2026年7月15日~17日に、東京ビッグサイトで開催されたメカトロニクス・エレクトロニクス関連の総合技術展示会「TECHNO-FRONTIER 2026」において、米国の電源コンポーネントメーカーVicorは、展示ブースを出展し、48V電力供給ネットワークを支える高性能電源モジュールを紹介した。

また7月16日には、Vicor株式会社 シニアフィールドアプリケーションエンジニア 西川 浩二 氏が出展社セミナーに登壇。次世代航空機をはじめとする航空宇宙・防衛分野を対象に向けた、270Vおよび28Vアーキテクチャへの電源アプローチについて解説した。本記事ではセミナーの模様をレポートする。

  • (写真)Vicor株式会社 シニアフィールドアプリケーションエンジニア 西川 浩二 氏

次世代航空機・防衛システムに不可欠な「SWaP-C」の最適化

まず、西川氏は、同社が40年以上にわたって実績を築いてきた航空宇宙・防衛分野における電源設計の課題と、それらに対応するVicorの技術について解説した。VicorはグローバルのTier1防衛企業の75%以上と提携しており、同社の製品は、リスト規制品目に該当しない汎用分類(EAR 99)でありながら、MIL-STD-810G、MIL-STD-1275D、MIL-STD-704F、MIL-STD-461Fなどの米国防総省規格への対応を考慮して設計・製造されている。

現在、航空宇宙・防衛分野の電源システム設計において最大の課題となっているのが「SWaP-C(※1)」の最適化である。航空機や防衛システムでは、ペイロードを最大化するために、電源は極限まで小型・軽量であることが求められる。同時に、レーダーの高度化や電子戦システムの進化により、扱う電力は増大の一途をたどっている。
※1:Size(サイズ1)、Weight(重量)、Power(電力)、Cost(コスト)の頭文字を取った防衛・航空宇宙分野の用語。機器の小型化・軽量化と高性能化、コスト抑制を同時に実現することが求められる。

  • (画像)防衛システムの高度化を支援

「サイズと重量は最小に抑えながら、最大の電力容量を提供しなくてはなりません。Vicorの防衛向け電源モジュールは、競合製品と比較して約6倍の電力密度を実現しています。これにより、270Vや28Vといった航空機の標準バスからの電力供給ネットワークにおいて、最も効率の良いソリューションを提供できます」(西川氏)

  • (写真)Vicor株式会社 シニアフィールドアプリケーションエンジニア 西川 浩二 氏

    Vicor株式会社 シニアフィールドアプリケーションエンジニア 西川 浩二 氏

過酷な環境を耐え抜くMIL-COTS製品群

同社は、民生用の高性能な既製品をベースに、軍事規格の厳格な信頼性と堅牢性を満たすように強化・拡張したMIL-COTS(Militarized Commercial Off-The-Shelf)製品を幅広く展開している。

  • (画像)MIL-COTS製品ラインナップ

たとえば、絶縁型DC-DCレギュレータのDCM™シリーズは、標準バスである270Vや28V入力に対応。ノイズやサージ対策のためのフィルタモジュールであるMFM™と組み合わせて使用することで、ノイズ(EMI)規格であるMIL-STD-461や、電源特性規格である1275などの要件を最小限のフィルタ構成でクリアできるようになるという。さらに、電圧変換比が固定された絶縁型中間バスコンバータであるBCM®シリーズは、最大800Vの入力電圧に対応し、ピーク効率98%という極めて高い効率で電圧変換を行う。POL(Point of Load)で多様な電圧を作り出すPRM™とVTM™も、並列動作によるスケーラブルな設計に対応する。

設計期間を短縮するVPX標準電源 - VITA 62/SOSA準拠

セミナーの目玉となったのは、VITA 62およびSOSA(Sensor Open Systems Architecture)規格に準拠したVPX標準電源システムだ。

VPXは、防衛・航空宇宙向けの組込みコンピューティングで広く用いられるオープン標準規格で、3U/6Uのカード形状を採る。VITA 62はそのシャーシに実装する電源モジュールの機械的・電気的仕様を定めた規格であり、SOSAはThe Open Groupが策定するセンサーシステム向けのオープンアーキテクチャだ。ピン配置やサイズが標準化されているため、設計者は個別に電源を作り込む必要がなく、システム全体の設計・認定にかかる期間を短縮できる。

