非常にニッチな職業の「アイドルプロデューサー」。意外と、いろんな人たちが活動している。詳しい実態を詳しく知るために、現役で活躍しているアイドルプロデューサー2名の対談を行った。

今回は、この仕事のやりがいや大変さ、求められるスキルについて、前回に引き続き、名原広雄さんと田家大知さんに伺った。

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  • アイドルプロデューサーの田家大知さん(左)と名原広雄さん

リアルな反応がその場で返ってくることにやりがいを感じる

ーこの仕事のやりがいや、目標は何ですか?

名原さん 「『自己実現』ですね。モノづくりがそもそも好きで、当初はイベント情報サイト『舞台屋』を立ち上げて、都内でイベントを企画していました。それでどうせやるなら、コンテンツを持っていたほうがいいなと思い、仕事のつながりなどで、一番身近な存在だったアイドルを軸にしたら、MVやライブなどいろいろできると思い、アイドルをプロデュースする世界に入りました」。

名原さんによると、ライブ活動では、会場でリアルな反応がその場で返ってくるが、それは雑誌などを作っているときには感じられなかったそうで、その反応がやりがいになってると話す。また、将来的には、事務所をかまえて、アイドルなどのタレントの数を増やしていきたいと言う。では田家さんはどうなのだろうか。

田家さん 「社会のためになんとかしたい、そこからスタートし、アイドルグループを通じて『音楽にのせて、考え方の革命を起こしていきたい』と、僕は思っています。そして、歌詞をのせた曲を通じて、苦しんでいる若い人たちを救いたい。早く届けないと手遅れになってしまう。その一心ですね」。

目指すは、高田純次のような存在

ープロデュース活動で一番苦労している点は何ですか?

名原さん 「メンバーのモチベーションを保つためのマネジメントですね」。

田家さん 「それは、頭を使いますねえ。永遠のテーマだと思います」。

名原さん  「お恥ずかしながら、私の場合は毎年トライ&エラーでやっています。まずはやる気を引き出すために、目標を決める。例えば、MVを作ろうとか、次のライブで新曲を披露しようとか、常に新たな目標(ゴール)を掲げ続け、みんなでそれに向かって走り続けています。

でも、それをやっていると、やることが義務になるというか、当たり前になってくる。そうなると、私自身はやりたくてやっているのですが、メンバーが果たしてそうなのかが、疑問になることもあります。

メンバーのモチベーションの源泉は、『報酬』ではなく、ましてやメジャーアイドルになりたいという欲も少ない。その中で、常に新たな目標が必要になるのは、非常に大変で、苦労しているところです。その点、田家さんはいろいろ工夫されていますよね」。

田家さん 「実は、僕の場合はそんなに苦労と思っていないのが正直なところです。『ここにいることでワクワクが続く』と、メンバーに思ってもらえるように、あの手この手を使っています(笑)。その子のワクワクポイントを押さえて新たなことにチャレンジさせたり、1人で悩みを溜め込まないように、SOSが出ているときには、じっくり話を聞くようにしたりしていますね。

  • タイのワンマンライブ前のリハーサルの様子。メンバー同士で念入りに話し合い、立ち位置や流れなどを決めていく

特に僕が意識しているのは、『高田純次さんみたいになること』(笑)。どういうこと? と思いますよね。要は、女の子は意味不明な余白があるものって、面白がったり、楽しくなったりします。だから、ちょっと意味不明だけど面白い経験ができることを伝え、成功体験を受けさせるようにしているのです」。

  • 高田純次を意識していると言う田家さん

実際、これまでドラムのスティックも握ったことのなかったメンバーの一人が、田家さんの「できるよ! うまくなってる!」という言葉で、楽しくなり、いつの間にか自主練をするほど、ドラム演奏に目覚めたという経験もあるようだ。

一方、プロデュース業で先輩となる田家さんに比べると、試行錯誤している名原さんも、新たな経験を積ませて、隠れた才能ややる気を引き出すなど、目指しているゴールは同じのようだ。

副業でも、専業でもできるのがアイドルプロデューサー

ー本業とのバランスは、どのようにとっていますか?

