2020年9月から厚生年金保険料が引き上がります。「コロナ禍で大変なのに、更に手取りが少なくなるの? 」と思われた方、慌てないでください。引き上がるのは高所得の一部の方です。そうすると逆に「自分には関係ね~や! 」と思われる方もいるかも知れません。でも、厚生年金保険料がどのように決まるのかは、知っておいて損はないと思います。今回、何が引き上がるのかを含めてご説明させていただきます。

  • 羨ましさ半分、妬み半分の独身貴族へのアドバイス……

まず、厚生年金保険料は給与と賞与をもとに計算されます。この給与とは、原則、4~6月の平均給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)をもとに計算した金額(標準報酬月額と言います)で、その年の9月から翌年8月まで使うことになります。また、賞与は実際の税引き前の賞与額から千円未満の端数を切り捨てた金額(標準賞与額と言います)です。それぞれの9.15%分を本人が負担し、勤め先も同額を負担します。

現状、給与がいくら多くても標準報酬月額は62万円が上限で、標準賞与額は支給1回あたり150万円が上限になります。つまり、給与が100万円でも200万円でも厚生年金保険料は同じ金額(本人負担分は56,730円=62万円×9.15%)になります。今回引き上がるのは、この標準報酬月額の上限。新たな上限は65万円に設定されるので、高所得者の厚生年金保険料が引き上がることになるのです。

ところで、年収が増えれば、厚生年金保険料が引き上がるだけでなく、将来受け取る年金も増えることになります。ざっくり言うと、老齢厚生年金は年収の0.55%分ずつ増えます。老齢基礎年金を80万円※1とし、40年間働いた場合の平均年収で年金見込額を試算してみました。

平均年収に対する年金見込額の割合は、高所得者(平均年収1,000万円)で3割(約300万円)、平均的な所得者(平均年収400万円)で4割程度(約168万円)となります。この年金見込額を少ないと感じるかどうかは人それぞれですが、年収というよりも、世帯構成によって異なるように思います。

というのも、子どもがいると教育費の他にも色々とお金がかかるので、親が自由に使えるお金が年収ほどには増えないからです。今、使えるお金が少ない分、年金生活に入ってもギャップは少ないと思うのです。ですので私は、羽振りの良い独身貴族に「今、自由に使えるお金が多いほど、老後は苦労するかも知れないよ」と羨ましさ半分、妬み半分でアドバイスしています(笑)

※1 ちなみに、令和2年度の老齢基礎年金満額は781,700円、※2 例えば、平均年収1000万円の場合の老齢厚生年金は、1000万円×0.55%×40年間=220万円と計算