  • (画像)VITA 62/SOSA準拠 標準規格電源

Vicorが提供するVPX標準電源は、入力18-42V/18-45V/220-320V、出力28/12/5/3.3/−12V、出力は3Uで750W、6Uで1000Wに対応。過電流・過電圧・過熱保護を備え、MIL-STD-704F/461G/810G/1275Eに適合する。西川氏は、その信頼性の高さを次のように説明した。

「標準スロット向けの電源モジュールを使用することで、システム設計期間を大幅に短縮できます。何より、寿命や熱のボトルネックとなりやすいアルミ電解コンデンサを一切使用していないため、カードエッジ温度85℃という過酷な温度環境下でも最大出力を維持できる、非常に高い信頼性を誇ります」(西川氏)

  • (写真)VPX標準電源システムを解説する西川氏

    VPX標準電源システムを解説する西川氏

Vicorでは、豊富なラインアップを取り揃えているだけでなく、ビジネスケースに応じたSOSA規格のカスタマイズにも対応しているという。西川氏は「もしご所望の電圧や出力仕様の製品が現在のラインアップにない場合でも、開発中の製品からのご提案やカスタマイズの検討を含めて柔軟に対応できるため、ぜひお問い合わせいただきたい」と呼びかけた。

無人機からレーダーまで、多様なアプリケーションを支える

これらの高密度・高信頼性電源モジュールは、すでに多岐にわたる防衛アプリケーションで採用されている。

C5ISR(Computers, Command, Control, Communications, Cyber, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance:コンピュータ・指揮・統制・通信・サイバー・情報・監視・偵察)システムをはじめ、レーダーや電子線、電気光学/赤外線センサー(EO/IR)、ミサイル防衛システムなど、その活躍の場は広い。C5ISRでは主に28Vバスから12Vなどへの低電圧変換が中心となり、前述のMFM™とDCM™の組み合わせが、EMI・サージ対策として防衛関連製品で幅広く採用されている。

特に、ドローンなどの無人機においては、800Vや48Vのバス電圧を用いた高効率な電力伝送が行われている。一般に、給電電圧を高電圧化することで、同じ電力を送るための電流値を下げることができ、給電ケーブルを極限まで細く軽量化することが可能になる。この高電圧化と、モジュール自体による徹底した軽量化・省スペース化の相乗効果が、無人機の航続距離や滞空時間の劇的な延長に直結するのだ。有線タイプでは、800Vから48Vへの双方向変換モジュールを用いた高電圧での電力伝送が行われ、48Vや28Vを経由してコントローラやセンサー、AIプロセッサへ電力が供給される。

高電圧変換の中核を担うのは、電圧変換比固定のBCM®モジュールだ。「BCM4414」は、入力電圧を1/16に降圧しつつ入出力間を絶縁する製品で、入力500-800V、出力31.3-50V、最大出力1.75kW、ピーク効率97.7%を、110.5×35.5×9.4mm・重量145gの小型パッケージで実現する。また、「BCM6123TD1E5135」は、384V系(260-410V)から48V系を作り出すKファクタ1/8のバスコンバータで、61×23×7mmながら最大1750W、効率最大98%に達する。

  • (画像)BCM4414 電圧変換比固定DC-DCコンバータ
  • (画像)BCM6123TD1E5135 電圧変換比固定DC-DCコンバータ

負荷が急激に変動するアプリケーションには、また別のアプローチが用意されている。

「レーダーや、レーザー等の指向性エネルギーシステムのように、負荷が急激に変動するパルスロード・アプリケーションでは、高い周波数で動作し、高速な過渡応答を実現するVicorのPRM™とVTM™の組み合わせが最適です。個別のディスクリート部品を組み上げて電源を設計する場合と比べて、圧倒的に高い周波数で動作させることができるため、大容量の負荷変動時でも電圧変動を瞬時に抑え、安定した電力を供給します」(西川氏)

電圧変換比は固定となるが、大出力用途ではBCM®シリーズをパワーアンプ用電源として採用した実績もある。このほか、航空機・陸上・海中の車両に搭載される電子機器へ270V/28Vバスから電力を供給するプラットフォーム電源では、VPX標準電源を用いて複数系統の負荷へ電力を分配する構成が示された。ミサイル防衛では、ノイズを嫌う高感度な受信機や特定の処理用IC向けに、絶縁型コンバータによって高精度なマイナス電源を供給する事例も紹介された。

