北海道大学(北大)と東京農工大学(農工大)は12月7日、魚類がマイクロプラスチックの摂取を通じて、プラスチック製品に含まれる添加剤を筋肉や肝臓などの体組織に取り込み蓄積することを実証したと共同で発表した。

同成果は、北大大学院 環境科学院の長谷川貴章大学院生(研究当時)、北大 北方生物圏フィールド科学センターの仲岡雅裕教授、農工大の高田秀重教授、同・水川薫子助教、同・ヨー・ビーギョク研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、海洋資源や海洋汚染など海洋に関する全般を扱う学術誌「Marine Pollution Bulletin」に掲載された。

近年、海洋におけるプラスチックごみの増加が深刻な環境問題となっており、中でも細分化されて粒径が5mm以下となったマイクロプラスチックは、海洋動物に取り込まれることで物理的・生理学的な悪影響を与えることが明らかになっている。

また、プラスチック製品にはさまざまな化学物質(添加剤)が高濃度で含まれており、それらがマイクロプラスチックから溶出し生物の体内に移行・蓄積することも懸念されている。添加剤の中には生物に有害な物質を含むものもあり、その蓄積や濃縮は、食物連鎖を通じて、最終的にはヒトを含む大型動物にも悪影響を与える可能性があるという。また魚類は、マイクロプラスチックを水中から直接取り込むだけでなく、マイクロプラスチックを含む餌生物の摂食を通じて大量に摂取しており、添加剤の組織への移行にもこの2つの経路があることから、その解明の相対的重要性が高いとする。

  • マイクロプラスチックが、食物連鎖を通して添加物を魚類に運ぶメカニズム

    マイクロプラスチックが、食物連鎖を通して添加物を魚類に運ぶメカニズム(出所:共同プレスリリースPDF)

そこで研究チームは今回、肉食性魚類「シモフリカジカ」(以下、カジカ)とその餌生物である小型甲殻類「イサザアミ類」(以下、アミ)を用いて、マイクロプラスチック由来の添加剤の体組織への移行およびその蓄積を調べるとともに、その蓄積における、マイクロプラスチックの水中からの摂取と、餌生物を通じた摂取の相対的重要性について、水槽実験を通じて検証することにしたという。

今回は、北海道東部の厚岸湖(あっけしこ)で採取されたカジカとアミを用いて、北大 北方生物圏フィールド科学センター 厚岸臨海実験所にて水槽実験が行われた。添加剤として、2種類の臭素系難燃剤(BDE209、DBDPE)と、3種類の紫外線吸収剤(UV-234、UV-327、BP-12)を含むポリエチレンペレットを粉砕し、平均粒径30μmにしたマイクロプラスチックが実験に用いられた。