思春期を迎えようとする子どもたちに対し、自分らしさ、多様性、正しい体毛ケアなどをテーマとした画期的な授業が行われた。講師は、サッコ先生こと産婦人科医の高橋幸子先生。活気と愛にあふれた授業の様子を紹介したい。

MY FIRST SHAVE(マイ・ファースト・シェーブ)とは

小中学生を対象に行われた興味深いアンケート結果がある。体毛をケアしたいと考える男女は65%に及ぶが、「正しい体毛ケアの方法を知らない」「わからない」と回答した児童・生徒は75%を占めたという。

こうした状況を背景に、思春期を迎えようとする子どもたちに対して、体の変化や成長、さらに正しい体毛ケアの方法や体毛のあり方を考える特別授業が行われた。確かに、先生や親、保護者相手だと気恥ずかしくてなかなか話しづらいので、貴重な機会である。

主催したのは女性用ウェットシェービング市場トップシェアのシック・ジャパン。同社は体毛に関する多様な価値観に寄り添い、固定概念にとらわれない多様な表現を目指している。2022年4月9日(シックの日)に表明した「ムダ毛という表現やめます宣言」も印象的だった。考えてみれば、人の体に生える毛がムダかどうかは本人が決めることだ。

1限目の授業「自分らしさ 命について 体と心の成長」

会場は都内のとある小学校の体育館、同校の小学4年生が集まった。講師を務めるのは、サッコ先生こと高橋幸子先生。全国の小・中・高等学校で、年間120回以上も性教育に関する講演を行っている産婦人科医だ。

何かと深刻になりがちで、照れくさい話題なのに、サッコ先生はあっけらかんと明るい。体と心とは、自分らしさとは、と子どもたちに問いながら、ともに考えて進んでいく。

「私たちはどう生まれてきた?」

サッコ先生の提案で、自ら1分間の脈拍を測ることになった。結果、60~80回という回答が多かったが、お母さんのお腹にいる赤ちゃんは脈拍120回ほどだという。お母さんも大変だが、赤ちゃんも一生懸命生きようとしている、と考えさせられる体験だ。

続いて出産のメカニズムを説明するサッコ先生。先生の問いかけにも恥ずかしがらずに答えようとする子どもたちにも感心する。ここで語られたのが、口・胸・性器・お尻といった「プライベートゾーン」の大切さと「プライベートゾーンを自分で守ること」の重要性について。

その後、自分の出産を撮った動画を公開。サッコ先生が出産時の痛みを「鼻からメロンが出るよう」と例えると、男子も女子もビックリ仰天。しかし、「あなたたちの時代には無痛分娩が広まっていると思う」と期待を述べた。

続いては、生徒たちに事前に行ったアンケート結果から体と心の成長について考える内容へ。

「思春期って?」

和やかな質疑応答の後、サッコ先生から興味深い話があった。「思春期」を英語で「puberty(ピューバティ)」といい、これは「毛が生えるころ」という意味があるのだとか。思春期には第二次性徴が起こり、生殖能力を持つ体に変化し、悩み多い時期でもある。

サッコ先生からのメッセージは、「自分は自身の体の王様である」「自分のことは自分で決めていい」ということ。つらいときには「周りの信頼できる人に頼ろう」という言葉も温かい。

2限目の授業「毛について考える」

休憩をはさんで授業は続き、YES・NOクイズが始まった。テーマは体毛について。

「人間の先祖は全身毛でおおわれていた?」(YES)
「手の平や足の裏にも体毛がある?」(NO)
「まつ毛やまゆ毛に役割はない?」(NO)

など、体毛の種類、生えるサイクル、男女の違いなどについて、ユーモアを交えつつ学んだ。

「思春期の男女が体毛についてどう思っているか?」についてのアンケート(※)結果をみんなで見ながら、授業は終盤へと向かう。

アンケートでは次のようなことがわかった。「自身の体の毛が気になるか?」という問いに女子の76.8%、男子の45.5%が気になると回答し、女子の方が気になっていることが分かる。

「体の毛を剃ったことがあるか?」という問いには女子の77.8%、男子の44.0%があると回答。「毛のことを話すのは恥ずかしい?」という問いで、42.7%の男女が恥ずかしいと感じていることが判明。また、毛が気になる体の部分として、足や腕など、人目に付く部分の毛が気になる傾向が見られた。体の毛が生えていることが気になるのは、体育の時という回答が最も多かった。

※アンケートは、シック・ジャパン(株)小中学生の体毛に関する意識調査 全国インターネット調査、2022年6月実施、対象者:9~15才の男女

アンケート結果を踏まえ、サッコ先生から、みんな一人ひとりがどうしたいのか、意見を持つことは大事であると説明された。

髪型はみんな違って個性を表現できるものだし、体毛もみんなと同じである必要はない――。本当にその通りで、「剃る一択」というのも、もう時代に合わない。

「みんな自分自身、心と体を大切にしてほしい」
「体は清潔に保つこと、体の成長の予定を知ることで、不安も解消される」

サッコ先生からのアドバイスは、面倒な思春期をやり過ごすための宝物になったに違いない。「心を大切にするとはどういうことか」という問いに、「人に優しくすることでは?」と答えた子どもがいた。サッコ先生の言葉は、きっと君とクラスのみんなの心に届いたはずだ。

体毛が気になったら? 自分でできる正しいケア

授業もラストスパートとなると、登壇者が交代。シック・ジャパンによる体毛ケアに付いての話と実践アドバイスがあった。

子どもたちに、サンプルとしてソープ付きカミソリ「イントゥイション」が配られた(練習用に、カミソリの刃はダミーとなっている)。カミソリという刃物ながら、優しい色合いのため親しみやすそうだ。初めてカミソリを使う人のための配慮も十分なされた設計である。

シック・ジャパンの担当者による話の後、毛を剃る練習をみんなで行った。

ここで、我々大人にとっても再確認すべき注意点が示された。それは、「カミソリは1人1本は鉄則」ということ。家族間であってもカミソリの共有はしてはいけないことは、大人も再確認すべきだ。

体の剃る部分に適した自分専用のものを用意することに加え、カミソリ自体を清潔に保ち、定期的に交換することも徹底したい。

サッコ先生は、授業の締めにこのように言う。

「困ったとき、悩んだときに相談する大人がいますか?」

子どもたちに向かって、相談できる大人の顔を3人思い浮かべてほしいと問いかける。家の人、学校の先生などが思いつくだろうか。

「君たちが困ったとき、相談してほしいと思っている大人が必ずいる。その1人が保健室の先生です」と伝え、特別授業は終了した。