PMSや更年期症状を緩和する可能性を秘めた「エクオール」について産婦人科医に聞いてみた
夏が過ぎ、ようやく涼しくなってきた今日この頃。でも、「なんだかちょっとお疲れモード」……という人も多いのではないでしょうか。夏で疲れたココロとカラダを、一度リセットしませんか? 最新の検査・診断から、気軽にできるエクササイズまで、いまアラサー女子に知ってもらいたい“ココロとカラダの話”をお届けする本特集。今回は成城松村クリニック院長・松村圭子先生に「女性ホルモンと関わりのある大豆由来のエクオール」について聞いてきました。
女性にとっては”毎月の憂うつ”であることが多い生理。生理中の女性をケアする商品も年々増えていますが、生理中だけでなく、生理前に起こる”PMS症状がつらい”という話も、女性同士で話しているとよく耳にすることです。
PMS(月経前症候群)とは、月経前の3~10日の間続く、精神的あるいは身体的な不調のこと。 月経が始まるとそれらの不調が軽くなるか全くなくなる場合、月経前症候群(PMS)と診断されます。
PMSの緩和にはピルを使う人も多いですが、ライフステージや体調によっては、ピルを使うことを悩む女性もいます。PMSが起こる理由には女性ホルモンが関係しているのですが、最近になって、PMSに関わる「エストロゲン」という女性ホルモンと、大豆由来の 「エクオール」という成分が、とある関わりがあることが分かってきたんだとか。
エクオール産生力を自宅検査してみた
かくいう筆者も、そんなPMS症状に悩む女性のひとりです。PMS緩和や生理痛緩和を目的にピルの処方を受けているのですが、それでも月によって症状を強く感じることもあり、主治医に相談しても「生活習慣などでも変わる可能性があるからねえ」と言われてしまっていました。
そんな時に、大豆製品を摂取することで体内で作られるとある物質が、PMSを緩和してくれる可能性があるということを知りました。そして、その物質が作れているかどうかを自宅で検査できるキットの存在も知り、早速試してみることに。
『からだのものさし』というブランドが展開している「エクオール検査 ソイチェック」というキットを使うと、大豆製品を摂取することで「エクオール」という物質が体内で作れているかどうかを検査することができます。このエクオールこそが、PMSにも有効な、女性ホルモンのはたらきを助ける物質と期待されているのだそう。
しかも、日本人の約半数は体の中でエクオールを作れていないという結果が出ているのだとか。エクオールを作れる人の中でも、十分な量を作れている人は4人に1人。多くの人が、大豆製品を摂ってもエクオールを作れていないということが分かっています。
検査は手軽な自宅での尿検査。大豆製品を食べた次の日に、付属のコップを使って尿を取ります。同じく付属の採尿キットに適量の検体を入れれば、尿検査は完了。あとはWEB上で検査の申込みを済ませて、郵便ポストに検体を投函するだけです。
検査は1週間ほどで完了し、検査結果もからだのものさしのWEBページから確認可能。見直しやすくて管理もしやすいので、あらゆる身体検査結果がWEBで確認できたら便利なのに……と思いながら日々を過ごしていると、検査完了のメールが届きました。
サイトにアクセスしてみると、検査結果が出ていました。なんと筆者は、エクオールが作れていない側の人間でした……。
今回は「作れていない」という結果が出てしまいましたが、エクオールを産生する腸内細菌 は、腸内環境で活動度合いが変わるそう。腸内環境が変わればエクオールが作れるようになり、検査結果が変わる可能性もあるようです。それでも、毎月タイミングが来るまでPMSがつらいかどうか分からない不安がある上、大豆を摂ってもエクオールが作れていない結果は地味にショック……。
産婦人科医に「エクオール」と「女性ホルモン」の関わりを聞いてみた
エクオールはここ最近、医療業界でも徐々に注目され始めた物質で、PMSの緩和以外にも更年期症状の緩和、肌のシワ改善、メタボ改善などにも効果が期待されているようです。他にも大豆に含まれる「大豆イソフラボン」によるさまざまな健康効果がどのくらい得られるのかが、エクオールが作られているかどうかで大きく変わってくるのだそう。
まだまだ研究途中のエクオールですが、女性ホルモンに近いはたらきをすることから、私たち女性とは関わりの深い物質であることは分かっています。そこで今回、エクオールや検査に詳しい成城松村クリニック院長・松村圭子先生に、女性とエクオールの関わりについてお伺いしました。
エクオールという物質は、女性ホルモンのエストロゲンと化学構造式がとても似ているんです。あらゆるホルモンは、体の中にある受容体とくっつくことでさまざまな効果を発揮するのですが、エクオールはエストロゲンの代わりに受容体にくっつくことで、エストロゲンと似たはたらきをすることが分かっています。
