昨今、業務効率化や在宅勤務への対応などを目的とし、コンタクトセンターでもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められつつあります。しかし、コンタクトセンターのDXを進めるうえでは、取り組みを行う前に整理しておかなければならないことがあります。DXを成功させるにおいて重要なのは、チャットボットの導入やアプリ開発といった、問い合わせチャネルのデジタル化を進めることだけではありません。コンタクトセンターにおけるDXの本来の目的は、組織の壁・プロセスの壁を越えたシームレスなコミュニケーションを実現することなのです。海外の動向調査や有識者の対談を通じて、真に効果的なコンタクトセンターのDXをつかみ取っていきましょう。
1.トレンド①:在宅勤務へのシフトが急激に進む
新型コロナウイルス感染症の流行は、日本だけでなく世界中のコンタクトセンターに大きな混乱をもたらしました。あらゆるコンタクトセンターで問い合わせが激増したのです。パンデミックの終息後も、コンタクトセンターの実に70%が在宅勤務の継続を予定するなど、顧客コミュニケーションの在り方は大きな見直しを迫られています。
2.トレンド②:「セルフサービス化」が志向されている
コンタクトセンターの有人応対(電話対応やチャット、メール)が最良と考えている海外の企業は57%であり、2019年の72%から急激に低下しました。一方、自動応答のチャットボットなどによる「セルフサービス(自己解決)」への関心の高さは、2019年の28%から15ポイント増加し、43%に達しています。
しかし、2020年時点では問い合わせの61%が有人応対となっており、これは、2019年から変化がありません。海外のコンタクトセンターにおいても、問い合わせチャネルのデジタル化は始まったばかりと言えます。
頭に入れておかなければならないのは、スマートフォンの普及によって、消費者側のデジタル化は企業よりずっと進んでいるということです。有人対応こそが王道であるという考えは、不便さを強制することになりかねません。Web上に情報が豊富で、検索やSiriに聞いて解決できるならば、その方がはるかに楽なのです。
3.投資計画:カスタマーセンターへの包括的な投資
コンタクトセンターへの投資計画を見ると、Webサイト、チャネル、コンタクトセンターテクノロジー、シームレスなコミュニケーションの向上といったあらゆる領域に対して投資が計画されています。流行の「セルフサービス化」だけに焦点が当てられているわけではありません。
コンタクトセンターのDXにおいて、カスタマーサービス部門とマーケティング部門におけるコミュニケーションの壁は大きな問題です。コンタクトセンターで会話されているホットワードが、リアルタイムでWebサイトに掲載されていたならば、電話をせずとも自己解決できる割合は増えるでしょう。
4.テクノロジー:AIを適材適所に使う
AIは万能な「魔法の杖」ではなく、あくまでも道具のひとつです。海外では、AIを使った需要予測による「コンタクトセンター運用の最適化」にもっとも視線が注がれており、ついで「セルフサービス用の顧客向けAIまたは自動化(顧客対応の自動化)」「顧客志向をリアルタイムに把握(顧客分析)」となっています。AIを有効に使うためには、その特性を知り、自社課題のどこに適用させるかをよく検討しなければなりません。
投資計画にせよ、AIの適用にせよ、海外のコンタクトセンターは"総合的に"DXへ歩み始めていることが、本調査から見て取れるでしょう。
※調査概要
"2020 Customer Experience (CX) Transformation Benchmark"
NICE Ltd.による、米国・カナダ・英国・オーストラリアの1,006事業者を対象にした調査。