生成AIの普及により、情報収集や議事録作成、文章の添削など、日常業務でAIを活用する場面は着実に増えている。一方で、会計や人事労務といった企業のバックオフィス業務へのAI活用は、まだ本格的に進んでいるとは言い難い。

では、AIを業務の中で本格的に活用するには、何が必要なのか。

2026年7月22~23日に開催された「日本DX大賞2026 サミット&アワード」に、オービックビジネスコンサルタント(以下、OBC)から石倉宏一氏が登壇。「AIとともに働く“使うAI”から“業務を動かすAI”へ」と題し、既存の業務プロセスを大きく変えることなくAIを業務に組み込むための考え方や、会計・人事労務領域での具体的な活用例、さらに専門業務を担う「奉行AIエージェント」について紹介した。

  • 株式会社オービックビジネスコンサルタント 営業推進部 マーケティング推進室 マーケティンググループ グループ長 石倉 宏一氏

    株式会社オービックビジネスコンサルタント 営業推進部 マーケティング推進室 マーケティンググループ グループ長 石倉 宏一氏

AIは普及しているが、バックオフィス業務ではまだ活用が進んでいない

OBCは「奉行」シリーズを開発・製造・販売・サポートする、言わずと知れたSaaSベンダーである。創業から45年を迎え、バックオフィス業務に特化したサービスを展開。開発からサポートまでを国内で一貫して提供する「メイドインジャパン」のサービスであることも特徴だ。

奉行シリーズは会計、債権債務、固定資産、販売仕入れ、在庫管理といった業務に加え、給与、人事、勤怠、労務手続きなど、バックオフィスの幅広い業務をカバーしている。現在は中小企業向けの「奉行クラウド」や中堅・上場企業向けの「奉行V ERPクラウド」、従業員向けサービス「奉行クラウドEdge」に加え、今回のテーマでもある「奉行AIエージェント」も提供している。

そんなOBCが今回の講演で取り上げたのが、バックオフィス業務におけるAI活用である。

生成AIはすでに、情報収集や議事録作成、文章の添削、誤字脱字のチェックなど、さまざまな場面で利用されている。では、企業の業務そのものにはどのくらいAIが入り込んでいるのか。

石倉氏は、OBCが開催した「AIフォーラム」で約3000人に実施したアンケート結果を紹介した。「バックオフィス業務においてAIを活用していますか」という質問に対して、AIをバックオフィス業務に活用していないと回答した人は56.8%に上った。個別の活用方法についても、いずれも10%未満だったという。

「AIが便利なものであるという認識が広がる一方、実際のバックオフィス業務にはまだ十分に活用されていないというのが現状なのです」(石倉氏)

さらに「今後の業務におけるAI活用について当てはまるもの」を尋ねたところ、34%は具体的に使うイメージがあると回答した一方、実に59%が「AIを使う業務を整理する必要がある」と回答している。

  • 業務にAIを組み込む上でのポイント

「つまり、AIを使うことそのものではなく、『どの業務にAIを適用すべきか分からない』ことが大きな課題になっているのです。これからは、業務フローを一度きれいに整理して、その中にAIを取り入れていく流れが求められるのではないかと思います」(石倉氏)

業務プロセスを変えずにAIを組み込む「AI活用業務スタイル」

では、AIを業務に組み込む際、何を考える必要があるのだろうか。

石倉氏が強調したのが、「AIを活用するために新たな業務シナリオを作る」のではなく、「今ある日常業務の中にAIが組み込まれている状態」を作るという考え方だ。

  • 奉行のAI活用スタイル

たとえば給与計算なら、勤怠を締め、残業時間や有休の状況、変動する手当などを確認したうえで給与を計算するという一連のプロセスがすでに存在している。

将来的には、ChatGPTやClaude、Copilotなどに「今月の給与を計算して」と依頼すれば、AIが社内データを参照し、自動で給与計算を行うような世界も想定される。しかし、そこに至るには、AIが処理できないイレギュラーが発生した際の確認など、新たな業務フローが必要になる可能性がある。

業務担当者にとって、これまでのプロセスが大きく変わることは負担にもなる。そこでOBCが提唱するのが、既存の業務プロセスを大きく変えることなく、一部の業務をAIに担わせる「AI活用業務スタイル」だ。

「今の業務フローはそのままに、その中の一部をAIに切り替えていくのです。このように、業務プロセスを変えることなく、一部にAIを置き換えることが、これから求められるのではないかと私たちは考えています。目指すのは、『AIを使っている』ことを強く意識することなく、日々の業務を進める中で自然にAIの支援を受けられる状態です」(石倉氏)

会計業務にAIを組み込み、仕訳チェックなどを効率化

講演では、この「AI活用業務スタイル」を具体的にイメージできるよう、経理と人事労務、それぞれの活用シナリオが紹介された。

経理業務では、仕訳入力からチェック、帳票出力までの一連の業務プロセスの中にAIを組み込む。

  • 経理向けAI活用業務スタイル

たとえば「勘定奉行クラウド」では、仕訳の入力画面からAIに仕訳について質問できる。仕訳の知識が十分でない担当者でも、AIに確認しながら入力できるようにすることで、業務を支援する仕組みだ。

