業種や規模を問わず、さまざまな領域でAI活用の機運が高まっている。その背景には、少子高齢化にともなう働き手不足への対応策として、AI活用を検討する企業が増えていることがある。特にベテラン作業者の高齢化に加え、外国人労働者や短時間勤務者の活躍が広がりつつも総労働時間が増えていないことに悩む製造業においては省人化・省力化への取り組みが急務となっており、ロボットやIoTといった技術と並び、AIによる業務効率化に期待する声は高まっている。
とはいえ、工場をはじめ現場での活用が求められている製造業のAI利活用は、他の業種と比べて導入ハードルが高いのも事実だ。現場で生成される各種データを社外へ持ち出すことを禁止している企業も多く、クラウドを介して推論処理を行う一般的なAI活用が適用できないケースも少なくない。そこで注目されているのが、現場の端末で推論処理を行うことで、リアルタイム性とデータセキュリティを担保する「Edge AI(エッジAI)」の活用だ。
本稿では、60年以上にわたりグローバルの自動車メーカー、電子機器メーカーに半導体製品を供給してきたNXP Semiconductorsが開発・提供するエッジAI向けアプリケーション・プロセッサ、及びディスクリートNPUを取り上げる。同製品がエッジAIの推進にどのように貢献するのか、また現場の省人化・省力化を実現する具体的なアプローチについて紐解いていく。
人手不足やセキュリティ課題を背景に高まる製造現場のエッジAIへの期待
オートモーティブ(自動車業界)をはじめ、インダストリアル・IoT・通信インフラなど、さまざまな領域で先進的な製品を提供し続けてきたNXP Semiconductors(日本法人はNXPジャパン)。世界30カ国以上で事業を展開するグローバル企業である同社は、近年のビジネストレンドといえるAI/機械学習市場においても積極的な活動を続けている。特に現場に設置された端末上で処理を行う「Edge AI(エッジAI)」に着目しており、オートモーティブをはじめ、ビル&ホーム・オートメーション、ファクトリーオートメーション、ヘルスケアなど幅広い分野におけるAI活用を加速させる製品を市場に投入している。
NXPジャパン株式会社 インダストリアル&IoT営業統括本部 市場開発部 部長の早坂 学 氏は、エッジAIを取りまく市場の動向について次のように分析する。
「自動車業界では、自動運転やDMS(Driver Monitoring System:ドライバー監視システム)といった領域から、AI技術の活用が加速しています。また、インダストリアル分野においても、現場の働き手不足や属人化の解消を図るため、AIの導入を検討される企業は増加傾向にあります。しかしながら、どう活用すべきか、どれだけのコストが必要なのかといったところから悩まれている担当者も多いようです。特に製造業では、外部と接続する通信インフラがない工場もあり、一般的にクラウドAIと呼ばれるサービスが利用しづらいケースもめずらしくありません。また通信インフラが整備されている工場であっても、情報セキュリティの対応など、検討すべき項目は多岐にわたり、AI導入がなかなか進まない大きな要因となっています」(早坂氏)
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NXPジャパン株式会社 インダストリアル&IoT営業統括本部 市場開発部 部長 早坂 学 氏
実際、総務省が公開している「総務省令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」によれば、製造業においてAI/IoT機器・サービスを導入している企業は30.6%にとどまっており、導入予定があると回答した企業(13.0%)と合わせても50%に満たない状況だ。そこで同社では、高性能アプリケーション・プロセッサ「i.MX 95」と、ディスクリート(外付け)タイプのニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)「Ara240」を開発。機器メーカーに提供を開始するとともに、これらの製品を活用したAIのソリューション提案を進めている。
動画マニュアルやライブ監視映像を自然言語で検索できるエッジAIソリューションとは
NXPジャパンでは、自社製品の紹介にとどまらず、導入イメージを具体化するための提案活動にも取り組んでいる。早坂氏によると、今回ユースケースを提示した背景には、エッジAI市場が成熟途上にあり、エンドユーザー企業が具体的な活用方法やコスト感をイメージしづらいという課題がある。こうした状況を踏まえ、同社はAra240の高い推論性能を活かした『エッジAI-Box』を提案。製造現場で運用する動画マニュアルや監視カメラ映像を自然言語で検索できるソリューションとして訴求した。
「近年の製造現場では、継承すべき技能をマニュアル化・デジタル化することで属人化を解消しようという取り組みが進んでおり、工場内にある制御機器の操作について動画マニュアルを整備するケースがあります。一方で、動画は多くの情報を直感的に伝えられる反面、テキスト文書のように必要な情報を検索することができず、確認したい作業手順や場面を探すのに時間がかかるという課題がありました。
そこで弊社では、 i.MX 95とAra240を組み合わせることで、エッジ側でVLMを活用して映像コンテンツの意味理解を行い、動画マニュアルやライブ映像を自然言語で検索・解析できるビデオ・インサイト検索、つまり映像の内容を理解したうえで必要な情報を検索できるソリューション『エッジAI-Box』を提案しました。機器組込みPCや産業用PC上で、LLM(大規模言語モデル)やVLM(Vision-Language Model:視覚言語モデル)といったAIモデルを複数扱え、必要な映像を高速に検索することができます。
