映像化にあたって、設定を変えることや、ドラマオリジナルの登場人物・ストーリーを作ることもある。『きらきらひかる』(98年、フジテレビ)は、1人のスーパーウーマン的存在の女性監察医が主人公の漫画原作から、新人監察医(深津絵里)を中心に個性的でプロフェッショナルな女性たち(松雪泰子、小林聡美、鈴木京香)4人が活躍する物語に仕立て、『おいハンサム!!』に至っては、複数の原作を融合してタイトルも新たに命名した。

「『きらきらひかる』の原作が伝えたいのは、一言で言うと“生きていることは、それだけで素晴らしい”というものだし、『ナニワ金融道』は“ここにある1万円がどのように得たカネであれカネはカネだ。それがカネの本質だ”ということ。『おいハンサム!!』の伊藤理佐さんの原作は、“幸せとは何か”そして “幸せはどこにあるか”なんですよね、たぶん。原作を映像化するにはそこを守りつつ、プロデューサーや脚本家や監督である僕が、なりふり構わず“答え”を出そうと“もがく”ことが大事だし、それしか方法はないと思っています」

これまで手がけてきた原作の原作者には全員、直接会って話し合い、仕事をしてきたという山口氏。原作ファンという存在もある中で、「必ず批判もされますが、とにかく自分たちはこういう思いでこの“答え”を出したんだと言えることができれば、いいのではないかと思います」と考える。

  • 『おいハンサム!!2』4月27日放送の第4話より (C)東海テレビ/日本映画放送

松本清張が「原作を超えた」映画『砂の器』

自身の手がけた作品以外で、山口氏自身が“驚き”を感じた映像化作品がないかを聞いてみると、松本清張原作の『砂の器』を挙げてくれた。

「最初の映画(74年)は、原作と比べると“驚き”しかありませんでした。そもそもは音楽による殺人を描いた長編推理小説なんですが、映画の脚本は、原作のエピソードを大胆に取捨選択し、主に2つの要素を大きい柱として抜き出した。冒頭の、蒲田駅構内で死体が発見され、その前夜に被害者と犯人と思われる二人がバーで“カメダ”について話し込んでいたという導入と、終盤の、故郷を捨てたハンセン病を患った父親とその息子が巡礼のため流浪する、という原作では数行しか触れられていないエピソード。あとは、橋本忍さんと山田洋次さんの脚本と野村芳太郎監督の演出で映像的に大きく膨らませて、映画を観た松本清張さんが“原作を超えた”とおっしゃったそうです。原作小説はもちろん、映画もまた、まさしく『砂の器』。“砂の器”という言葉が象徴する、積み上げてきた人生の脆(もろ)さをまぎれもなく描いたのです」