ESAは12月12日(米国時間)、ゲーム業界のトレードイベント「E3(Electronic Entertainment Expo)」の終了を正式に発表した。最盛期には70,000人前後の入場者を集め、夏にドイツのケルンで開催されるgamescom、秋に日本で行われる東京ゲームショウとともに、世界3大ゲームショーの1つに数えられていた。しかし、イベントの巨大化に伴い、イベント本来の目的を果たせない悪循環に陥り、さらに新型コロナ禍の影響を受けて、業界に対する影響力を回復できずにいた。公式サイトには、20年以上にわたるE3の歴史を築いてきたコミュニティに感謝の意を表し、最後にGGWP(good game well played)という味方を称える時によく使われるゲーム用語を記している。

1990年代の中盤まで、米国にはゲームに特化した大規模なトレードイベントが存在せず、その時点では家電トレードショーCESがその役割を果たしていたが、家電イベントでゲームは重視されず、改善の兆しもなかった。そこでゲーム専門のトレードショーを求める業界の声が高まり、E3が誕生。1995年の最初のイベントから約50,000人を動員する成功を収めた。

それから動員数を伸ばし続けたが、規模の拡大により出展料が上昇。また、ゲーム業界関係者以外も集まるお祭りイベントと化したことで、トレードショーとしての機能が希薄化し、それらを理由にいくつかの大手パブリッシャーが撤退を検討し始めた。

  • 最盛期のE3

    最盛期のE3、人で埋め尽くされた会場はエネルギーで満ち溢れていたが、巨大になりすぎて、トレードショーとして機能しなくなっていた

2006年にESAはイベントの方針を見直し、2007年には「E3 Media and Business Summit」として参加者を業界関係者とメディアに限定した。ところが、参加者が少ない小規模なイベントになったことでメディアの報道が激減し、注目度の低下でE3の参加を取りやめるパブリッシャーが続出。2009年にオープンなフォーマットに戻し、2017年には一般の有料参加を開始して、再び最盛期に近い入場者を集めた。

  • E3 Media and Business Summit時代のE3

    E3 Media and Business Summit時代の閑散としたE3

しかし、その後E3は衰退の一途を辿る。ソーシャルメディアやYouTube、Twitchなどの成長で、パブリッシャーがいつでもファンに直接ゲームをアピールできるようになり、E3のようなトレードショーで競合他社を相手に注目を集めようと奮闘する必要がなくなった。ソニー・インタラクティブエンタテインメント、Electronic Artsなど、E3のようなイベントの力を借りずに独自のマーケティングに注力する企業が増えた。また、かつてはホリデーシーズンに向けて、ゲームやゲーム機の棚スペースを確保するために小売業者と契約を結ぶ必要があり、そうした契約交渉の場にE3が利用されていたが、デジタル流通が主流になってそのニーズも減退した。

新型コロナの感染拡大によるイベント開催制限を受けて、2020年のE3は中止になった。ESAは対面イベントとバーチャルイベントを組み合わせた新形式のイベントを計画したが、2021年はオンライン開催のみに。2022年を完全にキャンセルし、2023年に、PAX、New York Comic Con、Star Wars Celebrationといったイベントを成功させているReedPopの運営支援を受けての開催を計画した。しかし、「持続的な関心の欠如」を理由に中止を決定。ReedPopも提携を解消し、E3の復活は難しいと見られていた。