NECは12月20日、独自AIを活用した予測精度マネジメントによる収益拡大に向けた戦略立案高度化の実証実験を、アサヒ飲料と6月〜10月までの5ヶ月間実施したことを発表した。その結果、需要予測専門家であるデマンドプランナーの知見や暗黙知で行っていた新商品の需要予測の類似性判断で7割程度を再現したほか、判断材料やノウハウなど属人的でデータ化できていない要素の可視化や、売上機会損失、棚卸資産、在庫保管費、物流費削減など机上評価で年間3億円の削減が見込まれることを確認したという。

  • 実証実験の実施詳細

    実証実験の実施詳細

実証実験の詳細

この実証実験では、NECの独自AI技術と需要予測の知見を組み合わせ、アサヒ飲料の新商品発売前の時点において、需要予測のカギとなる「類似性判断(ベンチマーク商品の選定)」「類似品との差異分析による需要予測」、「需要予測オペレーション管理のためのしくみ構想」を実施した。

「類似性判断(ベンチマーク商品の選定)」では、過去に発売された新商品とベンチマーク商品のくみ合わせについて、商品マスタや過去実績、マーケティング施策情報などを用いて分析したという。その結果、類似度ランキングトップ10では過去、人によって選択された商品の7割程度を再現すると同時に、デマンドプランナーが考慮しているもののデータ化できていない要素を明確化できたという。

「類似品との差異分析による需要予測」では、過去発売品の実績やマーケティング施策、天候情報などを用いて、新商品ごとに需要の因果関係を推定し、AIが販売開始から一定期間の需要を予測した。その結果を、現行オペレーションでの予測精度と比較したところ、条件を見極めることで同等精度を実現したという。

商品別では、発売5週間前時点で3~4割、発売翌日時点では4割の商品で、AI予測が現行オペレーションの予測精度を上回ったということだ。今後も分析と推測を継続することで、現行の同等以上の予測精度と、新商品需要予測業務のスピード向上や組織パフォーマンスの再現性向上が期待できるとしている。

「需要予測オペレーション管理のためのしくみ構想」では、高度な需要予測の標準化に向けた管理指標の定義や業務プロセスの設計を行った。具体的には、アサヒ飲料の現行の予測精度管理指標とNECの知見を融合し、未来の業務プロセスを整理してダッシュボードイメージを構築。

出荷量、購買データなどを基に作成する需要変動アラートのシミュレーションを行い、アサヒ飲料のデマンドプランナーによる評価を実施。需要変動をアジャイルに捉えるアラートの仕組みを設計することにより早期に市場の変化を捉えて需要予測を修正し、必要に応じて需要予測ロジックを見直すことで、売上管理や在庫・生産管理、調達・物流計画などへ反映が可能になるとしている。

この実証実験を通じ、NECはアサヒ飲料における需要変動の可能性の想定や早期の察知により、SCMやファイナンス部門における事前のリスクヘッジ策の検討と、営業やマーケティング部門における納得感のある因果関係情報を基にした需要拡大アクションの検討を実現し、売上と利益のさらなる拡大を支援する考え。