女優の河合優実が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に初挑戦した。担当したのは、12日・19日の2週にわたって放送される『芸に命をかけた人 ~南部虎弾と妻の約束~』。過激な芸を売りにするパフォーマンス集団・電撃ネットワークのリーダーで、今年1月に亡くなった南部虎弾さんと彼を支え続けた妻を追った作品だ。

電撃ネットワークの映像を今回初めて見たという河合。そこには共感を覚える部分もあったそうで、「残ったメンバーの皆さんでどうにか続けてほしい」と願う――。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した河合優実

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した河合優実

妻からの腎移植で舞台復帰から5年

1990年に南部さんが結成した電撃ネットワークは、体を張った芸でブレイクするものの、危険を顧みないパフォーマンスは「不適切すぎる」と見なされ、次第にテレビに出られなくなった。さらに不摂生がたたり、南部さんは60歳で糖尿病を発症、病状は悪化の一途をたどった。

人工透析に踏み切れば、もう舞台に上がることは難しい。そんな南部さんに「夫婦間腎移植」を提案したのは、妻の由紀さん(53)。移植は成功、妻の献身的な支えや健康管理があり、南部さんは再び、舞台に上がることができた。そして腎移植から5年、地方公演に行く前夜に南部さんは脳卒中で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。

35年にわたり、ハチャメチャな夫に連れ添った妻の由紀さんは、南部さんをみんなで明るく送り出したいと、ド派手な衣装を身にまとい、葬儀の喪主をすることに。『ザ・ノンフィクション』だけが撮影を許された前代未聞の「お葬式」で、カメラは妻の深い悲しみを目撃することになる…。

  • 南部虎弾さんの葬儀で喪主を務めた妻・由紀さん (C)フジテレビ

アングラ芸術とお笑いの融合

河合にとって、「電撃ネットワーク」はグループ名を知るだけの存在だったが、今年1月にエスパー伊東さんが亡くなった際に南部さんが追悼コメントを出したのをきっかけに、調べてみたのだそう。ただ、「過激だとか、海外で評価されているとか、文章で読んだだけだったので、初めて映像で見て“こういう人たちなんだ!”と知りました」と衝撃を受けた。

その過激な芸を、大学時代に演劇学科で学んだという河合は、独自の表現で分析。

「“パフォーマンスアート”についての授業を思い出しました。有名なものだと、アーティスト自身が前に立って、バラの花やハサミ、そして銃まで、あらゆる道具を用意された観客が自分に対してどう接触するかという実験のような作品があります。最初は花をプレゼントしたりハグをしていた人々が、だんだん服を切り刻んだりナイフを向けたりし始める。人間が善悪の限度を超えて過激になっていく様をアートとするのですが、電撃のショーは、そういう実験的でアングラな芸術と、日本独自のお笑いのノリが組み合わさっているように感じ、とても面白く見ました」