データ加工はデータ分析に欠かせない工程です。そしてデータ分析基盤を構築するには、組織内に散在するデータを収集し、さらにシステムが処理しやすいようにデータを加工する必要があります。あらゆるデータを意思決定に活かそうとデータ分析に取り組む企業は多いですが、データ収集や加工などの準備工程でつまずくこともめずらしくありません。この記事では、データ加工の必要性やメリット、手順、さらには専門ツールを用いた効率的な手法について解説します。「 Excelのデータ集計では膨大なデータに耐えられない、作業が属人的で困っている」などいう課題を抱える方をはじめとして、データ分析やデータ加工の手法を模索している方はぜひ参考にしてください。

  • 【イメージ図】グラフが書かれた紙が散在している様子

なぜデータ加工が必要なのか

データと一口に言っても、ExcelファイルやPOSデータ、SQLデータベースなど数値や記号で整理された構造化データや、画像や動画、音声など人間のコミュニケーションに関わってくる非構造化データまで、そのフォーマットは実にさまざまです。あらゆるデータを分析すれば、そのぶんだけ幅広い情報を得ることが可能ですが、同時にデータの分析や統合といった工程は複雑化します。何も手を加えていない生のデータ(ローデータ)は、分析に適した形式になっていないことが多く、扱うデータの量や種類が増えればそれに比例してデータ加工の手間も増えるためです。

データの統合や分析を正確に行うためには、フォーマットが異なる生データに整合性や一貫性を持たせ、システムが処理しやすいように加工しなくてはなりません。例えばCSVやJSONなどのフォーマットを変換したり、日時や全角半角、大文字小文字などデータの表現形式を統一したりします。その際にはデータ加工・変換を行うETL(Extract/Transform/Load)や、非IT人材でもデータ加工・変換ができるデータプレパレーション(Data Preparation)などのツールを用いられることが多いです。加工後のデータはデータレイクなどに保管され、必要に応じて抽出されます。

データ加工のメリット

データ加工のメリットは、データ分析の精度向上が期待できるという点にあります。いくら高性能なAIやBI(Business Intelligence)ツールを用意しても、投入するデータが整理されていないと分析結果は不正確になり、かえって損失を出しかねません。データ加工を通じて誤ったデータを整え、正確なデータのみを抽出することで、はじめてデータ分析の精度を上げられます。

また、データドリブン経営にも効果を発揮します。データドリブン経営とは、経験や直感に限らず、データ分析に基づく意思決定を行う経営スタイルです。客観的なデータ分析を通じてリスクを最小限に抑え、顧客ニーズ把握によるサービス改善、組織全体の生産性や収益性の向上を目指していきます。そしてそのためには、間違いや不純物を取り除き、正しく加工されたデータが不可欠です。

データ加工の手順

データ加工は主に4つの手順に分かれています。

1. データ選定

まず、加工の対象とするデータを選定します。企業のデータは個人PCからクラウドストレージ、オンプレミスサーバーなどさまざまな場所に格納されています。膨大なデータの全てが有用というわけではないため、目的に合ったデータを選び出すことが重要です。例えば、顧客満足度を向上させるためには、顧客アンケートやクレームデータ、顧客窓口の通話記録、サービス利用頻度などのデータを選定する必要があります。

2. 形式統一

選定した各データは異なるソースから収集されるため、ファイル形式や文字コード、データ型がそろっていない場合が多いです。そのままだと分析に支障が出るので、これらのデータ形式を統一します。例えば、選定したデータの間で文字コードがUTF-8とShift-JISで分かれている場合、文字化けを防いでデータの整合性を保つために、すべてのデータを片方の文字コードに統一します。ファイル形式の統一は、データの読み込みや加工を効率化し、データ分析のトラブルを避けるために欠かせません。

3. データ補正

データには欠損値や異常値(外れ値)が含まれていることがあり、それらを適切に処理しなくてはなりません。欠損値に対してはデータの不足部分を補う処理を行います。また異常値には、データから外れた値を正常範囲内に修正したり、そのデータ自体を除外したりします。例えば顧客データベースで一部顧客の年齢情報が欠落している場合、平均値や中央値または最頻値を用いて補填したり、他の変数から年齢を予測したりします。

4. 名寄せ

名寄せとは、異なる場所にあるデータを整理し、人物や製品など同じ対象に関する情報を結びつけ、データの重複を防ぐための作業です。その際には共有キーという識別子が使われます。

共有キーとは、異なるデータセットの間で同じ対象を指し示すために用いられる情報です。人物であればメールアドレスや電話番号、製品であればバーコードや製品番号が共有キーに当たります。共有キーを用いれば、オンラインの購入履歴と実店舗での購入履歴が同じ人物であることを確認でき、重複を防げます。

  • 【イメージ図】表計算ソフトの画面を映しているパソコン

なお、これらの手順以外にも、データの一部を隠したり変換したりして機密情報や個人情報を保護する「マスキング」「匿名化」や、特定のテーマ・目的に特化したデータウェアハウス上のテーブルを作成する「マート作成」といった処理を施すこともあります。

データ加工を効率的に進めるには

データ加工には多くの手間がかかります。データ量が膨大だったり必要な処理が複雑だったりする場合、従来のようなExcelを用いたデータ加工では処理が難しく、工数が増えてしまうでしょう。そのような処理はヒューマンエラーも発生しやすくなります。だからこそ効率的にデータ加工作業を進めるためには、専門ツールの導入が欠かせません。

ここからは代表的なデータ加工ツールをいくつか紹介していきます。

ETLツール

ETLツールとは、データの抽出(Extract)、変換(Transform)、格納(Load)を自動化するソフトウェアです。ノーコードの製品も存在し、プログラミングスキルがない人でも直感的にデータ加工を行えます。ETLツールを活用すればデータの抽出から変換、データベースへの格納までのプロセスが効率化され、時間とコストを削減可能です。

ETLについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ETL処理とは? ツールが必要とされる理由から選定時のポイントまで解説!

データプレパレーションツール

データプレパレーションツールとは、データのクリーニング、整形、統合などの前処理を支援するソフトウェアです。ETLツールと混同されがちですが、データプレパレーションはデータ分析の前準備に特化しているのに対し、ETLは準備以外のプロセスにも対応しています。また、データプレパレーションは主に非IT人材を対象とした製品ですが、前述のようにETLツールにもノーコード製品が登場しており、その差はなくなりつつあります。

AI活用

近年ではAIを活用したデータ加工ツールも登場しています。そのようなツールでは、データのパターン認識や異常検出、自動分類などを行うため、より高度なデータ加工が可能です。またAIであれば、人間では見逃しがちなデータ内のインサイトを発見したり、加工作業を自動化したりすることもできます。

これらデータ加工ツールを用いれば、作業を効率化・自動化するだけでなく、データ分析をリアルタイムで行えるようになります。市場環境の変化が激しい現代のビジネスにおいて、Excelによるデータ分析は時間を要し、現実の顧客ニーズとのタイムラグが生じかねません。迅速に意思決定を下し企業利益を得るためにも、データ加工ツールの活用は欠かせないものです。

まとめ

生のデータを分析可能な形式に整理・加工するデータ加工は、データ分析の質に大きく影響を及ぼす重要なプロセスです。適切にデータを加工し、クリーンなデータセットを準備できれば、信頼性の高い分析結果を手に入れ、意思決定へ活かせるようになります。

現代のビジネスでは、データドリブン経営が重視されています。データ加工ツールなどを用いて分析作業を効率化すれば、迅速な意思決定を実現でき、競争優位性の確保に近づくでしょう。

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