今回は「デジタル文具」のヒット作をヨドバシカメラ マルチメディア横浜に取材しました。広義のデジタル文具にはパソコンやタブレットも含まれますが、今回はデジタルメモ機やモバイルプリンターなど、文房具の延長線上で使える小型の専用機にターゲットを絞って人気アイテムを紹介してもらいます。

副店長の下條圭氏は「(狭義のデジタル文具は)“みんなに便利”というより、刺さる人には刺さる売れ方をしますね。自分の仕事、自分の生活にはこれがあると本当に便利、ということで買われていくことが多い印象があります」といいます。

  • ヨドバシカメラ マルチメディア横浜 2階のパソコン周辺機器売り場。副店長の下條圭氏(手前)とPCアクセサリー専門チームの上谷地健司氏(奥)にナビゲートしてもらった

そうした専門的なデジタル文具に売り場で出合うための3つのアドバイスを踏まえ、最近目立っているヒット作を追っていきましょう。さまざまなニッチかつディープな需要を満たすアイテムゆえに、ランキングではなく売り場で目立っているアイテムを選んでもらいました。

<デジタル文具選び、3つのアドバイス>

  • 「営業先で使う」「プライベートで無駄をなくしたい」など、用途を絞って店員に尋ねると効率的。
  • 商談の席やオンラインミーティングなどで便利グッズに目を光らせておくと、売り場で探しやすい。
  • モデルチェンジが早いパソコンやタブレットと比べて息長く店頭に置かれていることが多い。評判や実績でアンテナを立てるのもあり。

※本文と写真で掲載している価格は、2021年6月2日15:30時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。

書きやすさとスマホ連係で不動の人気「ブギーボード」

デジタル文具のなかでも幅広い層に売れているのが、キングジムの電子メモパッド「ブギーボード」です。紙にペンを走らせるように自然な筆圧でメモがとれ、ボタンひとつで消去できます。シリーズ内で特に人気があるのはA6サイズの「BB-14」で、取材時の価格は3,120円でした。

「同種のアイテムもありますが、とにかくすらすら書けると評判です。専用アプリ(Boogie Board SCAN)を使えばメモを画像データとしてスマホに取り込めますし、裏側がマグネットになっているので冷蔵庫にも貼り付けられます。家庭からビジネスシーンまで、本当に多くの方に買われています」(上谷地氏)

  • キングジム「ブギーボード BB-14」

スマホ連係で拡張性を得たラベルライター「テプラPRO MARK」

ラベルライター売り場で目立っているのは、キングジムの「テプラPRO MARK SR-MK1HA」。専用アプリを入れたスマホで文字やフレームをセットしてラベルプリントする仕様で、価格は17,420円でした。ラベルプリンターとしては高価なモデルですが、家庭用として熱い人気を得ているそうです。

「一般的なラベルプリンターは本体に収録されたフォントやテンプレートしか使えませんが、こちらは随時アップデートされて新しい絵柄などが手に入る魅力があります。また、ACアダプターだけでなく乾電池でも動くので、イベント時にその場でシールを作るといったこともできてファンを増やしていますね」(上谷地氏)

  • キングジム「テプラPRO MARK SR-MK1HA」

紙を減らしたいビジネスパーソンに指示される「クアデルノ」

ビジネスユースのヒットモデルとしては、第一に富士通の電子ノート「クアデルノ」が挙げられるとのこと。スマホやパソコン、ドキュメントスキャナーなどと連係してPDFが取り込めるうえ、付属のスタイラスペンでPDFや白紙のノートにメモを書き込むこともできます。とくに人気のあるA5サイズモデル「FMV-DPP04」の価格は39,800円でした。重量は約251gになります。

「カバンにたくさん書類を入れなくてもこれ一台で済むということで、普段から書類をたくさん持ち歩いている人に口コミで広がっています。メモ書きの精度も、自分のペースで書き込むぶんにはまったく問題がないレベルで、評価も上々です」(上谷地氏)

  • 富士通「クアデルノ」

テキスト入力専門機として定番の地位「ポメラ DM200」

ビジネスシーンのなかでも、メモ書きやレポート作成などのテキスト入力に特化した道具を求める人には、キングジムの「ポメラ DM200」を求める人が安定して多いそうです。7インチワイドのモノクロ液晶とキーピッチ17mmのキーボードを備え、日本語入力システムとして「ATOK for pomera」を収録しています。パソコンやスマホとはWi-Fiで連係可能。取材時の価格は39,200円でした。

「バックライトもついていて、暗がりでも入力しやすいと評判です。ノートパソコンを持ち歩かなくても、出先で集中して長文が打てるということで、探されている方は多くいらっしゃいます」(上谷地氏)

「1階のパソコン売り場にいても『ポメラどこですか?』と本当によく尋ねられます。パソコンやタブレットほどの多機能はいらないけれど、安定して文章入力できる道具がほしい、という方に根強く支持されている印象です」(下條氏)

  • キングジム「ポメラ DM200」

出先で印刷できるモバイルプリンター、特徴的な機能や装備で指名買い

ビジネス用途ではモバイルプリンターを求める人が多く、ヒット作も複数あるようです。しかし、個性がはっきり分かれているため、売り場で悩む様子はあまり見かけないとのこと。

出先で書類を印刷したい人には、エプソンのカラーA4モデル「PX-S06」が人気です。価格は27,280円。「バッテリー内蔵型なので場所を選ばず、商談の席でもスムーズに印刷できます」(上谷地氏)

写真印刷を重視する向きには、キヤノンのA4モデル「TR153」がよく選ばれるそうです。価格は30,250円。「インク構成が5色染料+顔料黒なので、写真がきれいに印刷できます。ただし、バッテリーはオプションとなるのでシーンを選びますね」(上谷地氏)

  • エプソン「PX-S06」(右)とキヤノン「TR153」(左)

ブラザー工業の感熱紙A4モデル「PJ-700シリーズ」は、より機動性を重視する用途で買われていくそうです。モノクロ印刷限定ながらインク不要で、機種によってUSBやWi-Fi、Bluetoothなどの接続が選べます。USBとWi-Fi接続が可能な「PJ-773」の価格は75,410円でした。「作業確認書や伝票など、割り切った使い方を想定されている方が中心になります」(上谷地氏)

  • ブラザー工業「PJ-700シリーズ」

はみ出し情報…デジタル文具の競合として存在感を増す「Chromebook」

同店のデジタル文具はパソコン周辺機器とともに2階で売られていますが、1階のパソコン売り場と行き来して買い物する人は少なくないそうです。そのなかで存在感を増しているのが、1階で売られているChromebookとのことです。Googleの「Chrome OS」をインストールしたクラムシェル型パソコンで、3万円以下から選べます。

「コロナ禍の少し前に火がついて、その後はリモートワーク需要に押されて少し落ち着きましたが、最近また伸びてきています。サブとして2台目のパソコンを求める人や、子ども用のパソコンを探している人に人気で、価格的にもデジタル文具やタブレットと競合しています」(下條氏)

  • 1階にあるレノボ・ジャパンのChromebook売り場