たとえばPLCにおけるエラー発生の場合に、数十分の動画マニュアルを最初から確認するのではなく、自然言語(テキスト・音声)で質問するだけで必要なシーンを見ることが可能となります。もちろんクラウド接続を必要とせず、現場内で映像データを処理できる点も特徴です。」(早坂氏)
早坂氏は、この『エッジAI-Box』は外国人労働者の増加への対応も支援できると説明する。日本語の動画マニュアルしか用意されていない現場でも、LLMが内容を自動で翻訳することで、トラブル発生時に必要な情報を素早く検索できるため、対応時間の短縮につながるという。
『エッジAI-Box』によるビデオ・インサイト検索デモの様子
また本ソリューションをライブ監視カメラと組み合わせることで、作業者の入退所管理や製造物の品質・状態管理、製造ラインの異常・インシデント対応などにも利用できるという。
エッジAIを支える性能・セキュリティ・長期供給体制
グローバルな半導体ベンダーとして市場を牽引するNXPが開発したi.MX 95とAra240は、パフォーマンスや信頼性、セキュリティといった側面においても、競合製品と比較してアドバンテージがある。前者はエッジ・コンピューティング向けに設計されたアプリケ―ション・プロセッサで、マルチコア処理や接続性に優れており、さまざまな機器と組み合わせてエッジAIを実現する。プロセッサ単体でも8eTOPS* (equivalent TOPS: AI推論時の実効性能) のAI処理性能を備えているほか、セキュリティ機能も大きな強みだ。チップ内には、アプリケーション処理領域から分離された専用のセキュリティ領域「EdgeLock Secure Enclave」を搭載。ハードウェアを信頼の起点 (RoT) として、セキュア・ブート、鍵管理、暗号化、認証、セキュアな通信やソフトウェア更新など、機器のライフサイクルを通じた保護を支援する。これにより、CRA(欧州サイバーレジリエンス法)をはじめとする各種サイバーセキュリティ規制への対応が求められる製品開発を支えている。
後者は、i.MX 95、もしくは他のプロセッサと組み合わせて利用できるディスクリートNPUであり、最大40eTOPS*のAI処理性能を備えている。マルチモーダルのワークロードを支えるアーキテクチャで構成されており、エッジ上で大規模かつ複雑なAIモデルを円滑に処理することができる。同社では、Ara240を実装した評価用M.2モジュール用意しています。また、パートナー企業から量産用モジュールが提供されており、現場で使われている既存の産業用PCに組み込むことも可能。もちろん、セキュア・ブートをはじめ、産業用途に即したセキュリティ機能も実装しており、AI利活用のさまざまなアイディアを具現化するパフォーマンスと製品開発の自由度を持つ製品に仕上がっている。
「エッジAI向けのアプリケーション・プロセッサやディスクリートNPUを開発・提供しているのは弊社だけではありませんが、弊社ならではの強みとしては、インダストリアル分野で非常に重視される長期供給に対応していることが挙げられます。産業向け半導体製品を扱うベンダーの多くは製品の長期供給を謳っていますが、本当に10年、15年と供給し続けた実績を持つところは非常に少ないのが現状です。PhilipsからNXPへ、MotorolaからFreescaleを経てNXPへ続く数十年の供給実績は大きなアドバンテージになっていると考えています」(早坂氏)
開発ボード・ツールも提供し、エッジAIの活用拡大を支援
NXPは、今後も企業がエッジAIを導入・活用しやすい環境づくりを目指し、製品およびソリューションの強化を継続するとともに、具体的なユースケース提案を進めていく予定だ。前述したAra240 評価用M.2モジュールをはじめ、i.MX 95を搭載したコンパクトで低コストな「FRDM-i.MX 95 開発ボード」やAIソフトウェア開発環境といった開発者向けのツールも提供されており、マウザーのECサイトを経由して購入してすぐに開発することができる。
「今回我々が提示したソリューション『エッジAI-Box』では、おもに製造現場での活用例に挙げましたが、自然言語で映像データから適切かつ迅速に情報を引き出せるというソリューションの強みは、省人化・省力化が求められる医療/介護や物流の現場など、多様な領域で大きな効果が期待できるものです。今後も単なる半導体ベンダーとしてではなく、機器メーカー、エンドユーザー企業の皆様にエッジAIのソリューションを提案し、社会に貢献していきたいと考えています。マウザーのECサイトを利用することで弊社製品を短納期で購入できますので、ぜひ一度試していただければと思います」(早坂氏)
機器メーカーやエンドユーザー企業のニーズに応えるアプリケーション・プロセッサ、ディスクリートNPUを提供するNXPジャパン。属人化や技能継承といった課題解決に寄与するエッジAIソリューションを通じて、今後どのような提案を打ち出していくのか、その動向に注目したい。
マウザーのECサイトからエッジAI向けプロセッサを購入可能
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1,200社以上の大手メーカーと提携し、世界最大級の半導体・電子部品の品揃えを誇るオンライン正規代理店であるマウザー。世界28カ所に拠点を構え、製造元工場から直接仕入れた製品を提供する同社が運営するECサイトでは、アプリケーション・プロセッサ「i.MX 95」と「FRDM-i.MX 95 開発ボード」、ディスクリートNPU「Ara240」と「M.2モジュール開発ボード」を購入することができる。
i.MX 95アプリケーションプロセッサ
Ara240ディスクリートニューラルプロセッシングユニット(DNPU)
FRDM-i.MX 95 開発ボード
Ara240 16GB M.2モジュール開発ボード
[PR]提供:マウザー