名原さん 「平日働いて、休みの土日にイベントやライブ、ダンスレッスンに立ち会っているので、両立はできています。ただ、平日も楽曲や振り付け、衣装、MVなどの打ち合わせをしたり、今後のスケジュール調整をメンバー一人ひとりと行っているので、本業以外はプロデュース業にほとんど時間を費やしています。たぶん、これは一人ですべての業務をやっている影響も大きいと思います」。

  • 「柏の葉キャンパスマラソンフェスタ 2016春」にゲストアイドルとして出演した際のオフショット

田家さん 「プロデュースを始めた当初は、ライターもやっていましたが、書籍を出したり、『ゆるめるモ!』で実績を出したことで、今は音楽プロデューサーを主にやらせていただいています。

『うちのグループも見てください』という依頼が増え、他のグループや曲単位でプロデュースしたり、アドバイザー的なことをしたり、10月からは、『ゼロからでも始められるアイドルプロデュース』というオンラインサロンをスタートしました」。

オンラインサロンを立ち上げたきっかけは、田家さんの培ったノウハウを発信することで、アイドル業界の悪しき慣習などを無くして、少しでも業界が良くなっていければと思ったからだそうだ。

やる気があればなんでもできる

ープロデューサーに必要なスキルというのはありますか?

田家さん 「これというのは無いと思っています。強いてあげるなら『やる気』ですかね。資金集めの得意な人、クリエイティブな得意な人、いろんなタイプの人がいます。僕みたいにクリエイティブなことに強みを見出だせる人は、苦手な部分をカバーしてくれるパートナーを見つければいいと思います。

例えば、友人にそういうことをやってもらうとかでもいいですし、そういうことが得意な人をネットや知人の紹介などで探してみるのもいいと思います。できないことがあるから諦めるのではなく、それを補える人を探し、取り組むことが大切です」。

名原さん 「前回のインタビューでも伝えましたが、音楽ができなくても、プロデューサーは務まります。私たち2人は音楽が好きなので、音楽でこんな世界観を創りたいというビジョンがありますが、それ以外にも、『アイドルの衣装』、『ミュージックビデオ』など、自分が得意な領域からスタートして、その後は自分が苦手な部分を得意とする人にサポートしてもらうのが一番です」。

ー最後にメッセージをいただけますか?

田家さん 「『ゆるめるモ!』のグループは、複数名で運営しています。私が周りを巻き込んで、それぞれに役割を振ったりしていくと、次第に自分で取り組めることを考えてくれて、サポートしていくことが、モチベーションになっていきました。

『これどうかな?』ということを、どんどん相談し、共犯者にしていく感じです。そうすることで、自分が得意なことに集中でき、そして時間的な制約も大幅に軽減できます。本当に、その人にしかできないことがたくさんあります。自分を信じて、一歩踏み出すこと。やりはじめたら、思わぬ形で協力者がでてきたり、思わぬ形で世間からの反応があるものです」。

名原さん 「これまで経験してきたことが、必ず生かせます。あとは労力を惜しまず、プライベートな時間をプロデュース業に投資できる覚悟があるか。それが大事。それさえあれば、絶対できる仕事です」。


全部で4回にわたる「アイドルプロデュース」に関する特集。ニッチで、特殊な業界だと最初思っていたが、実は異業種参入や、未経験者でもチャレンジできるなど、考え方によっては広く門戸が開放された世界のようだ。

副業でもいいので、サポートメンバーの一人として運営にジョインするのも、最初のスタートとしては面白いのではないだろうか。

取材協力:田家大知(たけ・たいち)

ゆるめるモ! プロデューサー。著書に『ゼロからでも始められるアイドル運営』『10年続くアイドル運営術~ゼロから始めた“ゆるめるモ!”の2507日~』。DMMオンラインサロンにて、アイドルプロデュースのノウハウを教えるオンライン講座「ゼロからでも始められるアイドルプロデュース」開催中。ゆるめるモ! は来年2月より東名阪ツアー「サプライザーツアー」が開始。現在オフィシャル先行受付中。