米国の携帯キャリアが「300分で30ドル」といった通話量に応じた請求を行う音声偏重の料金プランを廃し、音声通話は一定額でよりデータ通信に比重を置くプランを模索しているという。携帯電話普及とともに急速に伸びてきた音声通話時間はここ数年減少の一途をたどっており、スマートフォンなどでネットサービスに時間を費やすユーザーが増えていることを受けたものだ。

同件は6月5日(現地時間)に米Wall Street Journalが報じている。もともと米国での携帯電話は「300分で30ドル」「400分で40ドル」といった具合に、ユーザーが月あたりの通話時間に合わせてプランを選択する形態が一般的だった。一方でデータ通信は月額15ドルや20ドルで無制限利用が可能など、あくまで"オマケ"的存在であり、音声通話の偏重は米携帯電話業界の特徴でもあった。転機が訪れたのは2007年のiPhone発売で、このころからスマートフォン利用者が急増し、音声通話よりもデータ通信を使ってインターネットのサービスを直接利用する時間が増え、携帯キャリアのネットワーク圧迫が社会問題として扱われるレベルにまで到達した。WSJの報道によれば、実際にこのタイミングを境にユーザー1人あたりの月の音声通話時間は減少の一途をたどっており、携帯キャリア各社の決算でも音声通話における収入は年率数%単位で減り続けているという。

こうした背景を受け、AT&T Mobility CEOのRalph de la Vega氏は同紙のインタビューの中で「業界全体が音声通話の無制限プラン導入を模索しはじめている」と語ったという。現在AT&Tでは「450分で40ドル」「900分で60ドル」「無制限で70ドル」という携帯電話の契約プランを提示しているが、この中における「無制限で70ドル」というのはプレミア的扱いだ。3つのプランを一本化し、おそらくはより低い料金を設定するものとみられる。AT&Tはもともと月額30ドルで無制限のデータ通信が利用可能なプランを提供しており、前述の「450分で40ドル」のプランと組み合わせることで、最低料金が月額70ドル(税金等を除く)でスマートフォンを利用することができた。現在はデータ通信の無制限プランを廃止しており、3GB上限で月額30ドル、以後1GB超過ごとに10ドルが追加請求されるという従量制プランへと移行としており、ヘビーユーザーほど料金負担が高い形態になっている。現在でもまだ料金全体に占める音声通話料の比重が高いが、今後はデータ通信へと比重が移っていくことになるだろう。プリペイド携帯を専門に扱うキャリアでは、すでに音声通話/SMS/データ通信がすべて無制限をパックにした安価な月額プランを提供しているケースもあり、「音声通話天国」の米国での利用スタイルが大きな転機を迎えつつある。

(記事提供: AndroWire編集部)