エストロゲンは全身に作用する物質なので、髪や肌の健康、骨の健康、そして生理……身体全体の健康をサポートしてくれるんです。
エストロゲンのサポートができる、という意味ではそうですね。実は女性にとって最も関わりが深いのは、 40代後半以降の更年期のタイミング。 更年期の女性の体は女性ホルモンが一気に減ってしまうんです。その時に体や心にさまざまな症状が現れ、日常生活に支障をきたすくらいの状態になると 「更年期障害」と呼ばれます。
でも若い方でも、今はストレスや生活習慣が原因で自律神経が乱れる女性も多いですよね。そういう方は女性ホルモンにも影響が出やすいので、エクオールによるサポートができているかどうか、知っておく意味はあると思いますよ。実際に、PMS症状がある方とない方で比べてみると、PMS症状がある人の方がエクオールを作れていない人が多かったという研究も出ています。
月経周期の中で、生理前はエストロゲンが減る時期なんです。自律神経に乱れがあると、その時期にエストロゲンの数がガクッと減ってしまう人もいます。そうすると、生理前に小さな更年期が毎月訪れているような状態になります。それはとてもつらいことだと思いますよ。
本来なら、20〜30代のうちに女性ホルモンに影響があるというのは、健康な女性ならありえないことなんです。でも、現代はPMSや生理不順に悩む患者さんも増えてきていて、私はそのことは重く捉えるべきだと思っています。
若い女性であれば、女性ホルモンは妊娠・出産にも関わってきます。エストロゲンが正しく働くことで毎月正しく月経が起こり、その結果妊娠にもつながるわけですから、出産を考える女性は、生理不順やPMS症状のこともしっかり考えるべきですね。
生理不順やPMS症状の改善のために、自律神経を改善すること、女性ホルモンを正しいリズムにすることが必要という事が分かりました。
でも仕事や環境次第では、なかなか生活改善ができないということも往々にしてありますよね。女性ホルモンのサポートのために、エクオールが正しく作られるようになるためにはどうしたらいいのでしょうか?
エクオールをうまく作るためには、腸内にエクオール産生菌がいるかどうかが重要です。エクオール産生菌は腸内細菌です。腸内環境が良くなることで産生菌の活動が活発化します。ただ、産生菌も原料になる大豆イソフラボンがあまり体内に入ってこないと活動が弱まってしまうので、まずは日常的に大豆イソフラボン ……つまり、大豆製品を口にすることも大切ですね。摂り貯めておくということはできないので、日々必要量摂取しておく、ということが重要です。
ちなみにエクオールは男性にも効果があるんですよ。エクオールが持つ抗アンドロゲン(男性ホルモン)の働きで、AGA(男性型脱毛症)予防等の研究がさらに進むと良いですね。
そうですね。特に若い方でも、妊娠を考えてピル処方をやめることを検討している女性や、ピルを飲んでもPMS症状がつらいという方は、エクオールに目を向けてみてほしいなと思っています。
ソイチェックなら自宅で簡単に検査できますし、検査を続けることで大豆を摂らなきゃ、というモチベーションにもつながります。女性ホルモンは体の健康のあらゆることに作用していますから、 病名のない不調に悩む方も、自身のエクオール産生能力に合った対策を取ることで、不調が改善される可能性があります。閉経されているお母様が体調不良に悩んでいるなら、お母様にもぜひ教えてあげてほしいですね。
松村先生のお話を聞いてみると、PMS症状の改善だけでなく、自分の体で働く女性ホルモンが、自分の健康を支えてくれていることが分かりました。私たちが女性ホルモンのはたらきのために努力できることは、正しい生活リズムを意識することと、そしてエクオールの産生力を常によい状態に保つために腸内環境を整えておくこと。 大豆食品を積極的に摂取するということも鍵になるかもしれませんね。
「からだのものさし」では、エクオール以外にもさまざまな検査が自宅で簡単にできるキットを展開しています。実際に検査してみることは、自分の体や健康状態に意識を向けるきっかけにもなりました。定期的に検査を続け、女性ホルモンと向き合っていくことで「風邪でもないのに調子が悪い日」が減らせたら……毎日がもっと輝くような、そんな気がします。
Information
今回取材したのは……「成城松村クリニック院長 松村圭子先生」
日本産科婦人科学会専門医。広島大学医学部卒業後、同大学産婦人科学教室入局。2010年、成城松村クリニック開院。若い世代の月経トラブルから更年期障害まで、女性のカラダをトータルサポートしている。日々多くの女性の診療を行うかたわら、テレビ、雑誌、講演、執筆などでも活躍中。
著書に『オトナ女子のためのカラダの教科書』(宝島社)、『これってホルモンのしわざだったのね 女性ホルモンと上手に付き合うコツ』(池田書店)、『小麦オフダイエット』(マイナビ)など多数。
(取材・文:ミクニシオリ)
※この記事は2022年11月16日に公開されたものです