エレキバンやマグネループなどの磁気治療器で知られるピップは、eスポーツプレイヤーをターゲットにした腰部サポーター「プロ・フィッツ for e-SPORTS ウエストアーマー」(3,828円)を3月11日に発売した。同社通販サイト「ピップウエルネス通販」で販売する。はたしてこの商品はどのあたりが「for e-SPORTS」なのか? 実際に使用してみた感想を交えて紹介したい。
ピップのスポーツ健康ブランド「ProFits」がeスポーツに進出
ピップというと、ある一定以上の年齢の人ならば、昭和の時代にテレビで放映されていた数々のCMが記憶に焼き付いていることと思う。それらのCMでアピールされていた「エレキバン」、あるいは「マグネループ」など、磁気治療器で知られるメーカーだ。
エレキバンのイメージがあまりにも強烈な同社だが、実は20年以上にわたってサポーターやテーピングを製造、販売してきた実績がある。しかも、テーピング用伸縮テープは市場1位、サポーターは市場2位の売り上げを誇っているのだ。
さらに2年前には「ProFits(プロ・フィッツ)」というブランドを創設。スポーツ+健やかから来る造語「スポやか」をコンセプトに、スポーツを通じて心身ともに健全な未来を目指すべく、商品を展開してきた。
ピップでは、eスポーツ元年と言われた2018年を経て、2019年よりeスポーツ向け商品の企画開発をスタート。2020年8月には、eスポーツ向けとして同社初となる「プロ・フィッツ for e-SPORTS リストアーマー」(1,958円)を発売した。
つまり、3月11日に発売された「プロ・フィッツ for e-SPORTS ウエストアーマー(以下、ウエストアーマー)」は、プロ・フィッツブランドにおいてeスポーツをターゲットにした2番目の商品。長時間にわたって椅子に座り、集中を続けるeスポーツプレイヤーに向けた工夫がなされているところがポイントだ。
ウエストアーマーとはこんな製品
さて、それではピップのウエストアーマーとはどんな製品なのだろうか?
腰の負担を和らげるサポーターは各種発売されているが、このウエストアーマー最大の特徴は、「座った状態で装着する」ことを想定し、前側に回すベルトが細く抑えられているところ。これによって、座った姿勢でも腹部への圧迫を軽減する狙いがある。一方、縦方向に2本の硬めの素材が配された背面部分は、腰部を広く覆う幅広の構造だ。
装着する際は、後ろ側の太いパッドから伸びた2本のベルトを、前側で斜めに被さるようにして固定。まずは下側のベルトでウエストアーマー全体を固定し、次に、それより短い上側のベルトを締め込むことで、腰部をホールドする。
腰痛は多くの場合、座っているときの姿勢が悪いことに起因するだろう。人体は横から見たときに背骨がS字を描くことで頭部の重さを支える構造になっているが、座っているときはこのS字が崩れ、骨盤が後ろに傾く。つまり、不自然な形で上半身の重さを支えることになり、これが腰に負担を与えるわけだ。
たとえばゲーミングチェアやビジネスチェアの多くでは、「ランバーサポート」と呼ばれる構造が背もたれに採り入れられている。ランバーサポートは、一般的に背もたれの下部が前にせり出す形状をしていて、椅子に深く腰掛けることで、これが背骨にS字を描くよう促す。ウエストアーマーをはじめとする腰部サポーターでは、骨盤から背骨にかけての部分を圧迫することでこれと同じ効果を狙う。姿勢を正し、腰痛を防ぐのである。
ウエストアーマーの使用感は?
筆者は3月以降、この製品を使い続けている。難がないとは言わないが、使用感はなかなか悪くない。
先にも書いたように、本製品では腹部に回り込んだベルトが一般的な腰部のサポーターに比べて細く作られていることがポイント。装着すると、確かに座ったときにお腹周りを不自然に圧迫することがなくていい。
実際にはウエストアーマーが姿勢の悪化を完全に防いでくれるわけではない。ただ、腰部が圧迫されることで、背骨を伸ばし、負担の少ない正しい姿勢で座ることを自然と促してくれる感覚があるのだ。
前述のようにこの製品はベルトが上下に2分割されている。上側ベルトが若干下方向に向けてテンションをかける構造になっていて、これが姿勢を正すことをより強く促しているように感じる点は興味深い。
個人的な不満点を挙げるとすると、まずはサイズ展開。ウエストアーマーは現状ではMとLの2サイズしか存在しない。腰骨周囲のサイズがMは70~80cm、Lは80~90cm。3月に行われたオンラインの新製品発表会で質問をぶつけてみたところ、「ほかのサイズも検討中ではあるが、MとLの2サイズでおよそ9割の人をカバーできる」との返答を得た。よほど多くの要望がない限り、サイズが増えることはないだろう。
しかし、たとえば同じプロ・フィッツのほかの腰用サポーターはM、L、LLの3サイズ展開。対象を「eスポーツ」とうたったこの商品の場合、eスポーツゲーマーのどれだけをカバーできているのかが気になるところだ。
ちなみに、176cm80kgの筆者はLサイズを使用しているが、正直なところサイズはギリギリ。余裕を持って装着しているとは言い難い。新製品発表会ではeスポーツ大会の実況、解説で知られる岸大河さんが出演していたが、スリムな岸さんでさえLサイズが最適であるとのこと。やはりもうワンサイズくらいは大きいものがあったほうが、より多くの人が満足できるのではないだろうか。また、「ウエルネス通販」の専売商品であるため、試着といったことができない点も注意が必要だ。
不満はあれど……。
と、サイズに関する不満はあれど、筆者のように在宅で座ったまま長時間を過ごし、腰に不安のある人にとってはなかなか有効な商品だと思っている。
商品名でeスポーツをうたってはいるが、もちろんeスポーツでしか使えないわけではない。コロナ禍においては在宅勤務でのデスクワークにもこの製品は好適だ。
特にビジネスチェアやゲーミングチェアなど「腰部のサポートに配慮した椅子を使って“いない”場合」には、かなり効果を発揮するのではないだろうか。「座った姿勢で使うことを前提に設計されている点はこの製品を選ぶ大きな理由になることだろう。
腰に不安を抱え、サポーターの購入を考えている人には一考に値する商品だと思う。