日本各地の企業からノミネートされた食材・商品をコンテスト形式で審査し、優れたご当地食品を認定する第一回「食べるJAPAN 美味アワード」が先月発表された。

今回は同アワードでグランプリに輝いた「温泉ワインうなぎ蒲焼き」(甲信食糧)を実食。服部学園理事長の服部幸應氏はじめ、審査を務めたトップシェフや有識者が認めたその味わいをレポートする。

  • 「温泉ワインうなぎ蒲焼き」を実食!

    「温泉ワインうなぎ蒲焼き」を実食!

■温泉を使った養殖池で育てたこだわりの鰻

日本国内には国内はもとより、海外でも評価されてしかるべき素晴らしい食品が多くある。しかし、地域産品を中心にまだまだ知られていない、発掘されていない食品が多く存在する。「食べるJAPAN 美味アワード」は味や品質はもとより、「地域特性の活かし方」「食品や企業の背景にあるストーリー」なども審査基準となるアワードだ。

「温泉ワインうなぎ」の生産・販売を手がける甲信食糧は給食や外食、中食に販路を拡大。地元・山梨県の歴史や文化、風土を知り、生産地ならではの消費の仕方(作り方)を知る「知産知消」を掲げ、これまでにさまざまな商品を展開してきた。

市場に出ていない地元の生産物や、余って売れなくなった農産物といった地域資源を利活用するための商品開発を進め、現在、従業員66名ながら年商25億円を誇る。

今回は同社の売り上げの多くを占めていたホテルや旅館といった観光業・外食産業といった取引先が、コロナ禍で厳しい影響を受けるなかでのグランプリ獲得となった。

  • 山梨県の食材を活かして生まれた「温泉ワインうなぎ」

    山梨県の食材を活かして生まれた「温泉ワインうなぎ」

「温泉ワインうなぎ」は湧き出る温泉を使って養殖した鰻のチルド商品。もともと山梨県は江戸時代から鰻屋が人気で、長年にわたって鰻の食文化が培われてきた土地柄らしく、現代でも人口あたりの鰻料理店の数が全国3位との調査結果もある。

「温泉ワインうなぎ」の開発は15年ほど前、同社社長の中込武文氏が山梨県の名産であるワインの残渣が県内に300トン出ていることを知り、鰻の養殖での活用を考えたことでスタート。鰻の養殖から焼き上げなどの加工まで地元で行っている。

鰻の生育には最適な温度(摂氏30度~40度)に保たれた山梨の豊富な温泉湧水を利用している。流水状態を人為的につくった養殖池によって鰻の運動量を上げ、無投薬で安全・健康な鰻の生産に成功した。また、深蒸し加工や2度の味付け焼き工程などで使う特製のタレには、山梨県・勝沼で百十余年の伝統を持つワイナリーが醸造した赤ワインを活用。鰻の旨みを最大限に引き出した。

■皮まで柔らかい!

実食したのは蒲焼きと白焼きが1尾ずつセットになった商品。深蒸し工程によって専門店を上回る品質に焼き上げた鰻が、クール便で送られてきた。

  • 箱を開けてみると、作り方と付属のタレが入っていた

    箱を開けてみると、作り方と付属のタレが入っていた

裂き8年、焼き一生の鰻調理だが、湯煎や電子レンジで加熱するだけで難しい調理工程はない。ただ、より美味しく食べるための調理方法として、湯煎後に取り出した鰻に大さじ一杯のお酒をかけ、アルミホイルを敷いたフライパンで蒸し焼きにする方法が紹介されていたので、今回はこの調理法を採用した。

  • まずはうなぎを湯煎する

    まずはうなぎを湯煎する

  • アルミホイルを敷いたフライパンで蒸し焼きに

    アルミホイルを敷いたフライパンで蒸し焼きに

えぐみや臭みも一切なく、シフォンケーキのように皮まで柔らかいフワフワの鰻は、これまでに人生で食べた鰻史上でも抜群に美味しすぎた。マスカット・ベリーAが原材料の赤ワインを混ぜたタレの相性も良く、まろやかな風味と香りが感じられる。タレはいちごジャムのように甘い香りが特徴で、あっという間に完食してしまったが、写真を見ているとまた食べたくなってくる……。

  • 左から白焼きと蒲焼き

    左から白焼きと蒲焼き

また、味の決め手となる調味料に高品質の丸大豆を100%使用した本醸造醤油と、天然の素材をじっくりと熟成させた本みりんを使用し、素材自体の持ち味を活かした仕上がりに。加工段階では、仕込み水や原料米に日本名水百選指定の「南アルプス天然水」と、山梨県産「ひとごとち」を使った酒も使っており、味の深みを演出しているようだ。

養殖から調理・加工までこだわりの詰まった「温泉ワインうなぎ」。ハレの日のメインの一皿にも相応しい逸品だ。

  • 重箱にいれるとさらに高級感が増す。ごちそうさまでした!

    重箱にいれるとさらに高級感が増す。ごちそうさまでした!