また、AIアシスタントを利用して仕訳の重複をチェックすることも可能だ。

たとえば、同じ日付・同じ金額の仕訳が複数登録されていた場合、AIが重複の可能性がある仕訳を検出する。金額が同じでも取引先が異なるといった正しい仕訳であるケースも存在するため、最終的には担当者が内容を確認することになるが、これまで人が行っていたチェックの一部をAIに任せることで、入力ミスに気づきやすくなる。

さらに、AIとのチャットによって、たとえば「インボイス制度について教えて」といった質問を投げかけ、AIが法改正や制度変更に関する情報を回答し、従業員の業務を支援することもできる。

こうした機能によってOBCが目指しているのは、AIにすべての業務を任せることではない。

「実務の中にAIが入ることによって、人がチェックしなければならなかったことをAIがチェックできるようになります。また、勘定奉行自体の操作を習熟しなければならない場合も、AIに聞けばメニューを駆動して画面を表示できます。既存の業務フローを維持したまま、その中にAIによる支援を組み込むことで、ご担当者の負担を減らしていくという考え方です」(石倉氏)

人事労務では申請業務をAIが支援

次に紹介されたのは、人事労務領域におけるAI活用だ。

  • 人事労務向けAI活用スタイル

従業員が毎日の勤怠を入力する業務では、打刻や残業申請、直行直帰の申請など、さまざまな手続きが発生する。その中で、たとえば勤務はしたものの、残業申請が漏れてしまうケースがある。

このような場合に、勤務体系や就業規則などの情報をAIに学習・参照させ、申請を支援する。

講演では、23時12分まで勤務しているにもかかわらず、残業申請が行われていないケースが例として紹介された。AIが勤務体系や就業規則を参照し、22時までを普通残業、それ以降を深夜残業として申請書を自動作成するシナリオが示された。

さらに、過去の入力履歴から、トラブル対応など以前に同様の状況が発生した際の理由を確認し、申請理由の入力を支援することもできる。

  • 勤務体系や就業規則などの情報をAIに学習・参照させ、申請を支援

「ご担当者はAIが作成した申請内容とその理由を確認し、自分の状況に合った内容であれば申請する。こうすることで、従業員側の申請業務を簡単にするとともに、労務担当者側でも申請漏れやミスへの対応を減らし、勤怠を締める作業時間の短縮につなげられるのです」(石倉氏)

ここでも、AIによって業務そのものを別のものに変えるのではなく、既存の申請プロセスの中にAIを組み込むという、OBCの考え方が貫かれている。

より専門的な業務を支援する「奉行AIエージェント」

OBCが進めているAI活用は、こうした業務アシスタントにとどまらない。講演の後半では、専門業務の実行を支援する「奉行AIエージェント」が紹介された。

  • なぜバックオフィスのAI活用は進まないのか? OBCが提案する「使うAI」から「業務を動かすAI」への転換

これまで紹介された給与や会計などのAIアシスタントが業務を支援するものであるのに対し、奉行AIエージェントは、専門的な業務をAIに任せるためのサービスだ。

その一例が「新リース会計識別クラウド」である。

新リース会計基準への対応に伴い、契約書が適用対象になるかどうかを確認しなければならないケースがあるとする。この場合、契約書をAIエージェントに渡すと、新リース会計基準の適用対象となる可能性を判定できる。さらに、監査法人に提供するレポートまでを作成してくれる。

もう一つ紹介されたのが「連結会計支援クラウド」だ。グループで連結決算を行う企業を対象に、グループ子会社の会計データを収集し、収集したデータをもとに内部取引の相殺処理を支援する。

「いずれもAIを『使う』のではなく、AIが業務の中で動くことで、ご担当者の作業を支援するサービスです。そして、私たちは今後その対象を徐々に専門性の高い業務へと広げていきます」(石倉氏)

石倉氏の講演から見えてきたのは、AI導入を目的に業務を大きく作り変えるのではなく、現在の業務プロセスをベースにAIを組み込み、日々の仕事の中で自然にAIの力を活用するというアプローチだ。

「使うAI」から「業務を動かすAI」へ。バックオフィス業務におけるAI活用は、単に生成AIを利用するだけでなく、既存の業務プロセスそのものにAIを組み込む段階へと進みつつある。OBCは「奉行」シリーズを基盤として、その具体的な業務スタイルを提案している。

<関連リンク>
製品・サービスに関するお問い合わせはこちら
『奉行クラウド』 製品一覧
『奉行AIエージェント 新リース会計識別クラウド』
『奉行AIエージェント 連結会計支援クラウド』

[PR]提供:オービックビジネスコンサルタント