群馬大学は7月12日、糖尿病のすい臓のβ細胞(膵β細胞)からのインスリン分泌が低下する新たな原因を解明したと発表した。

同成果は、群馬大 生体調節研究所の井上亮太助教、同・白川純教授を中心に、横浜市立大学、カナダ・アルバータ大学、理化学研究所、米・ジョスリン糖尿病センターの研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、生命科学・物理・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。

日本国内における2型糖尿病患者数は約2000万人と推計されており、腎症による人工透析患者数の増加などが問題となっている。同疾患は、高血糖や炎症などにより膵β細胞からのインスリン分泌が低下することと、肥満などによるインスリン抵抗性により発症する。インスリン分泌の低下により血糖値が上昇することがわかっているが、その原因は充分にわかっておらず、糖尿病患者で減少する膵β細胞からのインスリン分泌を回復させることが、糖尿病の治療につながると考えられている。

研究チームはこれまでの研究から、高グルコース刺激によりマウス膵島で遺伝子発現が増えるタンパク質として、ミトコンドリア内に「Uncoupling protein 2(UCP2)」を発見している。しかし、UCP2は糖尿病ドナー由来の膵島で増えていることはわかっていたが、膵β細胞でなぜUCP2が増えるのかは不明だったという。

また、UCP2と構造が似たタンパク質として「UCP1」があるが、それはミトコンドリアが豊富な褐色脂肪に存在し、細胞のエネルギー源となるATPの産生を減らし、そのエネルギーを熱に変換する役割を担っていることが知られている(脱共役)。

それに対し、膵β細胞においては、UCP1ではなくUCP2が発現していることから、研究チームは今回、膵β細胞でUCP2が過剰に作られる遺伝子改変マウス(βUCP2Tgマウス)を作成し、膵β細胞でのUCP2の役割を検討することにしたという。