「SUNTORY 将棋オールスター東西対抗戦2023」は予選が進行中。9月30日(土)には関西予選Bブロックが関西将棋会館で行われました。21名によるトーナメントを勝ち抜いたのは稲葉陽八段。斎藤慎太郎八段との決勝戦を102手で制し、12月に行われる東西対抗戦への進出を決めました。

決勝の舞台目指して

東西対抗の形で争われる本棋戦(準公式戦)はファン投票で選ばれた3名と予選を勝ち抜いた3名の計6名が1チームとなり、12月に行われる決勝戦で6対6の団体戦を行うもの。この時点で東軍は羽生善治九段、渡辺明九段、永瀬拓矢王座、青嶋未来六段、西軍は藤井聡太竜王・名人、豊島将之九段、菅井竜也八段、山崎隆之八段の登場が決まっています。

持ち時間なし、初手から30秒の秒読みという早指しで争われる予選は1日で4~5局を戦う長丁場。予選決勝の大一番で先手番を得た斎藤八段が角換わり桂跳ね速攻を採用したのは豊富な研究を生かして攻め切り勝ちを狙う実戦的な作戦選択に思われました。これを受けた後手の稲葉八段は変化球の受けで対応。前例の少ない力戦に持ち込みます。

終盤に事件発生

ともに自陣角を打ち合って局面は第二次駒組みへ。とはいえ囲い合いには進まず各所で歩がぶつかる腰掛け銀らしい攻め合いが幕を開けました。盤面全体を使った小競り合いののち斎藤八段は手にした銀を敵陣に打ち込んで飛車と金の割り打ちを実現。じわじわと駒得を拡大して後手の攻め急ぎを誘います。

形勢は駒得の斎藤八段が優勢ながら、秒読みの終盤戦で稲葉八段にもチャンスが到来します。先手が金を引いて竜に当てつつ自玉を固めた手に対し、ただちに銀を成り捨てたのが稲葉八段の瞬発力を示した好手。手順に竜取りを消しながら飛車の入手に成功したことで攻め合いの速度が入れ替わりました。

稲葉八段が勝ち上がり

逆転に成功した稲葉八段は冷静な寄せで勝勢を確立。最後は自玉の詰みを認めた斎藤八段が投了を告げて稲葉八段の3年連続での勝ち上がりが決まりました。局後のインタビューで予選全体を振り返った稲葉八段は「斎藤八段戦は序盤が苦しかった。最後は負けと思っていたので運がよかった」と語りました。

なお10月1日(日)に東京都千代田区の「プロント神田店」で行われた東京予選Bブロックでは野月浩貴八段が勝ち上がり、自身初となる東西対抗戦進出を決めています。

  • 昨年の東西対抗戦では増田康宏六段(当時)に屈した稲葉八段、今年はリベンジを誓う(写真は第80期順位戦B級1組のもの 提供:日本将棋連盟)

    昨年の東西対抗戦では増田康宏六段(当時)に屈した稲葉八段、今年はリベンジを誓う(写真は第80期順位戦B級1組のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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