総合コンサルティング会社であるアクセンチュア株式会社は、日本マイクロソフト向けのシェアードサービスとして「MS Business Support Center」を運用しています。ここでは 1,000 種類を超えるサービスを提供しており、業務効率の改善や業務状況の可視化が急務だったといいます。そこで Microsoft Power Platformの「Power Apps」と「Power Automate」をベースとしたチケット管理ツールを導入。さまざまな業務課題の解決を実現することができました。

幅広い業務をこなす日本マイクロソフト向けのシェアードサービス

120 カ国以上の企業を顧客としてグローバルにビジネスを展開する、世界屈指の総合コンサルティング会社アクセンチュア。同社は現在、「ストラテジー & コンサルティング」「インタラクティブ」「テクノロジー」「オペレーションズ」の 4 つの事業領域にフォーカスして幅広いサービスとソリューションを提供しています。そんな同社の オペレーションズ コンサルティング本部では、人間とマシンの協働による変革を支援するプラットフォーム「SynOps」による、継続的なビジネス成果を実現する独自機能の提供を全面的に掲げています。また、BPO/ITOなど現場では業務改善ツールとしてMicrosoft Power Platformを広く活用しており、その技術者も積極的に育成しています。

オペレーションズ コンサルティング本部がマイクロソフトからの全面的な業務委託を受けて運営しているのが MS Business Support Center(以下BSC)です。BSC は、2012 年に庶務業務のマイクロソフト向けシェアードサービスとして発足。当初は庶務サポートデスクをスタッフ 20 人規模で運用していましたが、2018 年の業務領域の拡大や一部業務の大連への移管を経て、現在は 100 人規模の体制により、契約デスク、デバイス管理デスク、マーケティング支援、レポーティングといった幅広い業務領域で 1,000 種類を超えるサービスを提供しています。

業務効率の改善や業務状況の可視化を目指しチケット管理ツールを導入

アクセンチュア株式会社 オペレーションズ コンサルティング本部 栗山 大 氏

アクセンチュア株式会社 オペレーションズ コンサルティング本部 栗山 大 氏

当初 BSC では、マイクロソフト側からの業務の依頼はメールで受け付けており、担当者のアサインや業務実績の集計に時間がかかっていました。アクセンチュア オペレーションズ コンサルティング本部でBSCのサービスデリバリーをリードする栗山 大 氏は、当時の状況を次のように振り返ります。

「アサインにおいては、マイクロソフトさんからの依頼メールに書かれた内容をもとに対象業務を特定するのが困難で、依頼受付の連絡までに時間がかかってしまい、依頼者はどこまで業務が進んでいるか不安を抱えがちでした。そのため状況に関する問い合わせなども頻繁に発生していたのです。また、業務実績の集計についても、各業務担当者が実績を記入しなければならず、負担が発生してしまうとともに、全体状況の把握には個別の台帳の集約が必要なため、結果としてリアルタイムな実態把握が困難となっていました」(栗山 氏)。

こうした課題を受けてアクセンチュアでは、BSCの業務効率の改善や業務状況の可視化を目指して、チケット管理ツールの導入を検討することとなったのです。

各種制約や使いやすさの観点からPower Apps で推進

チケット管理ツールの検討を開始した当初は、アクセンチュア自身が他のプロジェクトで導入実績のあるツールや、一部導入済のマイクロソフトの CRM 製品である Dynamics 365 ベースのツールを候補に入れていました。しかしデータ管理に関するマイクロソフト社の社内ポリシーとの兼ね合いから導入を断念したといいます。

そうした中で紹介されたのが、マイクロソフト社内の業務で既に活用されていたMicrosoft Power Platformのローコードアプリケーション作成ツール「Microsoft Power Apps」でした。Power Apps を使えば、マイクロソフトのポリシーに準拠したチケット管理ツールが自分たちで作成できます。

「Power Apps については以前、導入しているお客様の環境で実際に動いているシステムを見せてもらったことがあり、そのときの印象からもこれなら使えると確信できました。」と栗山 氏は話します。

ITスキルが高くない社員が2 カ月で初期システムをスピード開発

アクセンチュア株式会社 オペレーションズ コンサルティング本部 マネージャー 遠藤 裕徳 氏

アクセンチュア株式会社 オペレーションズ コンサルティング本部 マネージャー 遠藤 裕徳 氏

こうして Power Apps の導入を決めたアクセンチュアが導入に向けてスタートを切ったのは、2019 年 10 月のことでした。体制としては、マイクロソフトが使用しているチケットツールを参考に、プロジェクトで開発を進めることにしたといいます。Power Apps ベースのチケット管理ツール導入推進担当としてリードをとった、アクセンチュア オペレーションズ コンサルティング本部 マネージャーの遠藤 裕徳 氏はこう語ります。

