前回は、Microsoft 365(以下、M365)のExcelでMicrosoft 365 Copilot(以下、Copilot)を使い、表データの要約、傾向分析、グラフ作成などを行う基本的な使い方を紹介しました。

今回からは、もう少し実務に近いデータを使って、ExcelとCopilotの活用例を見ていきます。今回取り上げるのは、問い合わせ履歴、作業履歴、障害管理台帳、申請書類管理など、いわゆる「業務台帳」です。

売上データの分析は分かりやすい題材ですが、営業部門以外の読者には「自分の仕事とは少し違う」と感じられるかもしれません。一方、問い合わせ履歴、サポート履歴、申請一覧、作業記録のようなExcel台帳は、多くの部署で使われています。こうした日常的なExcel表こそ、Copilotの効果を実感しやすい題材です。

業務台帳は分析されないまま放置されがち

多くの職場では、問い合わせや作業の記録をExcelで管理しています。たとえば、次のような表です。

・いつ問い合わせがあったか
・どの分類の問い合わせか
・どのような内容か
・誰が対応したか
・対応状況はどうなっているか

こうした台帳は、日々の業務記録としては使われます。しかし、一定期間たまったデータを振り返って、「どの問い合わせが多いのか」「どの時期に増えるのか」「対応が遅れやすい分類は何か」まで分析している職場は、意外に少ないのではないでしょうか。

もちろん、Excelに詳しいユーザーであれば、フィルター、ピボットテーブル、COUNTIF関数、グラフなどを使って分析できます。しかし、日常業務の合間にそこまで手をかけるのは簡単ではありません。

Copilotを使うと、自然な日本語で指示するだけで、業務台帳の内容を要約したり、分類別の傾向を調べたり、注意すべき点を抽出したりできます。

今回使用するサンプルデータ

今回は、架空の社内問い合わせ管理表を例にします。表中の問い合わせ内容、部門名、担当者名などはすべて実在するものではありません。

表には、次のような列を用意します。

・受付日
・部門
・問い合わせ分類
・問い合わせ内容
・優先度
・担当者
・状態
・対応日数

  • サンプルの問い合わせ管理表をExcelで開いた画面

    サンプルの問い合わせ管理表をExcelで開いた画面

Copilotで分析しやすくするためには、前回紹介したように、表をきれいなデータ形式にしておくことが重要です。1行目には列見出しを入れ、途中に空白行を入れず、同じ列には同じ種類のデータを入力します。

また、可能であればExcelの「テーブル」として設定しておきます。テーブルにしておくと、Copilotが分析対象の範囲を認識しやすくなります。

テーブルとは表のデータをひとかたまりのデータとしてデータベースのように扱う機能です。 1つの表で1つのテーブルとなります。複数の表を1つのテーブルにすることはできません。

表をテーブルにするときは、テーブルにする表の中のセルをクリックして選択してから、次のように操作してください。

①「ホーム」タブをクリックする
②リボンの「スタイル」セクションから「テーブルとして書式設定」をクリックする
③好みのスタイルをクリックして選択する

  • 問い合わせ管理表をテーブルとして設定した画面

    問い合わせ管理表をテーブルとして設定した画面

Copilotを起動する

Excelの画面右下、またはリボンなどに表示されているExcel上の「Copilot」ボタンをクリックします。ウィンドウのサイズやバージョンなどの環境によって表示位置やボタンの見た目は異なる場合があります。

