「媚びる」の意味とは? 媚びる人の特徴と心理・対処法を解説
媚びる人っていますよね。彼らはなぜ人に媚びるのでしょうか? 職場にいると、モヤモヤとした思いを抱える人も多いはず。心理カウンセラーの服部希美さんに、媚びる人の心理とその対処法について詳しく教えてもらいました。
上司の前で、やたらとお世辞を言ったり。
イケメンの前でだけ、ぶりっ子をしたり……。
会社などの対人関係において、見ていて不快な気持ちになる行為の1つは「媚びる」ことではないでしょうか?
今日は「媚びる」とは具体的にどのような言動で、どういった特徴があるのか、心理カウンセラーの視点から解説します。
また、職場の媚びる人と上手に付き合っていく方法についてもお伝えします。
「媚びる」の意味とは
まずは、「媚びる」の意味を辞書で調べてみましょう。
こ・びる【×媚びる】 の解説
[動バ上一][文]こ・ぶ[バ上二]
1 他人に気に入られるような態度をとる。機嫌をとる。へつらう。「権力者に―・びる」「観客に―・びる演技」
2 女が男の気を引こうとしてなまめかしい態度や表情をする。「―・びるような目つき」
(『デジタル大辞泉』小学館)
媚びるとは、相手に気に入られるために、機嫌を取ったり、ゴマをすったりすること。「下心ありき」で、相手が喜ぶことをしたり優遇したりすることを指します。
男性の気を引くために色目を使うことも「媚びる」といいますが、女性に限らず男性にももちろん「媚びる」は使われます。
私たちは誰でも、人から評価をされたいし、気に入られたいと願うもの。そのための努力をしたり、自分をアピールしたりするのは悪いことではありませんよね。
ですが、自分の努力で評価をつかもうとするのではなく、「他人に迎合することで、安易に自分の欲しい評価や承認を得ようとする」姿を見ると、私たちは「ズルい!」と不快感を覚えてしまうのです。
「媚びる」の類義語
類語には「へつらう」もありますが、こちらは目上の人に対して取り入ろうとしている様を指すことが多いようです。
「八方美人」との違いは?
「八方美人」とは、誰に対してもいい顔をする人のこと。相手から気に入られるような言動を取る点では「媚びる」と同じ意味です。
しかし八方美人は誰彼構わず好かれようとするのに対し、「媚びる」の場合は特定の人にだけ好かれようとする場合が多いのが違いです。
「媚びる」って何? 5つの例
それでは、具体的に「媚びる」とはどういうことか、いくつか例を挙げていきます。
(1)声のトーンが人によって変わる
お気に入りの男性と話す時だけ、声のトーンが上がる女性。これは、媚びる女性の特徴の代表格ですね。
同僚には素っ気ない態度なのに、若い男性社員と話す時には急に猫なで声になる。こんな光景を見たことがある方は多いと思います。
あからさまな態度の変化に、周りが不快になることは多いですよね。
(2)上司にはペコペコするのに、部下に対してはキツい
媚びる男性の特徴の代表格は「上司や目上の人など、権威者にはいい顔をするくせに、部下には厳しく当たること」。
男性にとって、仕事での成功は女性以上に自己価値に直結します。そのため男性は、上司などに対して媚びる態度が出やすいようです。
(3)裏表が見える
ここからは男女共にいるケースです。「裏では悪口を言っているのに、本人の前ではいい顔をしている」タイプ。
裏の顔を知っている側からすると「よく言うよ……」と不快に感じますよね。
(4)みんなにいい顔をする
「相手に応じて態度を変える」という人の中には、目の前の人に合わせて「いい顔」をしてしまうタイプもいます。
相手好みの自分でいることで好かれようとしてしまうため、一貫性がなくなり、不誠実さを感じさせてしまいます。
(5)損得で人を判断する
自分にメリットがある時には熱烈アピールをしてたのに、メリットが無くなった途端に冷たくなったり、関心を向けなくなったり……。
損得勘定だけで対人関係を築くような人は、あまりいいようには思われませんね。
自分にとって都合の良い人にだけ態度を変えて、媚びる人。あなたは周りからどう思われているのでしょう? 「媚びる人度」を診断します。
なぜ媚びるの? 「媚びる人」の心理や原因とは
では、先ほど挙げた言動を取ってしまう媚びる人は、どのような心理や原因でそんな振る舞いをしてしまうのでしょう?
