2026年7月22、23の2日間、「日本DX大賞2026 サミット&アワード」が開催された。社会課題の解決やビジネスの持続的成長を実現するDXの取り組みを表彰し、日本全体のDX加速を目指すために始まった日本DX大賞は今回が5回目。DX大賞の表彰式や多彩なセッションが行われるリアル開催のサミット&アワードは2回目となり、1日目は自治体等の公共DXに焦点を当てた「パブリックDAY」、2日目は民間企業のDXを紹介する「ビジネスDAY」に設定された。本記事では、1日目のClaris International Inc.(以下、Claris)によるスポンサーセッションの模様をダイジェストで紹介する。
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Claris International Inc. 法人営業本部 セールスエンジニア 古谷 豪氏
標準化の流れから抜け落ちたすき間業務の悩み
Clarisのセッションは「標準化から漏れた業務の管理、どうしますか? 〜現場から始める自治体DXのすすめ〜」のタイトルで行われた。登壇した同社法人営業本部セールスエンジニアの古谷豪氏は、まず自治体における業務標準化の流れから振り返った。
古谷氏は、2021年に「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(標準化法)が成立し、国の号令によって自治体の基幹業務システムの統一及び標準化が進んでいる現状を解説。標準化により住民記録や税、社会保障といった対象業務は全国共通の仕組みに向かっており、各自治体でシステム運用に要するコスト構造の適正化やベンダーロックイン回避に向けた取り組みが進み始めているとしたうえで、次のように話した。
「対象業務の標準化が進む一方で、現場には各種申請の受付・集計や備品・資産の管理、施設点検、窓口記録など標準化の対象になっていない業務も多数あります。こうした業務は標準化のすき間に残り、今も職員がスプレッドシートや紙を使って個別に対応しているのが実態です。また、LGWAN接続系やマイナンバー利用事務系ネットワークではクラウドサービスを使えず、スプレッドシートに頼らざるを得ないのも『自治体あるある』ではないでしょうか」
そもそもスプレッドシートは表計算ツールであり、もちろん便利なシーンはあるものの、本来的に情報管理業務に最適とは言い難いと古谷氏。情報をスプレッドシートで管理することで「ファイルを探すのに時間がかかる」「日時違いの似たファイルが数多く存在する」「入力していた関数や計算式がいつの間にか削除されていた」といった落とし穴に陥り、業務に非効率が発生しやすいと指摘した。
とはいえ、その課題を解決するためシステム導入を検討しようにも「いくつかの大きな壁があることに気づきます」とし、導入までに長い期間を要する、オリジナルのシステム開発・運用・改修には大きなコストがかかる、既存クラウドサービスはLGWAN接続系/マイナンバー利用事務系ネットワークに非対応……という3つの壁を挙げた。
ローコードツール活用のヒントと注目の選択肢
では、自治体がこれらの壁を乗り越えるにはどうすればいいのか。古谷氏が提起するのがローコード開発ツールの活用である。
古谷氏は、ローコード開発ツールなら開発言語を使ったプログラミングを行うことなく、必要なパーツをドラッグ&ドロップするなど簡単なマウス操作でオリジナルのアプリケーションを作れるため、プログラマーやエンジニアでなくとも業務アプリを高速に開発できる点が強みだと説明。ボタンをクリックした際などの処理を簡単に自動化できる点もメリットとして示した。
「ローコード開発ツールを導入することで、自治体職員が自ら業務を効率化するアプリを開発できるようになります。効率化したい業務を最も理解している職員自身が開発するので、とにかくまずは作り、試しながら、自分たちの使いやすいアプリを仕上げられます。開発会社に委託する場合でも、ローコード開発ツールであれば一般的な開発手法より短納期、かつコストを抑えることが可能ですし、改修したい場合は自分たちで迅速・柔軟に修正できます」
このローコード開発ツールにより、自治体がシステム導入で当たる壁のうち2つ、すなわち期間とコストの問題は解決できると古谷氏。ただ、残るもう1つの壁、つまり自治体特有のLGWAN接続系/マイナンバー利用事務系ネットワークで使えるかという点に着目すると、一つの有力なソリューションが浮かび上がってくるとして、「本日は『Claris FileMaker』(以下、FileMaker)を紹介します」と力を込めた。
FileMakerが自治体DXに力を発揮する理由とは
FileMakerはClarisが開発するローコード開発ツールだ。古谷氏はFileMakerの特徴として次の3点を挙げた。
