米国商務省は5月13日(米国時間)、CHIPS and Science法(CHIPS法)に基づいてサンケン電気の米国子会社Polar Semiconductorに最大1億2000万ドルの補助金を支給することを決定したと発表した。

この補助金は、米国ミネソタ州ブルーミントンにあるPolar Semiconductorの製造施設を拡張し、新しい製造装置を導入するために活用されるもので、同社は全体としてこのプロジェクトに今後2年間で約5億2500万ドルを投資する予定で、これにより200mmウェハの月産能力を現在の約2万枚から将来的には4万枚へと倍増させることを計画している。

Polar Semiconductorは、2005年にサンケン電気が米国のアナログ半導体製造会社「PolarFab」を買収して誕生したサンケン電気の半導体製造子会社。今回の発表に併せる形でNiobrara CapitalおよびPrysm Capitalから1億7500万ドルの出資を受けるとPolar Semiconductorでは説明している。ただし、5月15日時点ではまだ出資は完了しておらず、Polarの持ち分割合はサンケン電気が70%、Allegro MicroSystems(サンケン電気の別の米国子会社)が30%となっている。この出資が完了すると、米国の投資会社が過半数の株式を保有することとなるため、米国商務省では株式の大半を米国資本が所有する商業ファウンドリという位置づけで、米国のチップ設計者が米国内でそのチップを委託生産する機会が拡大することになると指摘している。

また、Polar Semiconductorの社長兼最高執行責任者であるSurya Iyer氏も「当社は、NiobraraおよびPrysmからの株式投資を歓迎する。これにより当社が米国資本の所有となることと、当社の長期パートナーであるサンケン電気およびAllegro MicroSystemsの継続的なサポートを歓迎する」と述べている。

Polarは、米国政府による補助金のほか、ミネソタ州雇用経済開発局(DEED)からも7500万ドルの助成を受ける予定としているほか、米財務省の投資税額控除を申請することで資本支出の最大25%の税優遇措置を受けることができるともしている。

なお、CHIPS法にもとづく補助金支給については、まだTexas Instruments(TI)やAnalog Devices(ADI)などの米国の大手半導体メーカーをはじめとした数百社が申請、結果待ちの状態にあるが、すでに米商務省は、Intel、Micron、TSMC、Samsungにそれぞれ1兆円規模の補助金支給を決めており、5年間にわたるCHIPS法予算(総額527億ドルのうち、米国内半導体製造強化向け390億ドル)の残りは少なくなってきているといえる。レモンド商務省長官は、最近になって「第2のCHIPS法」の必要性を語り始めているが、半導体ばかりに巨額投資を続けることに米国の納税者の理解を得るのは簡単ではなさそうだ。

2024年5月15日訂正:記事初出時、Polar Semiconductorの生産能力の増強計画について「2年以内に2倍」と記載しておりましたが、増強の具体的な時期については公表されていないため、当該箇所を修正させていただきました。また、併せて新たな出資者であるNiobrara CapitalおよびPrysm Capitalからの出資につきましても5月15日時点で完了していないことから、当該箇所を修正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。