媚びる人の心理をひもときながら、上手に付き合っていくヒントを探していきましょう。
(1)素の自分に自信が無い
お世辞を言ったり、過剰にいい顔をしたりする原因は「自己評価の低さ」からきていることが多いです。
実力や自分の魅力に自信が無いために「気に入られる自分」を演じてしまうのですね。
本人は「媚びなければ、人から愛されない」という深い絶望や悲しみを感じているのですが、実際は実力や魅力を十分に持っている方がほとんど。
実力や魅力がある方ほど、自分を過小評価して媚びてしまうと、周りからの嫉妬や反感を買いやすくなります。
(2)承認欲求が強すぎる
「自分は人より劣っている」という劣等感が強い時、私たちは人と競争し、「すごい人」から「特別に」認めて貰いたくなります。
権威を持っている人に愛されれば、自分は特別な存在であると思える。イケメンの男性社員に特別扱いされれば、他の女性社員に勝てるような気がする。
そんな風に感じてしまうので、チヤホヤされるために相手に媚びてしまうのです。
(3)嫌われるのが怖い
争い事が苦手で、自己嫌悪が強いタイプは「争いたくない」「嫌われたくない」という過剰な怖れから、周りの人に媚びてしまいがちです。
その人なりの優しさからの行動なのですが、怖れから逃げるための選択であるため、どっちつかずの態度に周りがいら立ち、争いが起こってしまう残念なケースも……。
(4)相手をコントロールして利益を得たい
自分の望む方向へ相手をコントロールするために媚びている人も多いです。
お世辞や機嫌を取り、相手の気持ちを良くさせることで、こちらの要求を引き受けやすい状態に持っていきます。
このケースも「そうでもしないと成功できない」という思い込みからきています。
媚びている時には、相手から利益を引き出すことだけが目的になり、相手への敬意や尊敬が抜けてしまっている時が多いです。
「媚びる人」への対処法
では実際に、いつも媚びてくる人があなたの身近にいる場合、どんな心持ちでどのように接したらいいのでしょうか?
(1)競争に乗らない
「私の方が、あの人に好かれているでしょ」。「私の方が、あなたよりも女性として魅力的なのよ」。
無自覚のことが多いのですが、媚びる人は周囲に競争を仕掛けています。この競争に乗ってしまうと、あなたまで劣等感のわなにはまってしまいます。
まずはあなた自身がきちんと自信を持ち、競争に乗らないことが大事ですよ。
(2)媚びる必要は無いことを教える
媚びる人は、本当の自信を知らないことが多いです。「媚びるという対価を払うことで、ようやく自分は認めてもらえる」という世界で生きています。
もしもあなたが、その人のいいところや感謝していることを、たくさん伝えてあげることができれば、その人の承認欲求が本当の意味で満たされるかもしれません。そうすれば、媚びる必要は無いのだとその人も信じられるようになるかもしれませんね。
(3)相手なりのプライドを守る
媚びることで、自分の心を必死に守っている人も多いです。
媚びる人の繊細なプライドを傷つけてしまうと、あなたが攻撃の標的になってしまう可能性も高いです。
気付かないうちに傷つけてしまう場合も多いですが、相手なりのプライドに気付いた時には、そっと見守ることが大事ですよ。
(4)自分がやるべきことに集中する
たとえ目の前に媚びる人がいたとしても、自分の成功や幸せのために努力を積み重ねることはいくらでもできますね。
あなたの努力や良さを見ている人は、必ずいます! 自分のやるべきことに集中しましょう。
媚を売るデメリット
一方で、自分自身が媚を売りがちな性格で悩んでいる……という人もいるでしょう。ここからは、媚を売るデメリットを紹介します。
(1)自分も相手も疲れる
媚びを売ることによって、周りを疲れさせてしまう可能性があります。自分に媚を売られていることに気づいた場合は気を使いますし、それを見ている第三者もあまりいい気持にはならないもの。
一方で、相手に好かれるためにいろいろな努力をするのも疲れてしまいますよね。
媚を売ることは、自分も相手も疲れてしまうデメリットがあることを知っておきましょう。
(2)本音を言いにくくなる
媚を売っていることで良くしてもらっている相手に対して、本音を言いにくくなるデメリットもあります。
本当の自分を見せたいと思うような関係性になっても、「いつまでも媚を売らないと嫌われてしまうかも」と不安になるのはつらいもの。
(3)人間関係が希薄になりやすい
本音を言えない=相手との関係性が希薄になりやすいというデメリットも。
心置きなく本音を言い合える人同士の方が、本当の意味での信頼関係を築きやすいでしょう。
「媚びる」性格の直し方とは
媚を売るデメリットを見て、もう「媚びる人」でいたくない! と感じた人もいるかもしれません。
媚びる性格を直すにはどんなことを気をつけたらいいのでしょうか。
(1)「媚びる=好かれる」という考え方を捨てる
まずは、「媚びを売らないと自分は相手に好かれない人間なんだ」という考え方を捨ててみましょう。
前述のとおり、媚を売ってしまう心理として「自己評価が低い」ことが挙げられます。
もしもあなたが媚を売る性格で周りから煙たがられているような気がする……と感じているならば、本当はあなたに人から好かれる実力や魅力があるのに、自分を過小評価して嫉妬や反感を買っている証拠と言えます。
(2)「NO」と言う勇気を持つ
本来の自分には魅力があることに気付いたら、次は人に対して「NO」と言う勇気を持ってみましょう。
全てに対して「NO」と断るのではなく、「これは自分のキャパシティではしんどいな」と感じた時、素直にそう伝えてみること。
これまで人に好かれようと頑張ってきた自分を認め、次のステップに進む努力をしていきましょう。
「媚びる」心理を知って上手に対処しよう
媚びる人の抱えている心理の中には、自分にも当てはまるなぁと感じたものもあったのではないでしょうか?
実は「このぐらいしないと、私は認められないのではないか」と、程度は違えどもこの“無価値感”は、私たちみんなが持っています。
そして、自分の中の無価値感は、同じ無価値感を抱える人の理解に使うこともできるのです。
この記事をここまでお読みいただいた方は、きっと人を愛したい方。媚びる人のことを理解してあげたいと思っている方だと思うのです。
この記事が、心優しいあなたの参考になれば幸いです。
(服部希美)
※画像はイメージです
※この記事は2020年07月05日に公開されたものです