「NTTドコモがiPhone 5Sを、中国移動通信(China Mobile)が廉価版iPhoneをそれぞれ今年6~7月より取り扱い開始」「4.8インチサイズのiPhone 6の販売は来年以降」というレポートが登場して話題を呼んでいる。ここではレポートの内容を紹介しつつ、その実現性について検証してみる。
iPhone 5 |
JefferiesのアナリストPeter Misek氏の投資家向けレポート
このレポートはJefferiesのアナリストPeter Misek氏の投資家向けレポートが基になったもので、Barron'sなど複数のメディアが報じている。最近、AppleがiPhone 5の需要が見込みに到達しなかったことからサプライヤへの部品発注数を減らしたというニュースが出て話題になったが、Misek氏のレポートはこのラップアップと今後の動向をまとめたものが中心となる。ポイントは下記に箇条書きするが、Misek氏は基本的にAppleへの投資推奨を行っているアナリストであり、そうしたプラス材料を紹介したレポートであることに注意したい。
・ AppleのiPhone 5部品発注削減は需要減少だけでなく、次世代モデルの「iPhone 5S」登場に備えたもの
・ iPhone 5Sの製造開始は3月で、発売は6月以降
・ 第4世代iPadの製造量は減少、逆にiPad miniの製造量は上昇
・ iPhone 5S等の新製品が出る7月までの期間はリスク要因になる
・ 中国移動通信(China Mobile: 契約者数7億で3Gユーザーは8500万)が廉価版iPhone、NTTドコモ(契約者数6000万)がiPhone 5Sの取り扱いを開始し、Appleにとって増収要因となる
また同レポートでは新デバイスのスクリーンサイズとコスト問題にも言及しており、こちらもポイントを箇条書きする。
・ Appleは将来的にiPhoneの4.8インチサイズへの移行を目指しており、2014年夏を目標に据えていた。だが大型化するスマートフォン市場での損失を埋めるべく今年2013年10月のリリースに大画面化目標をシフトしたものの、インセル(In-Cell)ディスプレイの歩留まりが上がらず断念
・ Appleは有機EL (OLED)技術をCEO自らが否定しているが、この4.8インチへの移行で従来のオンセル(On-Cell)方式への回帰を模索しており、その技術候補としてOLEDとIGZOが挙がっている
・ NAND価格の下落がiPhoneのBOM (Bill of Materials: 部品コスト)引き下げに寄与するものの、iPhone 6ではプロセッサ更新(特にTSMCへの移管による)、ディスプレイ技術とサイズ変更にともなうコスト上昇で、トータルとしては200ドル以上の水準が見込まれる
上記でも触れられているが、Appleはおそらく今年末か来年にリリースする新型iPhoneに新設計のAxプロセッサを搭載するとみられ、ここでは前述のようにTSMCへの移管で20nm製造プロセスを採用し、さらに8コア(オクタコア)ベースのものになることでiOSのアーキテクチャに変更が加えられるという。
Misek氏のレポートに関する考察
では順番に、それぞれについて検証してみよう。iPhoneの部品発注目標引き下げは需要減だけでなく、次世代モデルに向けた生産調整という話だが、これは十分に考えられる。ただ、iPhone 5Sの製造が3月に開始されるというのであれば、この2月中旬の時点ですでに大量のオーダーがサプライヤ各社に出回っているはずで、そうした情報より先にMisek氏の予測レベルでこうした話が出てくるのは疑問が残る。