なお、Microsoft EdgeでWeb版のExcelを使っている場合は、EdgeのツールバーのCopilotボタンと勘違いしないように注意してください。

①Copilotボタンをクリックする

  • ExcelでCopilotボタンをクリックする画面

    ExcelでCopilotボタンをクリックする画面

Copilotペインが表示されたら、プロンプト入力欄に指示文を入力します。ここから、問い合わせ管理表を分析していきます。

使用例その1:問い合わせ内容を要約する

まずは、表全体の内容を把握します。次のように入力してみます。

プロンプト例:「この問い合わせ管理表の内容を要約してください」

①プロンプトを入力する
②送信ボタンをクリックする

  • Copilotに問い合わせ管理表の要約を依頼する画面

    Copilotに問い合わせ管理表の要約を依頼する画面

Copilotは、表に含まれるデータを読み取り、問い合わせの件数、主な分類、対応状況などを文章で整理します。データ量によっては回答の表示に時間がかかることもあります。

この段階では、まだ高度な分析ではありません。しかし、台帳を開いた直後に全体像をつかむ用途としては非常に便利です。特に、前任者から引き継いだ台帳や、しばらく確認していなかった記録を把握するときに役立ちます。また、Copilotはその都度推論をしますので、常に同じ回答になるわけではありません。

③Copilotの要約表示。緑文字のリンクは、クリックすると台帳のそのセルを表示する

  • Copilotによる管理表の要約

    Copilotによる管理表の要約

使用例その2:問い合わせ分類別に傾向を見る

次に、問い合わせ分類ごとの傾向を分析します。 プロンプト例: 「問い合わせ分類別に件数を集計し、件数が多い分類とその理由として考えられることを説明してください」

④プロンプトを入力する
⑤送信ボタンをクリックする

  • 問い合わせ分類別の傾向分析を依頼する画面

    問い合わせ分類別の傾向分析を依頼する画面

Copilotは、問い合わせ分類ごとの件数を確認し、どの分類が多いかを説明します。 さらに、分類名だけでなく、問い合わせ内容の自由記述も参考にして、なぜその問い合わせが多いのかを推定することがあります。

⑥Copilotの分析結果の表示

  • Copilotの回答画面

    Copilotの回答画面

ただし、ここで注意が必要です。Copilotが示す理由は、あくまで表の内容から読み取れる範囲での推定です。実際の原因を確定するものではありません。業務担当者が内容を確認し、必要に応じて現場の事情と照らし合わせて判断してください。

使用例その3:頻出キーワードを抽出する

業務台帳の特徴は、自由記述欄に多くの情報が含まれていることです。問い合わせ内容の列には、「ログインできない」「メールが届かない」「Teams会議に参加できない」など、具体的な記録が入力されています。

このような自由記述を人間が1件ずつ読むのは手間がかかります。Copilotに頻出キーワードを抽出させてみます。これまでと同様に、Copilotペインのテキストボックスにプロンプトを入力して送信してください。

プロンプト例: 「問い合わせ内容から頻出キーワードを抽出し、どのような問題が多いのかを説明してください」

⑦Copilotの分析結果の表示

  • 問い合わせ内容から頻出キーワードを抽出した画面

    問い合わせ内容から頻出キーワードを抽出した画面

使用例その4:対応が遅れている問い合わせを見つける

他にも、たとえば、問い合わせ管理表の「未対応」「対応中」「完了」などの状態と、対応日数に着目して、対応の遅れなどを分析、抽出することもできます。

プロンプト例: 「未対応または対応中の問い合わせを確認し、対応が遅れている可能性があるものを指摘してください」

たとえば、優先度が高いにもかかわらず対応中のままになっている問い合わせや、対応日数が長い分類を指摘します。

このような分析は、サポート担当者や管理者にとって実用的です。単に一覧を眺めるだけでは見落としやすい項目を、Copilotが候補として示してくれます。

もちろん、Copilotの指摘が常に正しいとは限りません。たとえば、対応日数が長くても、外部業者の回答待ちや利用者側の確認待ちという場合もあります。Copilotの分析結果は、確認すべき候補として扱うのが適切です。

