6月初週に発表され、すぐに発売が始まった現行VAIO SX14。同社ノートPCとしては性能と機動性の両方に一切妥協せず開発された中心モデルとなっており、今年発売されたのは第13世代Intel Coreプロセッサの搭載でマイナーチェンジされています。後発モデルのソフトウェアで搭載された新機能も集約しており、現行VAIOノートPCシリーズとしては、いわば集大成のような仕様に仕上げられています。

今回試用機をお借りし、短期間ながら同製品を試すことができました。忙しい方向けにまとめておくと、仕様に大変化はなく堅実なプロダクトであるという印象。バッテリーの持続時間はかなり長く、それでいて性能と軽さも両立した製品になっています。

  • 「VAIO SX14」レビュー - このスタイルで手に入るのは今だけになるのかも

高級感が良い、アーバンブロンズを眺める

さっそく外観からチェックしていきましょう。今回お借りしたのは高級感漂う「アーバンブロンズ」。14型モデルはカラーバリエーションにファインブラック、ファインレッド(VAIOストア限定)、ブライトシルバー、ファインホワイト、アーバンブロンズを取り揃えており、ビジネス向けノートPCとしては幅広いラインナップから好みに応じて選択できるところがポイント。

筆者個人としてはこのアーバンブロンズがかなり気に入っており、過去のレビューを見返すと2022年発売のSX12でもアーバンブロンズを借りていたことに今更気づきました。

  • 内箱の様子

  • 白い布から取り出した本体。ディスプレイとキーボードの間にマイクロファイバークロスが挟まれています

  • お借りしたモデルはSIMカードの搭載もサポート。法人向けモデルではeSIMも使えるので、DSSSに対応しています

  • 開いたところ

  • 180度というか、ディスプレイはべったりと開ききります

初出時のニュース(関連記事)でも触れましたが、外装の仕様には特に変化がありません。熱処理等に余裕をもって開発された第12世代Core向けのプラットフォームを流用しており、ぱっと見では同じはずです。

  • キーボード全景。これじゃなきゃダメなVAIO党の方もいそう

  • 日本語配列ながら不自然なレイアウトは一切なし

  • Ctrlキーは左側、Fnキーは右側です

  • タッチパッドのレスポンスは良好。クリックボタンは独立しています

  • バックライトの様子。印字も光を透かしており、よく見えます

日本語配列キーボード搭載ノートPCとして最有力であるVAIOの威信は、最新モデルでも揺らぎません。無理やり感の一切ないレイアウトで、他メーカーのお手本となるべき素晴らしいキーボードです。打鍵感も上々で、今回のレビューはすべてこの製品で執筆。全くストレスなく仕上げることができました。

ただ、大幅なモデルチェンジが行われる(であろう)次期モデルを前に、筆者にとってはぜひ検討してほしい点がいくつかあります。ひとつがインタフェース部。

  • 本体右側面。USB Type-Cの給電兼用端子に加え、有線LAN端子やHDMI、Type-Aもすべて集約しています

  • 左側面。USB Type-Aヘッドホンマイクコンボ端子を備え、排気エリアが設けられています

右利きの筆者にとって、ノートPCの右側はぜひマウスを設置して使いたいところ。しかし現行VAIOではなぜか主要な端子が本体右側に搭載されており、ケーブルが邪魔になりがちです。つなぎっぱなしになりがちなHDMIケーブルや給電用のACケーブルをマウスの可動域から排除しにくく、デスクのスペースを活用しにくく感じます。次はぜひ左側に集約してほしいところ。

また、内部の温かい風が左側から吹き出す点もややモダンではないように思います。左側といえばインタフェースを集約するべき一等地なので、エアフローに用いるのはもったいないかも。せっかくVAIOといえばディスプレイを開くとせりあがるヒンジを採用しているので、素人考えですが、底面吸気・ヒンジ排気のほうが空間を有効活用できそうな気がします。

  • 底面は完全に閉じており、堅牢性には一役買っていそう

そして、ぜひ次期モデルでは縦に広いアスペクト比16:10のディスプレイを採用してほしいです。他社製品ではかなり主流になってきているので、VAIOでの採用を待っているユーザーもいるのでは。キーボードがせりあがるので下辺の野暮ったさはあまりありませんでしたが、VAIOが採用するならどんなスタイルになるか楽しみです。

ちなみに、製品発表時の質疑で開発者の方に今回16:10ディスプレイの採用を見送ったことについて聞いてみたところ、「今回は第13世代Coreプロセッサ搭載のマイナーチェンジだったため見送った。市場製品において16:10ディスプレイ採用例が増えていることは認識しており、検討中だ」と回答をいただくことができました。VAIO F16ではすでに搭載例もあるので、個人的にVAIO SX14での採用にもとても期待しています。

UコアではなくPコア搭載が嬉しい高性能。バッテリー持ちがすごい

最後に性能面も簡単にチェック。借りた個体はモバイル向け第13世代Intel Core i5-1340P(Pコア4個、Eコア8個で12コア16スレッド)を搭載しており、LPDDR4 16GBを組み合わせています。SSDはSamsung製で、インタフェースはPCIe 4.0 x4でした。

薄型軽量で機動力を身上としつつも、取りまわしやすいUコアではなくPコアを採用している点が性能面のポイント。ちなみにメモリはオンボード搭載しており、購入後の増設には対応しません。

  • 主な仕様

  • PCMarkの結果。5,000越えは相当すごい

  • Speedometer 2.1。300を大幅に超えており、あらゆる動作がさっくさくです

  • SSDも高速。普段使いで気になることはまずないです

PCMarkを活用して、バッテリーテストも行いました。輝度を40%くらいに下げたところ連続で12時間近く動作しており、持ち運んでの作業も快適に行えるはず。「ちょっと触っただけでバッテリーがすぐになくなっちゃう…」みたいなことにはなりません。

  • Battery

また、高負荷時のファン音は耳障りな高周波成分がよく抑制されていた点も好感触。ファンが全開になっても、キーンと甲高い音ではなくシューという音がするだけでした。電源設定によってはファンが全開になることもなく、外出時に動作音が気になることはないはずです。

次のモデルがどんな仕様になるか楽しみ

ここまでVAIO SX14の2023年モデルについて見てきた本記事。第13世代Coreプロセッサの搭載で性能強化を図っており、外装等の主要な仕様は前モデルを引き継いでいます。

個人的には思うところもいくつかある現行VAIOですが、もしかすると次期モデルでは大刷新が図られるかも。というのも、Intelが開発を進めているというモバイル向け第14世代Intel Coreプロセッサはこれまでと大きく仕様が異なるため。2世代ごとに大きく進化するVAIO製品とタイミングが重なることもあり、今の様子から少し変わることがあるかもしれません。

従前のスタイルで完熟したVAIOを1台確保しておきたいというコンサバティブな利用者にとっては、現行VAIO SX14こそ見知ったスタイルで手に入る最後のVAIOになる……かもしれません。

  • 親切な初期設定ユーティリティ。自動で開くので、買ったらすぐに設定しましょう