日立製作所と日立オートモティブシステムズは8月30日、自動運転用アプリケーションの開発過程で発生したアプリケーションの不具合を短時間で再現する技術を開発したと発表した。両社は、同技術が不具合の原因究明を効率的に進めることを可能とし、自動運転用アプリケーションの高品質とテスト工数の削減に寄与すると説明している。

なお、同技術を搭載した自動運転ECU(Electronic Control Unit)とソフトウェア開発キットは2017年11月より提供を予定している。

自動運転ECUの役割

現在、前方障害物をカメラやレーダーなどのセンサで検知し、自動でブレーキをかけるといった自動運転技術が実用化されており、車両の走行を制御するアプリケーションを自動運転ECUで実行している。今後、さらなる高度化に向けて、前方だけでなく車両周辺を360度センシングして、車線変更や追い越しなど、さまざまな走行を自動で制御するアプリケーションの開発が進んでいる。

従来、アプリケーションの開発過程で不具合が見つかった際には、車内ネットワーク上に流れるセンサ情報が記録された外部記録装置の中から、該当するセンサ情報を、記録されたタイミングで自動運転ECUに入力することにより不具合を再現し、原因を究明していた。しかし、今後のセンサ情報の膨大化により、アプリケーションに入力された大量のセンサ情報を不具合発生時と同一タイミングで再現することは難しくなり、不具合の再現が困難なケースが増加し、テスト工数が急増することが懸念されていた。

今回、両社は自動運転車向けのアプリケーション開発を効率化するリアルタイムデータベースを活用することで、アプリケーション実行タイミングとセンサ情報入力タイミングを記録して再現する技術を開発した。従来方式では記録時と再現時で最大数10ミリ秒のタイミング誤差が生じていたが、同技術により数10マイクロ秒にまで抑えられるという。

センサ情報の記録・再現方式の比較

具体的には、センサ情報をリアルタイムデータベース経由でアプリケーションに入力する自動運転ECUプラットフォームを活用し、アプリケーション実行タイミングを基準としたセンサ情報の入力タイミングをECU内部で統一的に計測し、外部入力することで、不具合発生時にアプリケーションに入力されたセンサ情報を外部記録装置に記録することができる。また、データ入力遅延を約10マイクロ秒に抑えたリアルタイムデータベースへのセンサ情報入力を制御することで、アプリケーションの挙動を再現する。外部記録装置から出力されるセンサ情報を、ECU内のバッファに一時格納し、周期実行されているアプリケーションの実行タイミングに合わせて、記録時と同じタイミングでリアルタイムデータベースに入力する。

両社は今後、シミュレーション技術を利用したテスト環境の構築など、自動運転用アプリケーションの開発過程における効率化技術の提供により、安全な自動運転社会の実現に貢献していくとしている。