使用例その5:改善策を提案してもらう

最後に、問い合わせ管理表をもとに、業務改善のヒントを出してもらいます。

プロンプト例: 「この問い合わせ管理表をもとに、問い合わせ件数を減らすための改善案を3つ提案してください」

⑧Copilotが提案する改善案の表示

  • 問い合わせ件数を減らすための改善案を提案した画面

    問い合わせ件数を減らすための改善案を提案した画面

Copilotは、問い合わせ件数の多い分類や頻出キーワードをもとに、改善案を提示します。 この例では、どのように改善すれば問い合わせを減らすことができるのか、手順書をイントラネットのポータルサイトに掲載する、画面付きの手順書を作る、ファイルの保存場所を集約するなどの改善を提案してくれています。

ここで重要なのは、Copilotに業務改善を決定させるのではなく、改善策を考えるための材料を出してもらうことです。実際にどの施策を実行するかは、業務担当者や管理者が判断します。

業務台帳分析でCopilotを使うメリット

問い合わせ履歴や作業台帳でCopilotを使う主なメリットは、次の通りです。

●全体像を短時間で把握できる
件数が多い台帳でも、まず要約させることで、どこに問題がありそうかをつかみやすくなります。

●自由記述欄を活用しやすい
問い合わせ内容や作業メモなどの文章データから、頻出キーワードや傾向を抽出できます。

●改善案のたたき台を作れる
問い合わせ件数を減らすためのFAQ整備、マニュアル作成、研修実施など、次のアクションを考えるきっかけになります。

●管理者だけでなく現場担当者にも役立つ
専門的な分析スキルがなくても、日本語で指示するだけで傾向分析を始められます。

注意点とデメリット

一方で、注意すべき点もあります。

●入力データの品質に左右される
分類名が統一されていない、自由記述が短すぎる、状態が更新されていないといった台帳では、分析結果の精度が下がります。

●Copilotの推定は事実とは限らない
「原因として考えられること」は、あくまで表の内容からの推定です。実際の原因は人間が確認する必要があります。

●個人情報や機密情報の扱いに注意する
問い合わせ台帳には、氏名、メールアドレス、部署名、具体的なトラブル内容などが含まれることがあります。共有範囲やアクセス権を適切に設定してください。

●台帳の運用ルールが重要になる
Copilotを活用するには、日頃から分類名、状態、担当者、対応日数などを一定のルールで記録しておくことが大切です。

また、例えば毎月同じ分析をする場合に、毎回プロンプトの文章が変わると回答が安定しません。定期的に実行するプロンプトは、テキストファイルなどに記録して、毎回コピー&貼り付けで利用するとよいでしょう。

また、プロンプトの文章によって回答の精度が変わるため、使ったプロンプトを記録しておくのもよいでしょう。効果が高かったプロンプト、期待した結果にならなかったプロンプト、前回のプロンプトを一部修正して再利用した例などを残しておくと、試行錯誤を効率化できます。

どんなユーザーに向いているか

業務台帳分析は、特に次のようなユーザーに向いています。

・問い合わせ履歴をExcelで管理している
・サポート対応やヘルプデスク業務を担当している
・作業記録や障害管理台帳を管理している
・月次報告や改善提案を作成する必要がある
・Excelデータはあるが、十分に分析できていない

逆に、件数が少ない台帳や、記録内容がほとんど入力されていない表では、Copilotの効果は限定的です。Copilotを活用するには、まず分析に使える形でデータを蓄積することが重要です。

まとめ

今回は、Excelの問い合わせ管理表を例に、M365 Copilotで業務台帳を分析する方法を紹介しました。

業務台帳は、単なる記録ではありません。一定期間たまったデータを分析すれば、問い合わせの傾向、対応が遅れやすい分類、改善すべき業務プロセスなどを見つける手がかりになります。

Copilotを使えば、専門的な分析スキルがなくても、自然な日本語で台帳の要約、分類別分析、頻出キーワード抽出、改善案の作成を始められます。

ただし、分析結果はあくまで業務改善のたたき台です。元データを整備し、Copilotの回答を確認し、最終判断は人間が行うことが重要です。

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