いよいよ17日に最終回を迎える大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)。脚本を手掛けた古沢良太氏にインタビューし、想像を超える境地にたどり着いたという本作の家康像について話を聞いた。

  • 徳川家康役の松本潤

『リーガル・ハイ』『コンフィデンスマンJP』シリーズなどで知られる古沢氏。本作では、江戸幕府を開いた徳川家康の生涯を新たな視点で描き、その新しい家康像を松本潤が演じてきた。

「歴史上の重要な人物としての家康は今までに描き尽くされているので、歴史の年表でもなく偉人伝でもなく、1人の普通の子がどうやって乱世を生き抜いていったのかという物語にしたかった」との思いで、新しい家康像に挑んだ古沢氏。

そして、織田信長(岡田准一)、豊臣秀吉(ムロツヨシ)、武田信玄(阿部寛)、今川義元(野村萬斎)らが一代で隆盛を築くも、跡継ぎへの継承で失敗して滅んだり力を失ったりする中、なぜ家康(松本)は後継者へしっかりとバトンをつなぎ、約260年間も続いた江戸幕府の礎を築くことができたのかというと、「家康は天才ではなかった」という結論にたどり着いたという。

「天才は天才にしか運営できない仕組みを作ってしまうからそれは継承できない。家康は普通の人だったから、普通の人が運営できる体制を作り、それが続いていったのではないかなと僕なりに解釈しました。か弱い凡人として描くのが新しいと思うし、このドラマのテーマになると思ったのでそういうところからスタートし、彼の人生は本当に艱難辛苦の連続なので、それを経る過程で変貌していくというのがやりたいなと思いました」

家康の最終地点は「想像してなかったところにたどり着いた」

本作では、個性際立つさまざまなキャラクターが次々と登場。古沢氏はどのキャラクターも、最終的に当初想像していたイメージを超えていったと語る。

「すべてのキャラクターを計算ずくで書いていたわけではなく、書きながらこの場面だったらこの人はどうするか、どんなことを言うのか考えながらやっていて、どのキャラクターも自分が思っていたよりもちょっと違う、想像を超えるような働きをしていると思います」

その中でもやはり、家康が最も想像を超えた最終地点にたどり着いたという。

「どう変化していくのか最初に作り、基本的にはその通りですが、途中で何回か松本さんと話し合い、最後にたどり着く家康の境地は書きながら見つかったことなので、自分の中では想像してなかったところにたどり着いたなという感じはありました」

松本潤は「非常に真面目な方」 展開について話す機会も

松本とは3回くらい展開について話す機会があったという。

「非常に真面目な方で、家康が変化していくタイミングで確認したいということだったので、こういう風に変わると考えていますと。彼はそれを熱心に聞いて、僕も話しながらまとまっていく感じでした」

松本は10代の家康から演じ、“弱く頼りないプリンス”という本作の家康像を表現。老けメイクを施した晩年の演技を評価する声が多いが、古沢氏は序盤の演技をもっと評価してほしいと語る。

「後半の貫録のある家康になってからみんな褒めてくださっていると思いますが、僕からしたら前半のダメダメな家康をあそこまで振り切ってやることのほうが難しいことで、松本さんは頑張ってくれたと思うので、もっと前半を評価してくれと。前半の松本さんが素晴らしかったと思っています」