国内の大手ホビーメーカーがツインメッセ静岡に集った「第62回 静岡ホビーショー」。鉄道模型の大手メーカーも出展し、各社の新製品や試作品を多数展示した。今回は「TOMIX」「ジオコレ」のブランドを展開するトミーテックと、「プラレール リアルクラス」を展開しているタカラトミーの各製品を見ていく。

  • 「静岡ホビーショー」に出展したトミーテックとタカラトミーの展示を見ていく

TOMIXから「スペーシアX」発売、HC85系や急行「東海」なども

まずは、トミーテックの「TOMIX」製品からチェック。発売予定の「TOMIX」製品の中でも、多くの注目を集めたのは、実車も人気の「東武N100系スペーシアXセット」ではないだろうか。品番「98824」で価格3万6,960円、7月発売予定となっている。特徴的な車体や、各車両の内装を新規に製作。外観は、若干青みがかった「胡粉」の白色も実車同様に再現する。パンタグラフのある中間車両に関して、一部の屋根上配管が別パーツになる

会場では、先頭車両のヘッドライト(前照灯)のハイビーム・ロービームおよびテールライト(後部灯)を点灯させた状態の展示も行っていた。細かい粒状に点灯するところも実車さながら。6両編成にしては価格が高いものの、専用の室内灯が取付け済みで、先頭車両車内に設置されているシェードランプも点灯する。そのため、車両購入後に室内灯を別途購入する必要はない。

  • TOMIXから、東武鉄道「スペーシアX」が7月発売。ヘッドライトの点灯パターンを切り替え可能で、外観・内装ともに新規製作

2年前に試験走行車が製品化されたHC85系ハイブリッド車の量産車仕様が、「ひだ」「南紀」ともに8月発売予定。基本セットは、特急「ひだ」用のグリーン車「クモロ85」が組み込まれた4両セット(品番「98555」、価格1万7,930円)と、「南紀」用の2両セット(品番「98556」、価格1万2,870円)の2種類。4両編成の増結セットA(品番「98557」、価格1万6,280円)と2両編成の増結セットB(品番「98558」、価格1万670円)も同時発売する。

HC85系ラインナップのうち、特急「ひだ」の基本セット以外には、前面貫通扉が開いている状態を再現するパーツも付属する。これらを組み合わせれば、最短2両から最長10両まで自由に編成を組むことができる。短編成の特急列車が欲しい場合や、非電化区間の長編成をNゲージで楽しみたい場合など、さまざまなユーザーにマッチする。その上で、KATOから発売中のキハ85系(先代「ひだ」「南紀」)、普通列車のキハ25形を持っていれば、さらに楽しみが増すだろう。

電車・気動車特急列車の併結を再現する「JR485系・キハ65形(北近畿・エーデル丹後)セット」(品番「98778」、価格3万7,400円)も8月発売予定。「エーデル丹後」が運行していた1988~1996年の間に見られた、485系「北近畿」とキハ65形「エーデル丹後」の併結編成を再現した。「エーデル丹後」は新規で製作され、「北近畿」はヘッドマークが小型で非貫通型のクロハ481形214号と、貫通型のクハ481形802号が先頭車両に設定される。なお、このセットで動力が付くのは485系で、キハ65形はトレーラー車となる。

  • 特急形ハイブリッド車として活躍中のHC85系が、「ひだ」「南紀」それぞれの量産車仕様で発売

  • 併結運転を行っていた485系「北近畿」とキハ65形「エーデル丹後」のセット。動力は485系に付く

  • 天浜線を走る「音街ウナ」ラッピング列車「うなぴっぴごー!」(C)MTK/INTERNET Co., Ltd.(天竜浜名湖鉄道商品化許諾済)

天竜浜名湖鉄道で2022年9月から運行しているラッピング列車を模型化した「天竜浜名湖鉄道TH2100形(TH2114号車・うなぴっぴごー!)」(品番「8617」、価格1万230円)は6月発売予定。浜松市出身のVOCALOID・バーチャルアイドル「音街ウナ」の2代目フルラッピング列車で、発売済みの天浜線車両と並べて楽しめる。ミニカーブレールも走行可能。実車の時代は違うが、「鉄道コレクション」第15弾に収録されたTH1型を並べるのも鉄道模型ならでは。

筆者が取材を行った当日、11月発売予定の新製品も発表された。そのひとつ「JR165系急行電車(東海)」は、台車・床下機器がグレーでJR東海所属車を再現。8両のK1編成を基本セット(品番「98853」、価格3万9,270円)、3両のK1-1編成を増結セット(品番「98854」、価格1万9,360円)としている。基本セットのみでも急行「東海」は再現できるが、増結編成もそろえると、東京~大垣間の夜行普通列車「大垣夜行」も再現でき、夢が膨らむ。その場合、さらにコストがかさむが、室内灯を組み込むと一層雰囲気が良くなるだろう。