全産業へ波及する48V化のトレンド

Vicorは「TECHNO-FRONTIER 2026」において、3日間にわたり異なるアプリケーションをテーマとするセミナーを開催した。初日は産業機器・ロボティクス向け、最終日は車載向け、そして本記事で紹介した防衛向けと、それぞれの市場における電源技術の最新動向を解説した。

配線損失の低減と高効率化を実現する48V化は、通信業界からHPC(高性能コンピューティング)、データセンター、EVへと広がり、現在はロボティクスなどのインダストリアル分野へも波及している。今後は、防衛分野でも48Vが主要な電源アーキテクチャの一つとして検討・採用が広がるとみられている一方、用途によってはさらなる高電圧化も進んでいくと考えられている。

  • (写真)48V化のトレンドについて解説する西川氏

    48V化のトレンドについて解説する西川氏

このように48V化がさまざまな市場へ広がる中、高電力密度・高効率な電力変換技術の重要性はますます高まっている。そうしたニーズに応えるのが、Vicorの電源モジュールだ。数百の部品を要するディスクリート設計や、柔軟性に欠ける従来型のボックス電源であるシルバーボックスに代わるソリューションとして他社製品比で最大10倍の電力密度を実現。基板面積の削減や、熱設計の容易化に加え、並列動作によるスケーラビリティの向上、開発期間の短縮を可能にする。

  • (画像)Vicorの技術革新

Vicor独自のアーキテクチャと製造プロセスが、同社製品の差別化を支えている。同社の「FPA™(Factorized Power Architecture)」は、従来のコンバータが担っていた電圧安定化と電圧変換・絶縁の機能を分割し、システム全体の電力損失を最小化する。これに「SAC™(Sine Amplitude Converter)」トポロジと低ノイズのZVS(ゼロ電圧スイッチング)を組み合わせることで、高周波動作でありながら高い効率を維持する。そしてマサチューセッツ州にある本社併設の自社工場で製造される独自の「ChiP™(Converter Housed in Package)」パッケージが、これらを放熱性に優れたフラットなモジュールとして形にする。

「開発拠点と製造工場が同じ場所にある垂直統合型システムにより、継続的な技術革新が可能になっています。2012年に厚さ6.3mmで0.07A/mm²だった電流密度は、2025年の第5世代製品では厚さ1.5mm、3A/mm²と、約40倍もの進化を遂げています」(西川氏)

  • (画像)世界最高水準の高電力密度モジュール

過酷な環境での信頼性が求められる航空機・防衛システムから、生成AIを支えるデータセンターまで。電力需要の増大と小型化という両立が難しい課題に対し、独自技術でイノベーションを生み出し続けるVicorの電源ソリューションは、これからも次世代のシステム設計を牽引していくことだろう。

  • (写真)セミナー内で紹介された絶縁型中間バスコンバータBCM4414/BCM6123 と TECHNO-FRONTIER 2026のVicor展示ブース

    (画像左)セミナー内で紹介された絶縁型中間バスコンバータBCM4414/BCM6123
    (画像右)TECHNO-FRONTIER 2026のVicor展示ブース

Vicorの航空宇宙・防衛向け電源について、もっと詳しくはこちらから

Vicor Corporationについて

Vicor Corporation(NASDAQ:VICR)は、先進的な48V中心のDC-DCコンバータ電源モジュールを製造する米国企業です。高い電力密度と電流密度を実現し、優れた電力供給ネットワーク性能と、お客様の電源システムにおける競争優位性を生み出します。Vicorは、革新的なトポロジ、制御システム、コンポーネント、パッケージ技術を組み合わせ、データセンター、オートメーション、ロボティクス、モビリティ、試験装置、航空宇宙・防衛分野の進化を支える、モジュールで構成するソリューションを提供しています。また、Vicorは、垂直統合型のChiP™工場とOEMへのIPライセンス提供を通じて、サプライチェーンの安定性を高めています。

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Vicor、BCM®は、Vicor Corporationの登録商標です。
DCM™、MFM™、PRM™、VTM™、SAC™、FPA™、ChiP™は、Vicor Corporationの商標です。

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