7月5日から7日の3日間、対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV』のeスポーツ大会「TOPANGAチャンピオンシップ ストリートファイターV シーズン3」の決勝リーグが開催されました。

決勝リーグは、5月29日から始まったオンライン予選を経て、オンライン本戦リーグを勝ち抜いた7名による頂上決戦。7試合先取の長期戦、激戦を制したのは、カワノ選手でした。優勝を争う最終戦は、最年少のひぐち選手との対戦。ベテランの活躍が目立つ『ストリートファイターV』のeスポーツシーンにおいて、若手同士の優勝争いに新たな潮流を感じました。

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決勝リーグに進出したのは、ときど選手、ガチくん選手、板橋ザンギエフ選手、水派選手、様式美選手、ひぐち選手、カワノ選手の7名。ベテランから中堅、若手まで満遍なくそろっていました。

開始前は、シーズン1優勝のときど選手、シーズン2優勝の板橋ザンギエフ選手、そしてオンライン本戦で好調だったガチくん選手に注目が集まります。

様式美選手は地方在住のベテランプレイヤー。マゴ選手やぷげら選手を蹴散らし、決勝リーグに進出した台風の目と言えます。また、様式美選手はプロライセンス保持者とはいえ、スポンサーがついておらずプロチームにも所属していない社会人プレイヤー。多くの社会人プレイヤーが彼の活躍に期待していたことでしょう。

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    最終戦で板橋ザンギエフ選手に勝利し安堵の表情をみせるときど選手

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    和歌山から大会に参戦した様式美選手

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    序盤苦しんだものの、しっかりと3勝3敗の五分の成績を残したガチくん選手

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    今大会で唯一2つのキャラクターを駆使した板橋ザンギエフ選手。どちらも弱体化した中、善戦しました

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    実力者ぞろいのチーム「魚群」で唯一決勝リーグに残った水派選手

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    初日、2日目と大物食いをし、一気に優勝候補となったひぐち選手

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    オンライン本戦ではCブロック3位から、三つ巴戦を制し、決勝リーグにあがったカワノ選手

決勝リーグ2日目終了時点で、カワノ選手とひぐち選手が3勝1敗と大きくリード。カワノ選手とひぐち選手の直接対決が残っているため、どちらかが必ず4勝2敗以上の成績を残せます。2勝2敗で巻き返しを狙うときど選手、板橋ザンギエフ選手、水派選手は連勝して4勝2敗で並ぶことが必須という状況でした。

しかし、ひぐち選手は、上記の2勝2敗の選手すべてに直接対決で勝っているため、4勝2敗で並んだとしても3選手を上回ることができ、優位性は変わりません。

どのみち、4勝2敗でカワノ選手とひぐち選手以外が優勝するには、カワノ選手対板橋ザンギエフ選手で板橋ザンギエフ選手が勝利し、カワノ選手がひぐち選手に勝ち、ひぐち選手が連敗するか大きな負け越しで負けないといけないため、前提条件が多すぎて現実的とは言えませんでした。

実際、カワノ選手は早々に板橋ザンギエフ選手に勝利し、ひぐち選手はガチくん選手との対戦で敗北するもデュース延長の結果9-10の僅差となり、ときど選手の優勝の目もなくなりました。

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    フルセットまでもつれ込んだひぐち選手対ガチくん選手

最終戦のひぐち選手対カワノ選手は、決勝リーグ開催までひぐち選手と同じキャラクター「ガイル」を使用するウメハラ選手とオフラインで特訓した成果もあり、序盤からカワノ選手がリードするかたちで対戦が進みます。終盤でひぐち選手が3連勝して追い上げをみせ、対応力の高さを見せるものの、カワノ選手が逃げ切り、初の優勝となりました。

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    どんな技を食らっても負けになる体力から逆転し、優勝を決めたカワノ選手

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    試合終了後、ショックのあまり倒れ込んでしまったひぐち選手

やはり今回の大会で見どころだったのは、若手の台頭、成長だったのではないでしょうか。ベテラン勢が強い『ストリートファイターV』のシーンにおいて、カワノ選手がTOPANGAチャンピオンシップシーズン1で5位、シーズン2で3位、そしてシーズン3で優勝できたのはまさに快挙と言えます。