1960年に常磐線向けに開発された「国鉄401系近郊電車(高運転台・新塗装)」も模型化。新規で床下機器等を製作し、113系と似て非なる外観を再現。交直流電車特有のパンタグラフ周辺機器類も的確に再現する。検電アンテナ台座は、デフォルトでは円錐型が取付済みだが、角形台座に交換も可能。前面貫通扉の渡り板も別パーツ化し、交換可能にしている。基本セット(品番「98582」、価格2万3,100円)と増結セット(品番「98583」、価格1万7,490円)の両方とも4両編成で11月発売予定となっている。

  • JR東海仕様の165系による急行「東海」および「大垣夜行」

  • 国鉄時代の常磐線・水戸線で活躍した401系も

  • 初代『電車でGO!』に登場した4車両が「FIRST CAR MUSEUM」のセットに

Nゲージの先頭車両のみをディスプレイ向けに展開している「FIRST CAR MUSEUM」シリーズと、初代『電車でGO!』(タイトー)とのコラボレーションも会場で発表された。1996年にアーケード版、翌年にプレイステーション版で世に出た『電車でGO!』では、山陰本線キハ58系、山手線205系、京浜東北線209系、東海道本線221系の4種類の列車を運転できた。この4車種の先頭車両をひとつのパッケージとし、発売する。

担当者いわく、当時、100円を握ってゲームセンターに赴き、『電車でGO!』を遊んでいた10~20代くらいの若者は、いまは40~50代になっているのではないかという。ゲームで遊んでいた世代に、鉄道模型に親しみを持ってもらうきっかけとして、ゲームに登場した車両を「FIRST CAR MUSEUM」として企画するに至ったとのこと。現時点では詳細未定となっており、今後、正式に情報が発表されると思われる。

HOゲージからは、寝台特急「トワイライトエクスプレス」が7月発売。黄色帯の上下に銀帯が追加された仕様となる。牽引機のEF81形は、連結器緩衝装置や運転台側面の点検口が付いた姿、24系25形客車の「スロネフ25」には、展望室窓に雨樋が取付けられた姿を再現。いずれも一部表記・ロゴは印刷済みで、車番はナンバープレート(機関車)および転写シート(客車)による選択式となる。

EF81形は品番「HO-2028」で価格3万9,380円。24系25形客車の基本セットは、品番「HO-9109」で価格5万5,220円。フル編成にすると総額10万円を超えるが、Nゲージより大きい分、手に入れた場合の感動も大きなものになるかもしれない。

「国鉄381系特急電車(クハ381-0)」は5月中の発売予定とされ、発売時期が近づいている。1973年の登場当初から貫通型先頭車両だった「クハ381-0」を車体・屋根ともに新規製作で再現。トレインマークは文字・イラスト両方の「しなの」が付属している。6両編成の基本セット(品番「HO-9083」、価格9万9,000円)と3両の増結セット(品番「HO-9085」、価格4万9,280円)に分けられ、どちらも一部表記が印刷済み。JRマーク・車番・所属などは選択式となる。

  • 80分の1スケールで「トワイライトエクスプレス」や381系「しなの」が発売。貨車型のクリーニングカーも

最後に、HOスケールの線路に対応した貨車型のクリーニングカーの発売も発表された。単3乾電池2本で駆動し、吸引・乾式やすり・乾式布の3モードで動作する。吸引モード時にゴミをためるダストボックスも貨車内に備わっている。乾式布モード時にクリーニング液を塗布するための、専用ブロックも付属。ただし、これを牽引する動力車は別途必要になり、詳細は決定し次第、発表される。HOスケールは、場合によってはNゲージ以上に清掃の手が行き渡りにくい可能性があるが、レールクリーニングカーを活用できれば、その問題が解決するかもしれない。

「鉄道コレクション」に予想外の鉄道が参入!?

次に、「ジオコレ」ブランドの中から「鉄道コレクション」を見ていく。発表済みの発売予定新製品が多数展示され、5月中に「長野電鉄3000系3両セットA」(価格7,700円)、「名古屋鉄道6000系(復刻塗装・6010編成)2両セット」(価格5,060円)、「阿佐海岸鉄道DMV-932(すだちの風)モードインターチェンジ付」(価格5,500円)など発売予定となっている。

過去にブラインドパッケージで収録されたことのあるキハ126形の1次車(価格5,060円)と、同車の両運転台版にして「鉄道コレクション」では初製品化となるキハ121形(価格5,500円)も5月に発売予定。今月発売品によって、長野電鉄、名鉄、DMV、山陰本線のバリエーションがさらに拡大する。

  • 「鉄道コレクション」の発売予定製品が勢ぞろい

  • 叡山電車700系のリニューアル車両や、ナローゲージの「猫屋線」シリーズも今後発売予定

  • 静岡鉄道A3000形「ヒロアカ」ラッピング列車も発売 (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア政策委員会(静岡鉄道商品化許諾済)

