NTTドコモの2012年夏モデルのスマートフォン「docomo NEXT series L-06D JOJO」は、漫画家・荒木飛呂彦氏の人気作品「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボレーションしたモデルとして大きな注目を集めている。今回、企画担当の岡野令氏と許潤玉(ほう ゆの)氏に同端末の開発の経緯や魅力などをうかがった。
L-06D JOJOは、NTTドコモの2012年夏モデル「docomo NEXT series Optimus Vu L-06D」(LGエレクトロニクス製)をベースにした端末。OSにAndroid 4.0を搭載し、1.5GHzのデュアルコアCPU、1GBのRAMと32GBの内蔵ストレージを備える。通信面ではXi、FOMA HIGH SPEED(下り最大14Mbps/上り最大5.7Mbps)、GSMに対応。そのほかIPX5/7準拠の防水機能、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、テザリング、NOTTVなどに対応する。1万5,000台の限定販売モデルで、8月に発売が予定されている。
―― はじめに、L-06D JOJOの開発経緯について教えてください。
岡野氏「ドコモでは、フィーチャーフォンの時代からコラボモデルに取り組んできました。携帯電話は毎日持ち歩くもので、言ってみればファッションやアクセサリーと同じです。ですので、これまでデザイナーさんやファッションブランドさんと協力して外装デザインの優れたコラボモデルを開発してきました。でもスマートフォンの時代になり、事情が変わりました。というのも、スマートフォンは片面全部がディスプレイなんですよね。だからデザインコラボでやれることも限られてしまう。そこでスマートフォンだからこそできる、アプリケーションや内蔵コンテンツのパワーでしっかり楽しめるものをつくろうという方向に、発想の転換をしました。
続いて、荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボが決定した経緯についてお話します。まずはじめに、ドコモでは電子書籍サービスをしっかり訴求できるコンテンツを探していた―― というのが、ありました。そこから、漫画作品とのコラボを、という流れになりました。
コラボをやる上では、ユーザーを惹きつける、力のある作品である必要がある。タイミングも大変重要で、ヱヴァンゲリヲンとコラボした「SH-06D NERV」のように映画が公開されるなど、大きなイベントが連動するような要素があると、お客さまにもアピールしやすい。あとは、コアなファンがいるという条件ですね。
今回は、現在スマートフォンに興味をもってくれている年齢層の方々が学生時代に熱中していて、いまでも読み返したいと思ってくれる作品―― というところで、ジョジョの奇妙な冒険が候補に挙がりました。その後、コンセプトや世界観をスマートフォン内で楽しめるのは、など様々な条件を照らしあわせて検討。今年が連載25周年のメモリアルイヤーであるジョジョの奇妙な冒険が最適である、という結論に至ったんです」
―― デザイン面でのこだわり、コンセプトなどを教えて下さい。
許氏「今回、荒木先生の意向を最大限に反映するという方針で開発が進められました。背面のデザインについても、ドコモからはイラストとサインをお願いしますということだけをお伝えし、キャラクターの選択などは全て先生にお任せしました」
岡野氏「コラボ商品をつくる際に、肝に銘じていることがあります。それは、私たちメーカー側の都合でつくってはいけないということです。例えば私も許もジョジョのファンですが、好きな場面やキャラクターは違う。ファンそれぞれ、作品に抱く思いは違うんです。だからメーカーが勝手につくったものでは納得できないし、そういう商品って結局ファンの心には届かないんですよね。では、ジョジョのファンが納得できることはなにか。それは、荒木先生が決めたこと以外にはないんです。なので、最終的にすべての内容について先生に決定していただきました。なぜ背面のイラストが徐倫(ジョリーン)なのか。その理由も、敢えて先生にはお聞きしていません。想像することが楽しいし、それを考えさせるのが荒木先生の狙いなのでは、とも思うからです」
―― オリジナルの内蔵コンテンツについて紹介していただけますか。
許氏「まず、特別編集版の電子コミック「ジョジョの奇妙な冒険」(カラー版、12巻分)がプリインストールされています。モバイル向けの電子コミックは通常、コマで配信することが多いんですが、本端末ではこの5インチというサイズを活かして、ページビューで閲覧することが可能です。カメラアプリでは、撮った写真にジョジョの世界観を反映させた擬音やキャラクターを配置できます。そのほかにも本編の第3部に登場するF-MEGAを再現したアプリではレースゲームを楽しめますし、メディアプレイヤーなども独特の仕様になっています」
岡野氏「オリジナル予測変換や、つながり候補を利用できるなど、文字入力にもこだわっています」
許氏「例えば、"ありのまま"と入れると"今起こったことを"が候補にあがり、それを選択すると"話すぜ"が候補にあがります。"だが"と入れると"断る"のほかに、"メス猫がッ"も候補に...」
岡野氏「ファン同士でこれでメールし合ったら面白いし、盛り上がりますよね」
※編集部注:これらの搭載コンテンツはすべて開発段階のものであり、仕様やデザインが変更される場合があります。
―― 開発にはどのくらいの期間が必要でしたか。
岡野氏「1年ちょっとです。スマートフォンは通常、半年ほどの期間で開発しているので長い方だと思います。やはり通常モデルに比べるとつくり込み方が違うので、どうしても長くなりますね。また、フィーチャーフォンがベースのコラボ端末と比べ、スマートフォンがベースのものは可能性の広がり方が全然違います。デザインだけでなく、コンテンツ自体も充実した内容のものにできるので。だから、そういった意味でもやはり時間がかかりました」
―― 最後に、ユーザーに向けてひと言メッセージをお願いします。
許氏「飽きのこない、お客さまに長く使っていただける端末にしようということを念頭に置いて開発を進めました。こだわり抜いた内蔵コンテンツをお楽しみいただければ幸いです。実は個装箱も、こだわったものしようと思っています。飾って楽しんでいただけるように、荒木先生の書き下ろしイラストをあしらった縦置きタイプにする予定です」
岡野氏「見どころが盛りだくさんでひと言で表現するのが難しいんですが、本物のファンが荒木先生と企画を練り、すべての内容で先生にお墨付きをいただいた端末に仕上がりました。コアなファンにも、きっと満足していただけると思います。ご期待ください」