TOPANGAチャンピオンシップはオンライン予選、オンライン本戦と長期間にわたって試合を重ねていくので、決勝リーグに残るだけでもひと苦労。今回のシーズン3でも上位常連のプロプレイヤーの名前が残っていないことから、その厳しさが十分にわかると思います。

そこで、すべてのシーズンで決勝リーグに残り、順位を少しずつあげ、3シーズンめにして優勝したのは大きな意味があるでしょう。若さ特有の勢いで勝ち進んだのではなく、安定した実力を携えての結果だからです。

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    今はHitBOXからスポンサーされ、eスポーツチームGOOD8SQUADに所属し、プロゲーマーとして活動できるようなったカワノ選手

また、3日目で連敗し、最終順位が3位となったひぐち選手は19歳の大学生。ここまでの若手が決勝リーグに残り、最後まで優勝争いをしたことも驚愕の出来事です。『ストリートファイターV』は年齢層が高めで、若年層が好むeスポーツタイトルに入りにくいと言われていましたが、いやいや若手も着実に育っており、eスポーツシーンとしてもまだまだ期待が持てると思える大会でした。

ひぐち選手は、プロゲーマーのももち選手が運営するeスポーツチーム忍ism(シノビズム)の若手選手育成企画に応募し、3カ月の選考期間を経て合格した経歴があります。一時期、大学受験のために学業を優先していましたが、大学入学後は本格的に活動を再開し、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2020」プレシーズン大会優勝、「Japan University eSPORTS Championship:U-Champ」優勝など、実績を重ねています。

チームのオーナーであり、師匠であるももち選手に今回のひぐち選手の活躍ぶりについて話を聞くと、「元々自力のある選手なので、結果が少しずつ出てきてうれしく思います。まだまだここで満足する選手ではないので、次は優勝を目指してこれからもがんばってほしいと思います」と成長の喜びと今後の期待を述べていました。

TOPANGAチャンピオンシップは、今回で3回目の開催となるシーズン3ですが、その前身であるTOPANGAリーグは2012年から開催している歴史ある大会です。開催者である豊田風佑氏は今回の大会についてこう振り返っています。

「今回のTOPANGAチャンピオンシップは、『ストリートファイターV』で開催したリーグ戦の中では自分にとって一番印象に残る大会になりました。トーナメント戦の良さ、リーグ戦の良さ、どちらも色々ありますが、プレイヤーの中では長期戦のリーグ形式が最強を決めるのに納得性があると思い、今まで開催を続けて参りました。

ただ、『ストリートファイターV』がリリースされたころから、TOPANGAリーグではほかの大会スケジュールとの兼ね合いで準備期間を設けることが難しく、トーナメントの延長戦での対戦が多くなってきてしまい、開催の意義について考え直さなければいけないと思うこともありました。

スケジュールの見直し、また社会情勢も相まって、リーグ戦の価値が高まってきたタイミングで、少なくともリーグ開催中は、この大会を勝つためにすべてを捧げてきた選手達の素晴らしい試合を披露できました。強豪のベテランプレイヤーを押し退け、若手プレイヤーの戴冠という結果は、日本の『ストリートファイターV』の大会シーンの歴史にまた新たな1ページを刻んだと思います。

今後とも引き続き皆さまに楽しんでいただけるような大会を開催していきますので、応援のほどよろしくお願いいたします」(TOPANGA豊田氏)

また、今回から配信プラットフォームをMildomに変更。TOPANGAチャンピオンシップの配信の合間に流れた「魚群の選手が出演するG-TuneのCM」で、なぜか大盛り上がり。鉄拳プレイヤーのダブル選手の「これっす」ギフトや、熱狂的な水派ファンによる「水派Win」ギフトが飛び交い、コメント欄が大変賑わっていました。

とかくeスポーツはプロとしての活動年齢の低さ、活動年数の短さが取り沙汰されます。ですが、何度も言いますが、対戦格闘ゲームは比較的稼働年齢が高く、ベテラン勢が活躍しています。その反面、若手の入り込む余地があまりなく、それが、新規プレイヤーの増加の足かせとなっているとも言えるでしょう。

今回のひぐち選手とカワノ選手の優勝争いにより、若手でも活躍できることが証明されました。広く門戸が開かれ、今後挑戦してくる若年層が増える可能性が出てきたと言えるのではないでしょうか。