1つ目がツールの歴史の長さで、すでにリリースから40年以上。「長い歴史の中で、技術の進歩に合わせて一歩一歩着実に進化を遂げ、モバイル対応やクラウドサービスでの提供、最近では生成AIとの連携など、最新技術も活用できます」と語った。
2つ目は、iPhone/iPadやMacをリリースするAppleのグループ企業が開発したという点である。 「ClarisはAppleの100%子会社で、FileMakerもAppleの厳しい基準をクリアしており、安心して選んでいただけます。また全世界で100万人以上が利用し、もちろんWindowsでも利用できます。」
そして3つ目のポイントは、LGWAN接続系やマイナンバー利用事務系ネットワークでの利用実績を多数有することだ。 「実はFileMakerは、単なるアプリ作成ツールではありません。開発、共有、利用、統合といったアプリ活用に必要なすべての要素がオールインワンになっているプラットフォームで、他サービスとの統合や生成AIを活用した業務効率化機能も簡単に組み込むことができます。中でも自治体業務で重要なのが共有の部分で、FileMakerはクラウドだけでなく庁内にサーバーを置くオンプレミスでも活用できるため、クラウドが使えないLGWAN接続系/マイナンバー利用事務系でも情報共有が可能です」
古谷氏はこのように話し、FileMakerは3つの壁をすべて越えて、標準化から漏れたすき間業務も効率化できる強力なツールだと力説した。
プログラミング不要のアプリ開発をデモで披露
続いて古谷氏は、実際にFileMakerの画面を投影しながらアプリ開発のデモンストレーションを実施した。一例として視聴者の目の前で作成したのは、会員情報を管理するアプリだ。
「PCにFileMakerをインストールするだけで開発環境が整うので、シンプルに開発をスタートできます」と話す古谷氏。まずは会員情報を記録したExcelファイルをFileMakerのアイコンにドラッグ&ドロップし、アプリ名を付けてデスクトップ上に保存した。するとExcelファイルに登録されている会員番号、会員登録日、有効期限といったデータを基にアプリ化された画面が現れた。
その画面上にある検索ボタンを押し、性別欄に「男性」と入力して検索を実行すると、Excelファイル内にあったデータからすぐに検索が行われた。「このようにアプリとしての機能を開発することなく、FileMakerで管理する情報に瞬時にアクセスできるようになります」と古谷氏。アプリ画面を簡単操作でデザインする様子も披露した。
「画面上にあるオブジェクトを移動したり、大きさを変えたり、パレットから色を付けたりといった作業が、マウスの操作で直感的に、PowerPointでスライド一枚作るような感覚で行えます」
古谷氏は、iPadで利用できる会員情報管理アプリや写真管理アプリの作成もデモンストレーション。やや複雑な画面デザインや細かな設定まで含め、プログラミング不要の簡単操作で実演した。さらには、iPhone/iPad上で動作するアプリ「Claris FileMaker Go」から、作成したアプリを扱う様子まで丁寧に見せていた。
広島市と久留米市における活用の好事例を紹介
セッションの最後に、FileMakerを活用して自治体DXに取り組む広島市健康福祉局、久留米市(福岡県)企業局の事例が紹介された。
まず広島市は「現場主導型DXを体現した事例です」と古谷氏。トップダウンではなく現場職員の課題意識からスモールスタートした好例として、制度が複雑で属人化しやすい福祉業務で現在15個のアプリが稼働し、約300人の職員が日常的に利用していると紹介した。アプリ導入効果としては時間外勤務が月当たり約2時間削減、健診データ処理時間は約半分になり、監査での指摘率も33%から21%に改善したという。加えて、福祉に関わる機微な情報が閉域ネットワーク上で安全に管理されている部分も重要ポイントとして指摘した。
一方の久留米市は、上下水道事業の部署で活用している事例だ。ここでも業務が属人化・ブラックボックス化が課題となっていたが、システムを作り替えれば数千万円規模との見積もりに対し、FileMaker の運用を継続して職員自身が改修する体制へ切り替えたことで、その費用が実質ゼロに抑えられているという。 「注目点はその規模で、今では120以上のアプリが稼働しています。ベンダーに丸投げしない方針のもと、職員が自らの手で業務効率を高めるアプリを開発し、意思決定の精度と速度が大きく向上しました」
広島市、久留米市のいずれもFileMakerを単一業務のために導入したのではなく、アプリ数課金ではない仕組みを活かして数多くのアプリを作成しているという共通点があり、「アプリの稼働数が増えれば増えるほどコストパフォーマンスが向上していきます」と古谷氏。最後に「FileMakerはこの事例以外にも多くの自治体で活用されています」と紹介し、セッションを締めた。
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