「Kindle Fire」は、Android 2.3 "Gingerbread"ベースのOSを搭載している。だが、汎用的なタブレットではない。基本的に、Amazon.comのデジタルコンテンツ配信サービスを利用するための端末であり、Androidタブレットを使ったことがある人でも言われなければ、すぐにAndroidベースだと気づかないだろう。それぐらいカスタマイズが徹底されている。
現在、米Amazon.comには以下のようなコンテンツ配信ストアがある。
- Kindle Store:電子書籍
- MP3 Music Store:音楽
- Amazon Instant Video Store:映画・TV番組
- Appstore for Android:Androidアプリ
ユーザーがこれらのストアでコンテンツを購入すると、コンテンツはAmazonのクラウドストレージに置かれる。また、ユーザーが自身の音楽、写真、ドキュメントなどをアップロードできるAmazon Cloud Drive (5GB無料)というクラウドストレージ・サービスもある。Kindle Fireは、これらAmazonのコンテンツ/オンラインストア/サービスと密に連携する端末だ。名前は"Kindle"が付くが、電子書籍だけではなく、Amazonのデジタルコンテンツ配信をまんべんなくサポートするAmazonタブレットと言える。
ホーム画面では本棚(中身は、最近つかったコンテンツ、お気に入り)の上に検索ボックスと、「Newsstand (新聞・雑誌)」「Books」「Music」「Video」「Docs」「Apps」「Web」などのカテゴリが並ぶ。いずれかの方法でコンテンツにアクセスするのが基本操作になる。例えばBooksに入ると、ユーザーのクラウドライブラリ内の蔵書が本棚に並び、本をタップすると電子書籍のデータのダウンロードが始まる。DocsとWeb以外のカテゴリでは、右上のStoreボタンをタップすると各カテゴリのストアが開く (Booksの場合はKindle Store)。
ホーム画面の上部に「Newsstand」「Books」「Music」「Video」などのカテゴリ。検索は標準でライブラリ検索、Web検索も可能 |
Booksカテゴリに入ると、Amazonのクラウドライブラリに置いてある過去にAmazonから購入した電子書籍が並ぶ。タップすると電子書籍が端末にダウンロードされる。右上の[Store]ボタンから直接Kindle Storeにアクセス可能 |
Musicカテゴリに入って、クラウド内のアルバムにアクセス。再生するとアルバム単位でダウンロード→キャッシュされるのでオフライン再生も可能になる |
Kindle Fireの内蔵フラッシュメモリは8GB、そのうちユーザー領域は6.54GBと小さいが、コンテンツはAmazonのクラウドライブラリ内に保管されているので、Amazon用の端末として使っている限り不足はしない |
OSのインターフェイスは、画面上部にステータス・バー(クイック設定、Wi-Fiインジケータ、バッテリインジケータ、時計など)があり、ホーム画面以外で画面をタップするとオプション・バー(ホームボタン、メニューボタン、戻るボタン、オプション設定など)が現れる。非常にシンプルで、初めて起動した時に現れるチュートリアル画面を読むだけで迷わずに使えるようになるはずだ。
画面上部にステータス・バーが常駐。ホーム画面の本棚の上の段に並ぶ大きなアイコンは「最近つかったコンテンツ」。この段だけは、左右のスワイプでブラウズできる。下の段の小さなアイコンは「お気に入り」。ユーザーの任意でコンテンツやアプリを追加して並べ替えられる。アイコンには、コンテンツの状態の通知バッジが付く |
米Amazon.comのホームページでは、1年ほど前からデパートメント一覧の最初にデジタル配信ストアが並び、そして印刷板書籍、CDやDVD、パッケージソフトなどが続くようになった。エンターテインメントの主流がオンライン配信に変わる中、PCや一般的なタブレットに関心のない人たちをAmazonがサポートするために、Kindle Fireの投入は必然だったと言える。
しかしKindle Fireを3日間使い続けてみて、電子書籍アプリやクラウドとの連携には成熟したものを感じたが、その他の部分から改善してほしいところが多々出てきた。例えば、マルチタスクにおけるアプリの切り替え、ホーム画面のカスタマイズ方法、カルーセル(回転式パネル)表示のふるまいなど。音楽/動画プレーヤーでもあるのだから、ボリュームのハードウエア・ボタンも欲しいと思った。
Kindle Fireは、専用の総合的なタブレット/メディアプレーヤーを使ったAmazonの利用を体験させてくれる端末だ。しかし、それはまだ随所に試行錯誤が感じられるものである。電子ペーパー版Kindleの時も同社は、ユーザーからのフィードバックを集め、ファームウエアのアップデートを重ねながら数年かけて熟成させた。そのプロセスがFireでも繰り返されるのだろう。
【レビュー】Kindle Fireを試す
・第1回 - 199ドル、激安Androidタブレットの第一印象は?
・第2回 - Kindle FireはAndroidコアのAmazonタブレット第1弾
・第3回 - Androidタブレットとして使いものになるか?
(提供:AndroWire編集部)
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・Amazon.com