ZホールディングスとLINEは3月1日、経営統合が完了しました。川邊健太郎社長の「これまで競合として切磋琢磨してきましたが、これからは新生Zホールディングスグループとして新たな価値の創造に取り組んでいきます」という挨拶で始まったメディア向け発表会。本稿では、質疑応答の模様を中心にお伝えします。

  • ZホールディングスとLINEが経営統合

    Yahoo! JAPANを傘下にもつZホールディングスがLINEと経営統合を果たしました

『根幹領域』と『集中領域』

今回の統合により、Zホールディングス(以下、ZHD)は、国内総利用者数が3億人を超え、国内に展開するサービスは200超、グループ従業員数は約23,000人、エンジニアは6,500人という規模のIT企業に生まれ変わりました。

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    Zホールディングス 代表取締役社長 Co-CEO(共同最高経営責任者)に就任した川邊健太郎氏

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    Zホールディングス 代表取締役 Co-CEO(共同最高経営責任者)に就任した出澤剛氏

ZHDグループでは、「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を『根幹領域』として、また社会課題の解決に向けた「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech(フィンテック)」「社会」を『集中領域』と定めて注力していく方針です。

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    Yahoo! Japan、PayPay、LINE、LINE Payを軸に、ユーザーの日常生活に欠かせない全サービスを連携させていく

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    ZHDグループの注力領域。ビッグデータやAI技術を掛け合わせ、シナジーを強固に創出する

このうちフィンテックについては、すでにLINE PayとPayPayが加盟店におけるQRコード決済事業で連携していくことが決まっています。4月下旬以降、全国にある300万カ所以上のPayPay加盟店のうち、ユーザースキャン方式の加盟店ではLINE Payでも支払いが可能になる見込みです。そして、国内では2022年4月にLINE PayをPayPayに統合していくと発表。なおグローバルでは、LINE Payを継続していく方針です。

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    4月下旬以降、PayPay加盟店でLINE Payも使えるように

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    国内では、LINE PayとPayPayが2022年4月にPayPayに統合

GAFAにはどう対抗する?

質疑応答では、川邊社長、出澤氏がメディアの質問に対応しました。グローバルに展開する企業グループとはどのように戦っていくのか、という問いに川邊社長は「このコロナ禍において、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)と我々の体力の差は、さらに開いたように思います。でもこの1年、ヤフーもLINEも各々のユーザーのために、色々なサービスを提供してきました。日本においては、例えば『給付金のもらい方』のような話題を検索したとき、GoogleよりもYahoo! Japanの検索結果の方が分かりやすい、という声もいただいています。今後、重要になるのはローカルに根ざした対応力をより高めていく、ということだと思います」と回答します。

そのうえで「我々のグループの守備範囲の広さは、GAFAやBATHより優れています。検索、eコマース、メッセンジャー、決済、金融、(親会社まで含めると)携帯電話サービスまで幅広く展開している。このグループの総合力を活かしてやっていきます」と説明しました。

補足として、出澤氏は「ユーザーの視点からしたら、サービスの提供会社はあまり関係がなくて『便利かどうか』がすべてだと思っています。これまでも日本、アジアの利用者の不便に思っていること、困っていることに、我々は真剣に向き合ってきました。そうした部分で、ユーザーにとって圧倒的に便利なサービスをつくっていく考えです」と展望を述べます。

統合によるシナジーについて聞かれると、川邊社長は「それぞれのサービスにメインターゲットとなるユーザーがいます。現状では、ヤフーは男性の40~50代、LINEは若い女性、と棲み分けができている。今回の経営統合により、相互送客、またポイントプログラムの統合によるシナジーなどもあると考えています。一方でユーザー層が重なり、2つのサービスを展開する意味がないものについては、今後統合してコスト削減の効果を出していきます」と回答。出澤氏は「大事なのは、ユーザーにとって本当に便利かどうか。その価値基準でサービスを統合、また別々で伸ばしていく、という深い議論をしていきます」と補足しました。

