DXの波は製造業界にも押し寄せている。しかしながら、工場のIoT化、ロボットやAIの活用などに力を入れる一方で、発注や請求業務にはアナログでの作業が残ってしまったままというケースは珍しくない。真のDXを実現するには、最新技術の活用という攻めの観点だけでなく、あらゆる工程でデジタル化やプロセスの見直しを進め業務効率化を図るという守りの観点も重要となる。

電気・電子・通信機器や産業用機械、光学機器などの開発製造販売を手掛ける駿河精機は2022年秋、テラスカイのサポートのもとクラウド型基幹業務支援アプリケーション「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA OM(以下、GLOVIA OM)」を導入、販売管理業務の効率化を実現した。GLOVIA OMは、Salesforceプラットフォームのクラウド基盤を活かして顧客・商談から販売・生産・在庫までを一気通貫で管理でき、拡張性が高い点がポイントだ。駿河精機では、OCR化にinvoiceAgent、帳票作成にSVF Cloudといったクラウドサービスと連携するなどし、業務効率の向上を徹底した。

駿河精機が使用していた以前のシステムは自社でスクラッチ開発したが、長年運用を進める中で保守面、効率面、管理面などにおいてさまざまな課題が出てきたという。 なぜGLOVIA OMを選定し、そして狙い通りの効果を得られたか。導入プロジェクトを担当した駿河精機 事業管理室 ジェネラルマネージャー 鈴木 祐尚氏、EC開発部 リーダー 野口 真誉氏、同 マネージャー 深澤 亮氏に話を伺った。

独自システムがブラックボックス化、あらゆる面で課題が山積み

駿河精機ではOST(Optical & Scientific Technology)関連の事業を手掛け、製品や部品の組立・加工・検査における位置調整に不可欠な「位置決めステージ」では国内トップのシェアを誇り、アジアや欧米を中心にグローバルで事業を展開している。

今回、システム改修の対象となったのは、この駿河精機OST事業の受注センターにおける販売管理システムだ。従来のシステムは2008年に自社開発したもので、事業拡大にあわせて機能追加を重ねてきた。その結果、ブラックボックス化してしまいメンテナンス性が低下。サーバーの老朽化も進むなど保守面で大きな課題を抱えていた。また、必要なデータのダウンロードが困難なうえに、EDIの適用が進まず、紙帳票のやりとりや印刷、手作業でのデータ入力や確認作業が残っているなど業務効率という観点でも問題があった。

近年では製品ラインナップも追加され、小額多量の製品も扱い始めたことで、オペレーターの負荷増大、データ検索性の低下といった課題も発生。結果的にお客様を待たせてしまう事にもつながっていた。鈴木氏が「大量の紙帳票のデータを入力し、それをダンボールに保管して…といった紙ベースの作業が残るなど、システム化できていない状態でした。顧客からの問い合せや監査などによる資料提出を求められた際には、その度ごとに倉庫へ行って探す必要があり、該当のものを見つけるのにもかなりの時間がかかっていました」と説明するように、システム改修は待ったなしの状況だった。

駿河精機株式会社 事業管理室 ジェネラルマネージャー 鈴木 祐尚氏

駿河精機株式会社
事業管理室 ジェネラルマネージャー
鈴木 祐尚氏

複数のシステムを検討したなかで駿河精機がGLOVIA OMの導入に至った決め手は、その拡張性の高さ、そして周辺システムやサービスと容易に連携できるという強みだった。

「事業が発展していくなかで、営業の案件管理についてもきちんと行っていかなければならない状況でした。グループ会社でもSalesforceを活用していた背景から、当社でも活用を強化していく流れがあり、そういった観点からもGLOVIA OMの拡張性は大きな決め手となりました」(鈴木氏)

GLOVIA OMを導入するにあたって、特に重視したのはFAXやEDIから出力したPDFの情報の手入力業務を極力無くしてアナログな業務フローから脱却すること、正しいデータを一元的に管理し、入力ミスなどによるクレームも発生させず、経営判断に活かせるようにすることだ。

これらの観点に基づき、システム構成が決まった。まず、FAXやPDFで送られてきた各得意先からの見積もり依頼や注文情報はウイングアーク1stが提供するAI-OCR機能「invoiceAgent」をGLOVIA OMに連携。さらに見積書などの帳票は、同じくウイングアーク1stのクラウド帳票作成サービス「SVF Cloud」を採用し、速やかに、PC画面上で帳票作成を行えるようにした。