「実際にツール開発を担当したのは、特に IT スキルが高いわけではない当社の若手社員でしたが、それでもPower Apps を理解するにつれてどんどんとシステムを構築していくことができていました。さらにマニュアルを作成したり、説明会の実施なども自らの手で行ったりしてくれましたね」(遠藤 氏)。

2019 年 12 月に初期開発・改修をスタートすると、わずか 2 カ月後には完了。その後は社員向けのツール導入説明会や BSC スタッフ向けのトレーニング、ツールのトライアルを経て、2020 年 5 月にまずは最低限の機能を実装して一部部署(対象者 100 人規模)から本番運用を開始しました。その後は対象部署や対象者を増やしていき、2020 年 10 月時点では全体の 80% の部門で本番運用中とのことです。

3 つのソリューションでチケット管理ツールを構成

こうして開発されたチケット管理ツールは Power Apps と合わせて「Power Automate」「Microsoft Dataverse」で構成されています。Power Automate はPower Apps と同じく Power Platform 製品のひとつで、あらゆるサービスや社内システムをつなげ、定義したフローに従って連携動作を自動化できるサービスです。このチケット管理ツールでは、主にメール通知や Dataverse へのデータ反映の自動化部分に使われています。

チケットの申請データや各種管理データの格納先となるのが Dataverse です。チケット管理ツールの運用にあたっては、継続的な機能拡張を想定して、本番/テストの 2 環境を作成しています。

「運用していくうちに新たな機能追加の要望が出てくるので、そうした機能を開発して実装した際に本番システムに不具合が生じることのないよう、まず試しに動かすことができるテスト環境を用意するようにしました」(遠藤 氏)。

チケット管理ツール利用の流れを確認

Power Apps では、マイクロソフト側の依頼者と、BSC の担当者、管理者それぞれに特化したアプリケーションを作成して提供しています。実際の利用シーンを想定してみると、まず依頼者が、ユーザーアプリケーションから依頼内容を登録し、依頼が完了すると依頼受付メールが送られます。

管理者は、管理アプリケーションで担当者未アサインの案件を識別し、担当者(とバックアップ担当者)をアサインすると、依頼者にアサイン完了メールが送られます。アサインされた BSC の担当者は、案件着手時にステータスを「Working」に進め、納品時に「終了」を選択することで、ステータスが見える化されるというわけです。

なお、BSC 管理者は、管理アプリから業務実績を Excel に抽出し、月次でレポートを作成するといったことも可能です。

1 日に 400 件以上の案件を登録してもツールは安定して動作

チケット管理ツールにはこれまで約 9,000 件の案件が登録されていますが、大きな問題もなく対応できており、1 日に 400 件以上の案件を登録してもツールは安定して動作しているといいます。

そしてツールを導入したことで、依頼受付や担当者アサイン連絡の自動化が実現したため、依頼者は案件の状況把握が容易になりました。また、メールのやり取りが自動的にツールに取り込まれるため、過去のやり取りを探す手間も大幅に減少しています。

依頼受付から担当者アサインまでのスピードが上がったことで、 1 人月程度の工数の削減にもつながっています。データ集計についても以前と比べてはるかに容易になったことから、同じく 1 人月程度の工数を削減できる見通しとのことです。

「自動化が推進されるとともに工数も削減されたことで、チケット管理ツール導入前の課題解決を果たしたことになります。既に一部においてアサインの自動化も実現しています。」と栗山 氏は言う。

将来的にはさらなるデータの可視化や Microsoft Teams との連携も

ここまでの順調な運用と期待を上回る成果を受けて、アクセンチュアでは BSC でのチケット管理ツール活用をさらに拡大していく構えです。たとえばExcel に抽出して分析している Dataverse のデータを「Power BI」で可視化することで、リアルタイムな現状把握を容易にすることを考えています。また、各スタッフの稼働や各プロセスの業務効率を可視化し、適切なトレーニングの提供やプロセス改善を行うことで、継続して生産性を改善していくといいます。

「ダッシュボードでいつでも見られるようにしたいですね。現状は領域ごとのチームリーダーが、それぞれの領域ごとに生産性の改善に努めていますが、ツールがないので“肌感”で判断するしかありません。それが数値として現状が可視化されれば、生産性をさらに向上できるのではと期待しています」(栗山 氏)。

ほかにも、Teams との連携によるコミュニケーションの強化や、パートナー企業との連携による効率的なプロセス設計なども視野に入れているといいます。

「マイクロソフトさんの現場の方々からは、使いやすいであるとか、こうしたらもっと業務が楽になるなどの声が、各チームリーダーを通じて届いています。ネガティブな内容でもぜひ率直な意見をいただけると嬉しいですね。そうした声を反映することで、よりシステムを使いやすく便利なものへと改善でき、ひいてはそれが BSC の評価にもつながってくるのですから。」と、栗山氏は笑顔で語りました。

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