また、これに関連し、Yahoo!ニュース、LINE NEWSの統合も視野に入っているのか、という質問に川邊社長は「統合は予定していません。色いろなサービスについて、この1年4カ月間、議論してきました。Yahoo!ニュースとLINE NEWSは、ユーザー属性が補完的で、むしろ『混ぜるな危険』と言える。例えば、若い女性が使っているLINE NEWSのリンクからYahoo!ニュースに飛んでしまった場合、『こんな記事を見るつもりはなかったのに』ということになりかねません。だから、このままやっていこうと。こんな形で、あらゆるサービスについて『一緒にできるシナジーはあるのかどうか』をプロダクト委員会で順次、議論していきます」と答えました。

LINEのどこが魅力だった?

ガバナンス体制について聞かれると、川邊社長は「対等経営統合の精神に基づいたものです。お互いのプロダクション文化を尊重しあって、良いところを取り入れていきます。今後、さまざまに乗り越えなければいけない諸課題が出てくると思います。そこを乗り越えるためのCo-CEO(共同最高経営責任者)制度です。2人で話し合って解決していき、それでも決めきれなかったものは取締役会で決めていきます」と考えを示します。

出澤氏も「これからが生みの苦しみを味わうフェーズ。これまではプランニングを議論していましたが、実際にやってみたら難しい、ということも出てくるでしょう。新しいサービスの生みの苦しみですね。これから大変だし、やりがいがある領域だと考えています」と応じました。

ちなみに統合を持ちかけたのは、Zホールディングスからでした。それまで毎年のように、新年会において川邊社長は「そろそろ一緒になりませんか」と出澤氏に呼びかけていたそう。それが「ある年には(出澤氏が)違う反応だった」と振り返ります。また「Payでお互い切磋琢磨する関係でありながら、一緒になった方が日本国内のキャッシュレス化のために良いのでは、ということから自然に近づいていった部分もあった」(川邊社長)と説明しました。

なお、LINEの魅力について川邊社長は「LINEは、より社会課題に突っ込む力があると感じていました。印象に残っているのは、(ソフトバンクと協力して)大型客船のダイヤモンド・プリンセス号に2000台のiPhoneを持ち込み、半ば幽閉のような状態だった乗客に提供して、LINEドクターで健康相談に乗ったこと。またLINEを活用した、新型コロナ対策のための全国調査も実施していましたね。ヤフーもさまざまな側面から国に協力しましたが、あのLINEの突破力、ユーザーのレスポンス、この共振関係が本当にすばらしいと思いました」と振り返りました。

フィンテック、スーパーアプリについて

フィンテックの方針については「国内では、どの金融事業者さんともPayPayの上で、マルチパートナー制でやっていきます。パートナーとして一緒に色んな金融事業を展開していければ。また我々がやりたいのは、金融屋がやるネット事業ではなく、ネット屋がやる金融事業。ユーザー体験において、そういうものにしていきます。先行する事例は、国内ではあまりないと認識しています」と川邊社長。

出澤氏は「PayPay証券とLINE証券ではユーザー属性、取り扱う商品は違ってきますし、PayPay銀行とLINE Bankもそうなると思います。ユーザーから見て何が便利か、どうやったら最大リーチが取れるか、という観点に立って棲み分けできるのでは」と考えを述べました。

スーパーアプリの提供について聞かれると、川邊社長は「生活に身近な異なるジャンルのサービスが1つのアプリでシームレスに使える、という性質がスーパーアプリにはあります。新生ZHDでは、LINE、PayPay、Yahoo! JAPANの3つのアプリが、今後、スーパーアプリ化するかもしれません。かつてはYahoo! JAPANアプリしかなかったので、そこに無理やりサービスを詰め込むと、ユーザー体験を損なってしまう可能性がありました。これからは、各サービスの特徴を活かしながら、無理ない範囲でサービスを発展させていくことができます」として今後の展開に自信をのぞかせていました。