バイデン米大統領は4月24日、対立する国の管理下にあるアプリケーションによる脅威から米国の国家安全保障を守る法案に署名した。これは中国発のショート動画投稿アプリ「TikTok」が争点の1つとなっていた法案で、TikTokを運営する中国のネット大手ByteDanceに対し、TikTokの米国事業の売却を義務付け、さもなくば米国内でのサービス提供を禁止する。法案成立を受けて、TikTok CEOのショウ・チュウ(Shou Chew)氏は、米国で保護されている表現の自由に反する違憲の禁止令であると主張し、法廷で争う構えを示した。

禁止措置までの猶予期間は270日であり、適格な売却に向けた道筋が確認され、実行に向けた進展がある場合に限り、一度だけ90日の延長を認められる可能性がある。違反した場合、米国の利用者1人あたり最大5,000ドルを上限とする制裁金が課されることとなる。適格な分離が期限内に完了しなかった場合も1人あたり最大500ドルの制裁金が課される。

この法案は今年3月に「賛成352、反対65」という票差で米下院を通過し、4月23日に米上院でも「賛成79、反対18」の大差で可決された。賛成多数を得たものの、禁止措置については意見が分かれている。TikTokを脅威と見なす理由として、中国からのプロパガンダ、スパイ行為や情報操作、プライバシー侵害などが挙げられているが、それらを裏付ける明確な証拠は示されていない。表現の自由に関わる問題であるため、禁止するつもりはないと主張しながら、売却を迫るために賛成票を投じた議員も少なくない。

米国は世界で最もTikTokユーザーが多い国であり、米国人ユーザーは1億7,000万人を超える。CNBCが行った調査(3月15〜19日に実施、1,001人の米国人が回答)によれば、全体の31%が禁止措置に反対しており、18〜34歳の層ではその割合が48%に上る。日常的にTikTokを利用している調査参加者の約3分の2が、政府はソーシャルメディア・アプリを禁止すべきではないと考えている。一方で、全体の20%が「禁止すべき」と回答し、27%は「中国資本以外に売却」を支持している。TikTok規制を巡り、米国では国家安全保障と社会的・文化的な懸念、さらには若年層と高齢層、ソーシャルメディアの利用者と非利用者の間の対立が深まっている。