また、生産管理、出荷、財務会計といったシステムとも連携することで、大きな課題であった情報の一元化とリアルタイム共有を実現し、営業部門における案件管理はもとより、リアルタイム情報による適切な顧客対応や経営判断も可能になる。

  • 駿河精機_GLOVIAOM

想定外の事態もテラスカイのサポートで乗り越え、サイロ化したシステムの統合に成功

プロジェクトを進める中で、サイロ化されたシステムならではの苦労が立ちはだかった。 鈴木氏は次のように振り返る。「これまで、見積・受注、請求、入金管理がそれぞれ別のシステムに分かれていたため、既存業務の全体像を理解している人がおらず、オペレーション変更には苦労しました」(鈴木氏)

EC開発部 リーダーの野口氏は、「テラスカイ側から専任人員や担当メンバーの時間の確保を提案していただいたことで社内が動き、プロジェクトが進みました」と当時の様子を振り返る。

またEC開発部 マネージャー の深澤氏は、「テラスカイは、UI設計やデータ取得の方法などSalesforceの知見が豊富なうえ、子会社のテラスカイ・テクノロジーズの方に来ていただき技術的なサポートをしていただいたおかげで、無事開発を進めることができました」とテラスカイの対応について評価する。

鈴木氏は「テラスカイとは、ミーティングなど細かなコミュニケーションを密に行い、両社でスコープを固めていきました。スケジュールに課題が生じそうなときは、テラスカイ側の人員調整だけでなく、駿河精機側のメンバー調整を積極的に提案いただくなど、プロジェクトをリードしてもらいました。スケジュールどおりに開発ができたのは、テラスカイのリードに加え、社内のオペレーターや他部門の協力も非常に大きいです」と振り返った。

  • 駿河精機株式会社 EC開発部 リーダー  野口 真誉氏

    駿河精機株式会社
    EC開発部 リーダー
    野口 真誉氏

  • 駿河精機株式会社 EC開発部 マネージャー  深澤 亮氏

    駿河精機株式会社
    EC開発部 マネージャー
    深澤 亮氏

経営判断におけるSalesforceの活用も促進し、事業拡大へ貢献していく

GLOVIA OMの導入からまだ間もないが、旧システムにおける一番の課題だった業務効率に関してはすでに目に見えた効果が現れているという。

「旧システムでは見積や請求情報など各項目でデータがバラバラに管理されており、他とのつながりがわかりづらかったのですが、GLOVIA OMの導入によってすべての情報を一貫して管理できるようになりました。手入力で効率が悪かった業務も、invoiceAgentで外部データの取り込みができるようになり、さらに、SVF Cloudによって帳票作成がスムーズになったので、案件1件あたりの作業時間は大きく改善しました」(鈴木氏)

かつてはメールやチャット、電話など、さまざまな連絡ツールが乱立していたが、Salesforce上でコミュニケーションを完結できるようになったことで、無駄なやりとりを大幅に削減できているとのことだ。

さらに、プロジェクト開始当初には想定していなかったメリットもあった。レポートを作成したい場合、従来は情報システム部門に依頼してCSVで出力したデータを用いていたというが、Salesforce上での管理となったことで、該当するレポートをダッシュボードで視覚的に表示し瞬時に確認できるようになった。こうして迅速な経営判断につなげられるという点は、Salesforceプラットフォーム上にアプリケーションを構築することの大きな強みとなる。

今後について鈴木氏は「GLOVIA OMの改善を進め、より使いやすいシステムにしていくことで、Salesforceの機能を使い倒していきたい」と意気込む。営業部門でのSalesforce活用を進めて連携し、商談まで含めた案件管理を行っていくことで、顧客対応力を向上させさらなる事業拡大に対応していきたい考えだ。

「テラスカイにはこれからも、Salesforceやシステムの知見、高い業務理解をもとに、駿河精機が取り組む業務改革への伴走を続けていただきたいと思います」(鈴木氏)

  • 左から深澤氏、鈴木氏、野口氏

※2022年6月より「SPA Cloud 」は「invoiceAgent」に名称を変更しました

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