米国と国内に拠点を置くMODEは4月24日、クラウド上に蓄積されたIoTデータ等を、ChatGPTを使って、チャット型インタフェースでデータ抽出できるアシスタントサービス「BizStack Assistant」(ビズスタック・アシスタント)を、5月1日から提供すると発表した。価格は5月1日までに決定する。

  • 「BizStack Assistant」

    「BizStack Assistant」(出典:MODE)

「BizStack Assistant」は2023年11月1日よりベータ版の提供を開始し、これまで西松建設やパナソニックなど4社が利用してきたが、今回、評価や改良を終え、正式版としてリリースする。

「BizStack Assistant」とは

同社はこれまで、センサーから集めたIoTデータなど現場のデータを、クラウド上に自動で蓄積できるソリューション型IoTプラットフォーム「BizStack」を提供してきた。これによって、これまで人が巡回しデータを集めたり、監視したりしてきた作業を自動化した。

「BizStack」に蓄積されたデータは、これまでダッシュボード形式で表示できたが、導入企業からは「現場で仕事をする作業員はパソコンの前に常にいるわけではない」、「コンピューター言語を知らないと設定が難しい」などの声があったという。

こうした背景から、工事現場や点検の見回りなどPCが使えない現場でも、生成AIを通じて現場状況をチャットベースでデータを確認できる「BizStack Assistant」を開発した。

  • 「BizStack」に貯めたデータは、これまでダッシュボード形式で表示

    「BizStack」に貯めたデータは、これまでダッシュボード形式で表示できた(出典:MODE)

  • 「BizStack Assistant」は、クラウド上のデータをチャット形式で問い合わせ、返答を返す

    「BizStack Assistant」は、クラウド上のデータをチャット形式で問い合わせ、返答を返す(出典:MODE)

表示できるデータは、温度や風速、消費電力などの時系列データやカメラ映像など。また、マニュアルや過去のQ&A等を登録しておけば、操作方法などの問い合わせもできる。さらに、時系列データのグラフ化、定型の日報などの作成、リアルタイムデータの集計なども行える。

  • 動画の表示

    動画を表示した様子(出典:MODE)

  • 日報やグラフ表示した

    日報やグラフで回答を表示した様子(右)(出典:MODE)

生成AIは、現在はChatGPT 3.5を利用しているが、同社はこれにこだわりはなく、より良いLMM(大規模マルチモーダルモデル)が出てきた場合は、そちらに切り替えられるような仕組みになっているという。また、UIとして利用しているチャットは、Teams、Slack、direct(L is B)など、普段使っている製品も利用できる。

  • 「BizStack Assistant」の特徴

    「BizStack Assistant」の特徴(出典:MODE)

MODE プロダクトマネージャー 渡辺飛雄馬氏は「BizStack Assistant」の強みについて、次のように述べた。

「今までIoTデータを確認する際には現場に行ってコンソールを見たり、Webにログインして、自分の見たい可視化範囲を指定して表示させたりしなければならなかった。しかしが、BizStack Assistantによりいつも使っているチャットアプリケーションの中でIoTデータを確認できる。また、少しタイピングするだけですぐに回答が返ってくる。これが『BizStack Assistant』が提供している大きな価値になる」

  • MODE プロダクトマネージャー 渡辺飛雄馬氏

    MODE プロダクトマネージャー 渡辺飛雄馬氏

渡辺氏は、「BizStack Assistant」の強みの背景にあるのは、「BizStack」が持つデータの構造化技術「Entity モデル」だと説明した。

「一般的にデータ活用では、データレイクという沼を作りがち。例えば、サイロ化した結合できないデータベースなどによって、拠点ごとにデータベースが分かれていたり、命名規則がバラバラなテーブル、カラムの縦軸と横軸がそろっていなかったりというのはよくある話だ。われわれは、こうした課題を解決するため『Entity モデル』という基礎技術を使っている。日本語に訳すと実体になるが、実在物概念にデータを当てはめるという形で、IoTのゲートウェイからデータを取ってくる瞬間からデータを構造化して保管するという仕組みを持っている」(渡辺氏)

  • 「Entity モデル」

    「Entity モデル」(出典:MODE)

今後は介護現場や創薬領域での利用も期待

「BizStack Assistant」は現在、建築や工事現場、ファシリティマネージメント、工場の保守点検などの用途での利用が想定されるが、介護現場や創薬領域での利用も期待できるという。

また、今後の機能強化としてレポート機能の精度を高めるほか、来年以降はチャット以外のUIも検討していく。

「現在、適切なインタフェースを探している。現場であればインカムがいいのか、それともHMDなのか、アニマルデバイスがいいのかというところを、お客様と話をしながら検討していきたいと考えている」(渡辺氏)

また、同氏は生成AIについても、「『BizStack Assistant』がお客様の前に立つ必要はないと思っている。例えば、Teams上でMicrosoftさんの『Copilot』がAIアシスタントとしてやり取りをする世界が当たり前になってきたら、その裏で『Copilot』が『BizStack Assistant』に聞くといった生成AI同士が会話していく世界もすぐそこに来ている。BizStack Assistantがその裏側に入ったり、あとはGPT-2の中に入っていったり、そういった世界観をイメージしている」と述べた。

MODE CEO/共同創設者 上田学氏は、同社のビジネス戦略について以下のように語り、意気込みを見せた。

「これからは、パソコンの画面を操作するのではなく、現場で欲しい情報を日本語かつ自然言語で聞けば、必要な情報を優秀な部下のように返してくれる、これが『BizStack』の新しい使い方になる。今は人間が行っているため時間がかかる、物理的に動いて確認しないといけない業務について、かかる時間を短縮して少ない人数で行えるようにするところに可能性を感じている。この部分にフォーカスしている会社は非常に少ないので、私たちがそこでどんどん先鞭をつけていけば、大きなチャンスがあると思っている」

  • MODE CEO/共同創設者 上田学氏

    MODE CEO/共同創設者 上田学氏