「怖い」と「恐い」の意味の違いは? 意味や使い分けを解説
「こわい」と文字を打つ時、「怖い」と「恐い」をどう使い分けたらいいか悩んだことはありませんか? ライティングコーチの前田めぐるさんに、「怖い」「恐い」の意味や使い分けを教えてもらいました。
「怖い」と「恐い」。スマホで「こわい」と打つと、両方とも出てきます。
どちらを使えばいいかと悩んだ結果、ひらがなで書くこともあるのでは?
果たして、「怖い」と「恐い」に意味の違いはあるのでしょうか。一緒に考えましょう。
「怖い」と「恐い」の意味はどっちもほぼ同じ
「怖い」と「恐い」に意味の違いはあるのでしょうか?
結論から言うと、両者の意味に大きな違いはありません。
念のため、「こわい」の意味を辞書で調べてみましょう。
こわい【怖い・恐い】
(1)おそろしい。悪い結果が予想され、近寄りたくない。
(2)人知でははかりがたい、すぐれた力がある。驚くべきである。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
以上のように、「怖い」と「恐い」は、どちらも「こわい」の漢字表記として載っています。
「こわい」とは、「おそろしい」という意味です。
また、「悪い結果を予想すると、おそれおののき、近寄りたくないような気持ち」を意味する言葉でもあります。
次に、漢和辞典で「怖」と「恐」を引いてみましょう。
【怖】ホ・フ・こわい・こわがる・おそ-れる・おそ-れ
びくびくおそれおののく。おそれる。こわがる。こわい。おそろしい。おそれ。【恐】キョウ・おそれる・おそろしい・おそれ
(1)こわがる。おびえる。おそれる。
(2)かしこまる。つつしむ。おそれいる。
(3)こわがらせる。おどす。
(4)たぶん。ひょっとしたら。おそらくは。
(『例解新漢和辞典 第三版』三省堂)
意味としては大きな違いはなく、どちらも「こわがること、おそろしいと感じること、またおそれそのもの」です。
以上のことから、「こわい」を漢字表記するには「怖い」「恐い」の両方が使える、ということが分かります。
どちらも「危害を加えられそうでおそろしいと感じること。また、先のことを想像して不安な気持ちになること」を意味する言葉です。
使い分けに迷ったら「怖い」を使う
前段で述べたように、「怖い」と「恐い」は両方とも「こわい」と読み、ほぼ同じ意味であることが分かります。
基本的に、日常生活で「こわい」と表現したい時、この2つの言葉を使い分ける必要性はありません。
しかし、文化庁が定める常用漢字表に「こわ(い)」の読みがあるのは「怖」のみです。「恐」の読みは「おそ(れ)」が主であり、「こわ(い)」とは記載されていません。
そのため、どちらの字を使おうかと迷ったら、常用漢字表に読みが掲載されている「怖い」の方を選ぶと良いでしょう。
また、ビジネス文書を書く時も同様の意味で、「怖い」の方が望ましいといえます。
「こわさ」を表す「怖」と「恐」の使い分け(例文付き)
「怖い」と「恐い」を使い分けることに神経質になる必要はありませんが、ちょっとしたニュアンスの違いを表現したい時には、「日常的なこわさかどうか」を目安にするといいでしょう。
日常的に遭遇するこわさには「怖」の字を、災害のような誰もがおそれるこわさには「恐」の字を当てます。
人に使うなど日常的な実感のある「怖さ」を表す時
使い方・例文
・私は怖がりなので、お化け屋敷は本当に苦手です。
・「あの先生は怖い」と先輩から常々聞かされてきたけれど、いざ担任になったらそれほどでもなかった。
・今度の試験は全然できなかったので、結果が届くのが怖いです。
脅かされることへの「恐ろしい」気持ちを表す時
使い方・例文
・30年以内に必ず起こるとされている大震災を正しく恐れることが大切です。
・著名なA氏は、拘束や尋問を受けるのは著しく名誉と尊厳を傷付けられると感じ、逮捕されることをひどく恐れた。
「怖い」や「恐い」以外で「こわさ」を表す言葉
「怖い」「恐い」以外にも、「こわさ」を表す言葉はいろいろあります。
例文とともに紹介します。
「怖気」
「おじけ」と読みます。
「怖くてびくびくする気持ち・予測からくる恐れや恐怖心」を意味する言葉です。
使い方・例文
・彼は怖気づいたのか、約束の時間になっても来なかった。
「恐怖」
「きょうふ」と読みます。
「自分の身が危険な状態で、恐れ怖がること」を意味する言葉です。
使い方・例文
・災害を実際に体験した時の恐怖は、時を経てもまざまざと思い出される。
「畏怖」
「いふ」と読みます。
「人や何かに対して、不気味な威圧感を感じて、恐れること」を意味する言葉です。
使い方・例文
・カリスマ経営者である彼に、たいていの人は畏怖を感じることだろう。
「戦慄」
「せんりつ」と読みます。
「非常に恐れおののくこと」を意味する言葉です。
使い方・例文
・彼の名は、人々を戦慄させた殺人事件の犯人として、昭和史に刻まれている。
漢字を使い分けることの意味
今回は、「こわい」の漢字表記について考えましたが、いかがでしたか?
「怖い」が常用漢字表にある読みで、「恐い」が漢和辞典にも載っていない読みであることに驚いた人もいるのではないでしょうか。
もちろん、どちらも広辞苑には「怖い」「恐い」と載っているので、日常的な場面で「こわい」を使い分けることに神経質になる必要はありません。
ただし、「こわさ」の種類で、「怖い」と「恐れ」の使い分けを覚えておくと、繊細なニュアンスを表現できそうですね。
(前田めぐる)
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※この記事は2021年03月19日に公開されたものです