SiTimeは9月19日(米国時間)、データセンターやネットワークインフラストラクチャ機器など高精度タイミングを必要とする分野向けに安定したクロックを実現する、MEMSベースのOCXO(温度制御型水晶発振器)「SiTime Epoch Platform」を発表した。

同製品は、シリコンベースのMEMS OCXOとすることで従来の水晶OCXOと比べて、安定性(一貫性)を8倍向上できるほか、弾力性は2倍向上、省電力性は3倍向上、そして全体の信頼性に至っては30倍以上に向上しているとするほか、MEMSであるため小型化が容易で、モジュールサイズについてもデジタル回路部やLDOなども搭載しつつ、1/9まで小型化したという。

  • Epoch MEMS OCXOと従来の水晶OCXOの比較
  • Epoch MEMS OCXOと従来の水晶OCXOの比較
  • Epoch MEMS OCXOと従来の水晶OCXOの比較 (資料提供:SiTime)

SiTimeで製品マーケティング担当副社長を務めるJeff Gao(ジェフ・ガオ)氏は、「重要なのはネットワーク内の全ノードのタイミングの同期化で、ネットワークインフラに求められるタイミング精度は近年では許容される時間誤差が130ns程度と厳しいものになっている」と説明。そうした厳しい要件を満たすタイミングデバイスとしては、温度変化に対する高い安定性であったり、一定温度における短時間の周波数安定性(ADEV)、一定時間(4時間、8時間など)にわたって時間の精度を維持するホールドオーバーといった複数のパラメーターで高い精度を実現する必要があり、Epoch Platformでは-40℃~+95℃までの幅広い温度範囲で高い精度を提供することで、そうしたニーズに応えることを可能としたとする。

  • Jeff Gao(ジェフ・ガオ)氏

    SiTimeで製品マーケティング担当副社長を務めるJeff Gao(ジェフ・ガオ)氏

また、消費電流は水晶OCXOの約1/3程度となる420mWとしており、PoEによる電力供給なども可能で、電力消費が大きいユーザーに向けては大きく電力消費を下げられる点をメリットとして説明しているともする。

  • Epoch MEMS OCXOの概要
  • Epoch MEMS OCXOの概要
  • Epoch MEMS OCXOと概要 (資料提供:SiTime)

さらに、周波数ならびに電圧については出荷前にOTPで設定する方式を採用しており、顧客のニーズに応じて個々別々のセッティングが可能だとしている。

なお、主なターゲットはデータセンターやネットワークインフラ分野としており、日本でもそれは変わらないとしている。またすでにエンジニアリングサンプルについては条件に合致するアーリーアダプタ向けに提供を開始済みとのことだが、日本の顧客はそこに含まれていないという。Gao氏は日本市場について「確かにアーリーアダプタはいないものの、高精度タイミングのニーズは強い地域であり、潜在的な顧客は多いと思っている」としており、一般サンプルの提供開始時期となる2023年10月ならびに量産開始予定時期の2024年初頭以降、順次、日本での積極的は拡販活動を進めていくとしている。

  • Epoch MEMS OCXO

    左がEpoch MEMS OCXO、右が水晶OCXO