業者招待日の当日に発表された新情報として、静岡鉄道で6月16日まで実施中の『僕のヒーローアカデミア』主要キャラクターのラッピング列車が、7人分すべて発売される。第1弾となる「緑谷出久」バージョンの2両セットは4月に発売され、残る6種類は10月発売予定。ディスプレイ向けに、基本的に1両のみ(価格3,300円)で発売するが、一部は2両セット(価格6,160円)も発売する。

その他のオープンパッケージとしては、京都市営地下鉄烏丸線で2022年3月に運行開始した「京都市交通局20系 6両セット」(価格1万9,800円)、今年3月20日のラストランで引退した「Osaka Metro中央線 ありがとう20系6両セット」(価格1万5,180円)、JR身延線用にクモヤ154形601・602号車を改造した「JR123系600番代 2両セット」(価格5,500円)となっている。いずれも10月発売予定。

会場での新発表として、「鉄道コレクション第33弾」の発売が決定した。昭和から平成にかけての私鉄車両をテーマに、東武鉄道8500型、伊豆急行1000系、名鉄瀬戸線6750系1次車、近鉄8000系初期車、西鉄600形の各2両をラインナップ。11月発売予定で価格は2,530円。ついに瀬戸線の吊掛け車両や西鉄600形が「鉄道コレクション」で模型化されることになった。

  • 京都市営地下鉄烏丸線の20系が「鉄コレ」に(会場ではアクリルスタンドの出展)

  • 「鉄道コレクション第33弾」の伊豆急行1000系と近鉄8000系の未塗装サンプル

  • 新交通システムのゆりかもめが「鉄道コレクション」の仲間入り

おそらく今回、最も意外だったであろう新発表として、ゆりかもめが「鉄道コレクション」で製品化されることとなった。「ノスタルジック鉄道コレクション」で使用する動力「TM-TR07」で動力化ができるという。参考出展としてブースに展示され、予価・発売予定も後日発表となる。正直なところ、これには筆者も驚いた。

よりリアルな「プラレール リアルクラス」通勤型車両も登場、そして今後は

最後に、「プラレール」でおなじみタカラトミーから、リアルな表現を加えたシリーズ「プラレール リアルクラス」を紹介。現時点で発売済みの製品が会場に展示された。

細部までこだわった造形・塗装に加え、屋根やパンタグラフを立体的に表現し、車内に座席パーツも取り入れている「プラレール リアルクラス」。その上で、窓やライトレンズにクリアパーツを使用し、いままで以上にリアルな「プラレール」に仕上げたシリーズとなっている。しかし、そのままでは高さに制限のかかる構造物を通過できなくなるため、従来の「プラレール」と同様のロータイプの部品に交換もできる。

昨年6月に「185系特急電車(踊り子・緑ストライプ)」「小田急ロマンスカー3100形NSE」を発売して以降、少しずつラインナップが拡大しており、「485系特急電車(雷鳥)」「185系特急電車(踊り子・湘南ブロック色)」「485系特急電車(北越・上沼垂色)」の順に発売してきた。

  • 185系(緑ストライプ)と小田急ロマンスカー・NSE(3100形)に始まり、485系も発売している

直近の製品は、4月25日に発売した「プラレール リアルクラス」初の通勤型車両「201系通勤電車(JR西日本・オレンジ)」。大阪環状線で活躍していた形態となっており、戸袋窓が埋められ、屋根上ベンチレーターが撤去され、すっきりした外観を再現。客室窓の外周に銀色の色差しも入っている。車内は青色の部品でロングシートを再現した上に、先頭車両に運転台も。この201系は、屋根上の冷房をハイタイプ・ロータイプで交換可能。会場では、都市部のジオラマで201系の展示走行も行っていた。

  • 「プラレール リアルクラス」初の通勤型として201系が登場。車内表現にもこだわりが見られる

現時点で発売中の「プラレール リアルクラス」は、いずれも価格7,700円。ハイタイプ・ロータイプの部品と、「リアル直線レール」が付属する。このレールは従来の青いレールとつなげることができるので、ディスプレイだけでなく、走らせて遊ぶ際にも活用できる。自走させる場合は単3乾電池1本が別途必要となる。

ちなみに、取材時点で「プラレール リアルクラス」公式サイトにてティザーPVが公開されており、次回登場予定の車両のシルエットが映されていた。ナレーションでも、「ついに、あの車両が…」と語られており、正式発表時には大きな話題になることが予想される。とはいえ、断片的に車両は映っているので、気づく人はこの段階で気づくだろう。詳細の発表を待ちたい。

掲載の都合上、「TOMIX」「ジオコレ」において、当記事で紹介しきれなかった製品も多数存在する。それらに関しては、各公式サイトも併せて参照してほしい。