渡し方も受け取り方もスマートに。名刺マナーの基本
初対面の相手と交わす最初のコミュニケーションといえば、名刺交換。印象が決まる瞬間だからこそ、マナーを押さえたスマートな受け渡しができるといいですよね。マナー講師の松本繁美さんに、覚えておきたい名刺交換のマナーを解説してもらいました。
名刺の基本
最初に、基本的な名刺の渡し方・受け取り方を押さえておきましょう。渡す方向や名刺を持つ高さなど、参考にしてください。
名刺の渡し方
名刺交換は双方が立ち、机を挟まずに行います。机やテーブルを挟んでの名刺交換はいけません。お互いの間に何もない場所まで移動しましょう。そして名刺を胸の高さで持ち、両手で「名刺の表面」を向けて丁寧に差し出します。この時、相手が差し出した名刺の高さよりも低い位置で差し出すことで、敬意を表すようにします。もちろん、相手側が読める向きで差し出すことは言うまでもありません。
名刺の受け取り方
渡すときと同じで、両手で受け取ります。渡すときより低い位置で受け取るようにしましょう。名刺入れを持っている場合の交換は、名刺入れをトレイだと考えて受け取るとスマートです。
くれぐれも、相手の名前や会社名、会社のロゴなどに指がかからないように注意。極力、名刺のはじを持つように心がけます。名刺交換というと難しく考えがちですが、要は渡すときも受け取るときも「ていねいに扱う」、この一言に尽きます。丁寧に渡し、より丁寧に相手の名刺を受け取れば、すべての所作がうまくいくはずですよ。
ケース別・名刺の扱いマナー
相手の会社の人たちが何人かいると、誰にまず名刺を渡すのか?交換して、もらった名刺はその場でどう扱うのか?迷うところです。 挨拶が終わり、打ち合わせなどの最中の名刺の扱いについて、また、最後までスマートにふるまうため、名刺をしまうときのマナーもきちんと知っておくことは大切です。
複数人の相手に渡すとき
名刺交換の順番は「訪問者→目上の方」の順で渡すのがお約束。名刺は「目下の者」から差し出すのがマナーです。
また、複数名で交換するときは名刺交換の順番に注意。部長、新人など、同じ営業側の人間が複数いる場合、その中で一番格上の人に名刺を渡します。たとえば、営業部長と新入社員が2人で顧客に営業訪問したとします。商談相手が2人いたとして、4人での名刺交換です。
この場合、まず営業側から相手に名刺を渡しますが、その際は、営業側の中で新人より立場の高い部長が、先方の立場の高い者と名刺交換します。そして次に、新入社員が先方の立場の高い者と名刺交換する、という順番になります。交換した名刺は、上に目上の人の名刺が来るように重ねます。
名刺をしまうとき
受け取った名刺は、名刺入れの上に乗せておき、椅子に座ったあとにテーブルの上に乗せます。複数枚交換した場合は、相手の着席順(自分側から見た順番)に並べましょう。縦一列に並べるときは、もちろん上位者から。その際、交換した名刺を「名刺入れ」に乗せるのは、相手方の立場の高い人の名刺からにします。
いただいた名刺をしまうタイミングですが、原則、相手の役職名と名前を覚えたらしまっても構いません。しかしながら、最近では席を立って帰る直前まで並べている人がほとんどです。帰り際に素早く、しかも丁寧にしまうのが今どきのマナーです。
名刺を持っていないときの対応マナー
ときには、名刺を忘れてしまった! なんてことも。また名刺を人数分持ち合わせていない場合は誰に渡すべきなのか? 相手に失礼にならないようにするためのマナーをまとめました。
名刺入れごと忘れた場合
あれこれ言い訳せず「大変失礼ながら、名刺を切らしてしまいました」と告げて「わたくし、○○株式会社○○部○○課(部署名)の○○○○です。よろしくお願い申し上げます」とフルネームで名乗ります。本当は忘れた場合でも「切らしておりまして……」と告げるのがよいでしょう。
帰社後、ただちに対応しなければなりません。まずメールでお詫びの言葉とともに、名刺の原本があればそのデータを相手に送信します。そして、お詫びの手紙とともに、名刺を郵送します。
詫び状 例
○○株式会社○○部○○課
○○ ○○様
先日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
非常に有意義なお話を伺うことができました。
ご存知のように、私の不手際で名刺をお渡しすることができず、大変失礼いたしました。
申し訳ありませんが郵送いたしますので、お受取りいただけましたら幸いです。
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
株式会社◇◇◇ ○○部 ○○課
舞菜 美子
郵送よりもっと営業効果を上げたいのならば、もう一度訪問して名刺をお渡しするのがいいでしょう。熱意を受け止めてもらえるかもしれませんし、話すチャンスができるかもしれません。自分が取ってしまったネガティブな出来事も、ポジティブな方向に持って行くのが仕事の達人です。
名刺を人数分持ち合わせていない場合
先ほどお伝えしたように、名刺は相手側の上位者から渡します。名刺が切れたことを告げれば相手先の上司が気をきかせて、あなたにとって直接担当者となる部下に自分がもらったぶんの名刺を渡して、フォローしてくれたりする場合もあります(名刺に限らず、資料の部数が足りないときなども同じ対応です)。このときは、名刺の行方を必ず見届けて、帰社後にフォローをします。
いずれにしても、名刺を切らす状況を作らないのが大切ですね。名刺入れとは別に、財布や手帳に数枚挟んでおくのもおすすめ。ただ気をつけないといけないのは、財布などでは名刺の角が折れ曲がったり、汚れたりしやすいこと。小さい封筒などに10枚ほど入れ、バッグに常備するなど工夫をしてみましょう。
名刺管理の方法
いただいた名刺には、相手の連絡先や所属部署などの大切な会社情報が記載されています。名刺フォルダなどに入れて大切に保管しましょう。名刺管理のアプリもたくさんあるので、活用するといいですね。アプリを使わないまでも、スマートフォンのカメラなどでいったん撮影しておくのも整理しやすい方法です。
交換した名刺には交換した日付、相手の特徴、どのような内容だったかなど、次回お会いしたとき役立てられるような情報は名刺の裏側にメモをしておくといいでしょう。もちろん本人の目の前でメモをするのは失礼になるのでNG。帰社をしてから、記憶が明瞭なうちに行いましょう。
名刺交換は落ち着いて丁寧に
名刺交換の基本マナーをシーン別にご紹介しました。名刺は「相手そのもの」と言われることもあります。はじめは緊張するかもしれませんが、大切なのは「相手の名刺を丁寧に扱う」ということ。基本を押さえつつ相手を尊重する姿勢を忘れないようにすれば、スムーズな名刺交換ができるはずですよ。
(監修・文:松本繁美 文:篠崎夏美)
※画像はイメージです
※この記事は2018年06月16日に公開されたものです