高血圧症は、脳卒中や心疾患を引き起こす危険因子であるにも関わらず自覚症状がほとんどないため、健康診断で医師から指摘を受けてもどこか他人事のようにとらえてしまう人もいる。

医療系スタートアップ「CureApp」は5月15日、福岡大学医学部衛生・公衆衛生学 主任教授の有馬久富先生に聞いた「高血圧に関する疑問」を発表。ここでは、高血圧対策のデジタル機器事情にも触れている。

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高血圧の状態とは? どんな病気なの?

血圧とは心臓から血液が全身に送り出される際に血管にかかる圧力のことで、心臓からポンプのように押し出される血液量と、血管のしなやかさ(収縮の程度)によって決まるそう。

数値の高い上の血圧は心臓が収縮している時、数値が低い下の血圧は心臓が拡張している時にそれぞれ血管にかかる圧力の値のこと。診察室での上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上の場合、またはこれら両方を満たす場合、高血圧と診断されるという。

高血圧は命に関わる病気なのか

高血圧は、日本人の三大死因に含まれる心疾患および、脳血管疾患を引き起こす最大の危険因子といわれている。高血圧を完全に予防することで、年間10万人以上の人が死亡せずにすむと推計されているという。

高血圧を患っている人はどのくらい?

潜在患者も含めると現在、日本に約4,300万人いると推定されている。また、高血圧患者のうち、実際に治療を受けて血圧をしっかりコントロールできている人は、わずか30%未満の1200万人。自覚症状がないため、健康診断などで指摘されても放置されてしまうことが多いのも現状だという。

過去数十年で大きく減少したとはいえ、現在でも国民全体の約3人に1人、20歳以上ではおおよそ2人に1人は高血圧といわれている。

自覚症状はある?

サイレントキラー(静かなる殺人者)といわれるように、ほとんどの人に自覚症状がない。それにもかかわらず、脳や心臓の血管が動脈硬化を起こし、腎臓のはたらきが悪くなることもある"あなどれない病気"なのだそう。

もし、早朝の頭痛/夜の頻尿や呼吸困難/めまい・ふらつき/下肢冷感(足の冷えを感じる)などのような症状があれば、高血圧によって何らかの合併症を引き起こしていることが疑われるという。もしも気になる症状などがあれば早めに「かかりつけ医」に相談しよう。

放置するとどうなるの?

高血圧を指摘されたにも関わらず症状がないからと放置すると、突然、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気になることがあるそう。さらに、徐々に腎機能が低下して透析になってしまうこともある恐ろしい疾患。

一度高血圧を指摘されたのであれば、家庭内で定期的に血圧測定を行い日々の血圧の値を確認することが大切だという。その上で医療機関で相談をし、必要であれば症状のないうちから血圧の治療を始めよう。

薬はずっと飲み続けるの?

実際に、降圧薬には薬を飲んでいる間、高い状態の血圧を下げる作用があるので、服用を止めれば血圧は元に戻ってしまう可能性は高いという。

一方で、高血圧は生活習慣を改善して、血圧を正常に維持できるようになれば薬の量を減らしたり、薬をやめたりすることも可能。高血圧は適切な対応で治すことが可能な疾患だとしている。

血圧を下げる方法は?

高血圧の予防、改善には、食事や運動、し好品の見直しなどの生活習慣の改善が有効。例えば、減塩や塩分を排出する排塩(はいえん)を意識したり、肥満予防のために暴飲暴食を控えて運動を取り入れたり、飲酒をする人は減酒に努めるなどがよいとしている。

生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合には服薬を始めることや、合併症などによって直ちに服薬が必要な場合もあるという。

生活習慣の改善に役立つヘルスケアツール最新事情

高血圧は恐ろしい病気である一方、生活習慣が血圧の安定や改善に大きな効果をもたらすとしている。

生活習慣の改善のために流通しているさまざまなヘルスケア機器には、食品や調味料などの塩分濃度を測る「塩分測定器」や、血圧測定が可能な「スマートウォッチ」、患者の生活習慣の改善をサポートするプログラムが組まれた「高血圧治療補助アプリ」などがある。

  • 高血圧治療補助アプリ

そのほか、大手飲料メーカーのキリンホールディングスからは、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形「塩味を増強させる減塩食器」なども登場。この技術を搭載したスプーン型、およびおわん型の「エレキソルト」デバイスを開発したことが発表された。

有馬先生は、「自身の生活に取り入れやすいツールを見つけ、生活習慣の改善に取り組んでみてください」と話す。

  • 【監修医師】有馬久富先生

有馬久富先生は、福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 主任教授。2014年より2年間、滋賀医科大学アジア疫学研究センターで特任教授として疫学研究に従事後、2016年4月より現職。専門分野は、高血圧・脳卒中の疫学および臨床研究。