、ドコモは800MHz・1.5GHz・1.7GHz・2.1GHz帯、KDDIは800MHz・1.5GHz・2.1GHz帯、ソフトバンクは1.7GHz・2.1GHz帯をそれぞれ利用している。なお、ソフトバンクは2014年4月より900MHz帯でのLTEを提供開始する予定。

ただし、端末が対応する周波数帯にも注意が必要で、上記の周波数帯のうち1.5GHz帯は新型iPhoneには対応していない。また、前機種にあたるiPhone 5では800MHz帯には対応しておらず、KDDI版のiPhone 5と新型iPhoneではネットワーク品質が大きく異ることが問題となっている

このようにキャリアが利用する周波数帯と、端末が対応する周波数帯の両方をチェックする必要があるが、新型iPhoneが対応する周波数帯をまとめると、ドコモは800MHz・1.7GHz・2.1GHz帯、KDDIは800MHz・2.1GHz帯、ソフトバンクは900MHz・1.7GHz・2.1GHz帯となる。対応する周波数帯(バンド)の数でいえば、ドコモとソフトバンクが3バンドであるのに対し、KDDIは2バンドとなっている。また、ドコモとKDDIが利用している800MHz帯、ソフトバンクが来年春から提供予定の900MHz帯は、つながりやすいとされるプラチナバンドのLTEであり、各社のプラチナバンドLTEのエリアの今後の広がりにも注目しておきたい。

ドコモ版iPhoneはキャリアメールに注意

各社の新型iPhoneの違いとして、ネットワークのほかにキャリアメールがある。「LINE」などのチャットアプリや「Gmail」などのWebメールサービスの普及により、キャリアメールの存在感は薄れてきているものの、携帯電話ユーザーとのやりとりなどでは、依然キャリアメールは欠かせない存在だ。各社のiPhoneにおけるキャリアメールについて見てみると、メールを利用するためアプリや通知方式などが異なっている。

iPhoneには、「メッセージ」と「メール」というアプリが搭載されているが、ソフトバンクの場合、それぞれで異なるメールアドレスを使用できる。メッセージアプリでは「@softbank.ne.jp」というメールアドレスを使用でき、キャリアメールと合わせてSMS、iMessageを同一のアプリで管理することが可能。また、新着メールのプッシュ通知にも対応する。さらに、メールアプリでは、「@i.softbank.jp」という別のメールアドレスを使用可能だ。@i.softbank.jpメールは、リアルタイム受信には対応していないが、ソフトバンク独自の「新着メールお知らせ」機能が提供されており、受信したメールにすぐに気付くことが可能。

KDDIの場合、使用できるメールアドレスは「@ezweb.ne.jp」という一つだけだが、メールアプリとメッセージアプリのどちらでも利用可能となっている。どちらのアプリで利用した場合もプッシュ通知を受けることができるが、同時利用はできない。

新型iPhoneから参入したドコモは、キャリアメールの対応では出遅れている。発売日から遅れて10月1日より、ようやくキャリアメールの「spモードメール」に対応したが、キャリアメールを利用できるのはメールアプリのみとなっている。また、プッシュ通知には対応しておらず、手動または15分毎などの一定間隔ごとにサーバーに問い合わせて新着メールを確認することになる。12月中旬より着信通知機能が提供され、2014年1月にリアルタイム受信に対応する予定。なお、ドコモはspモードメールに代わる新たなメールサービス「ドコモメール」を10月24日より提供予定だが、iPhoneでは当初ドコモメールの提供は行われず、12月中旬より対応する予定だ。

iPhoneにおけるキャリアメールで注目すべき点は、利用するアプリが2種類あることだ。ソフトバンクとKDDIは、メールアプリとメッセージアプリのどちらも利用できるが、ドコモの場合は、メッセージアプリではキャリアメールを利用できない。メッセージアプリは、見た目がチャット風となっているのが特徴で、これまでのメールのやりとりを閲覧しながらメールの送受信が可能。そのため、友人や家族など、親しい人とのコミュニケーションには最適だ。一方、メールアプリはパソコンのメールに感覚的に近く、メール作成時に"署名"を設定することなどもできる。

ソフトバンクでは、メッセージアプリとメールアプリで別々のメールアドレスを利用可能だが、アプリの特徴に応じてメールアドレスを使い分けたいときには最適だ。たとえば、メールマガジンやダイレクトメールなどを登録する際には、メールアプリ用の@i.softbank.jpのメールアドレスを使い、友人とのコミュニケーションには、チャット感覚で利用できるメッセージアプリ用の@softbank.ne.jpのメールアドレスを使うというやり方だ。以上のことから、現状のiPhoneでは、ソフトバンクのキャリアメールがもっとも使い勝手が良いように思われる。

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各社の新型iPhoneのネットワークとキャリアメールについて見てきた。LTEのネットワークについては、2014年4月よりソフトバンクがプラチナバンドの900MHzでのLTEを提供開始予定であるなど、今後も変化が予想され、将来を見据えてキャリアを選ぶ必要があるだろう。また、キャリアメールではドコモの出遅れが目立つが、2つアプリで別々のアドレスのキャリアメールを利用できるソフトバンクは、各アプリの特徴を活かしてメールを十分に使いこなせそうだ。新型iPhoneの販売台数でソフトバンクが首位となった背景には、これらの要因が影響しているのかもしれない。