生成AIの普及により、メモリやストレージの世界的な逼迫が続いています。部材調達の遅れから納期が長期化するケースも多く、希望のPCを思ったタイミングで手に入れにくい状況です。

そうしたなかでも、マウスコンピューターはノートパソコンで最短3営業日、デスクトップで最短4営業日からの出荷を維持しています。なぜ、メモリ不足や価格高騰といった厳しい供給の状況下で、この納期が守れるのでしょうか。

購買部の千葉氏と、製品部の中野氏に、マウスコンピューターが短納期を実現できる理由について聞きました。

短納期のPCをチェックする

▼お話を聞いた方
購買部 千葉ゆき江氏(写真左)
2022年12月~現在
メモリ調達および需給管理、販売計画に基づく在庫・調達フォーキャストの策定とパートナー交渉を担当。

製品部 製品管理室 中野颯月氏(写真右)
2022年1月~現在
製品価格・納期の調整、部材変更対応、製品発売準備およびスケジュール管理を担当。

いま、PC業界に何が起きているのか

――近年のPC業界は、メモリの不足や価格高騰などがたびたび話題になっていますが、現在はどのような状況なのでしょうか。

千葉氏:半導体は世界中の工場が連携して作られるので、どこか1カ所で問題が起きれば全体に影響が及びます。

非常に簡単に言うと、メモリの世代交代や生成AIの登場が大きな要因となっています。例えば、PCのメインメモリでは、長く使われてきたDDR4について、昨年の今ごろに大手DRAMメーカーからEOL(End of Life:生産終了)が発表されました。そこで、生産が止まる前に確保しておこうと、DDR4のパニック買いのような動きが出てきたのです。

加えて、近年生成AIが登場し、大量のメモリやストレージが必要になりました。半導体メーカーはAI向け製品の生産を優先するようになり、一般的なPC向けのメモリが不足するようになったのです。

――現場ではどんな影響が出ていますか。

中野氏:メモリ価格の高騰は本当に大きく、製品価格を毎月のように改定する状況が続いています。2025年末ごろからは、希望の構成では販売できない製品も出てきました。これは弊社に限った話ではなく、業界全体で起きていることです。

短納期を支える飯山工場のセル方式とは

――そうした状況下でも、マウスコンピューターでは変わらず短納期を維持しているとお聞きしています。

中野氏:納期は、ノートパソコンが最短目安3営業日、デスクトップが4営業日でのお届けですが、一部の製品では、有償オプションの選択により翌営業日に出荷するサービスもご提供しております。

お届け日数について

翌営業日出荷対応製品をチェックする

――PCは仕事や生活を支える必需品ですから、早く届くとお客様としてもうれしいですよね。なぜそれだけの短納期を実現できるのでしょうか。

千葉氏:理由の1つは、飯山工場です。ベルトコンベアによる流れ作業(ライン生産)ではなく、セル方式という組み立て方法を採用しています。1人または少人数のチームが、最初から最後まで担当する方式です。これにより柔軟な工程変更が可能なため、受注製品の傾向や日別の受注数の可変が発生した際にもスムーズに適応でき、注文確定から出荷までを無駄なく回せます。これは飯山工場で長年蓄積されたノウハウによる部分が大きいです。

需要の先読みとパートナーとの関係構築で、着実な部材調達を担う購買部

――ただ、そもそもパーツが不足したりすると、短納期を実現することは難しいですよね。その意味では、特に不足しがちなメモリの調達も重要なのではないかと思います。千葉さんが担当されている調達業務について教えてください。

千葉氏:私はメモリの発注、パートナーからの納品スケジュール管理、需給バランスの確認を担当しています。平時は、社内の在庫数と使用数の過不足を週次で確認するのが基本です。

並行して、営業の販売計画にも目を通しています。先々の販売予測からメモリの使用量を予測し、複数の調達パートナーと共有する、という流れです。

――調達パートナーとの関係構築は、どのように行っていますか。

千葉氏:主要パートナーとは、四半期に1回程度の頻度でQBR(Quarterly Business Review)を行っています。経営層同士が顔を合わせて、両社の課題解決の協議や調達目標の進捗確認をする機会です。

大事なのは、平時からしっかり関係を作っておくこと。共通の販売目標を持って、お互いの状況を常に共有していると、供給がタイトになった時にも相談しやすいです。国内パートナーも海外パートナーも同様に連携しています。

――非常時にはどう対応していますか。

千葉氏:年末のようにメモリの逼迫が深刻になる時期は、週次だった確認作業を日次に切り替えました。在庫数や受注状況、パートナーから入る情報など、確認できるものはできる限り見ています。

――千葉さんが業務において、大事にしていることは何ですか。

千葉氏:人とのつながり、人間関係をきちんと作っておくことを大事にしています。私はもともと営業部にいたので、調達パートナー側で対応してくださる営業の皆さんの気持ちが、よくわかるんです。だからこそ、大変なときはお互いに相談できる関係を作りたいと思っています。

価格、納期、構成など、製品に関する調整を担う製品部

――購買部がメモリを確保しても、それを実際にお客様の手元へ届く製品として組み上げるまでには、価格や納期、構成の決定など、多くの調整が必要かと思います。その役割を担うのが製品部だとお聞きしました。中野さんが担当されている業務について教えてください。

中野氏:製品部の業務は多岐にわたりますが、大きく分けると、製品価格の調整、製品納期の変更対応、部材に起因する構成部材変更や販売調整対応、製品発売準備とスケジュール調整、部材在庫管理です。

最終決裁は製品部単独ではなく、他部門と分担しています。製品価格は製品部が提案して営業部とともに決定、納期日数の判断は購買部。そして、実製品への適用対応は製品部とEC営業部が行います。部材品質状況の情報展開は品質管理が行い、それを受けて使用部材変更や販売停止の判断を製品部が進めます。製品部は、それぞれの判断を実際の製品ラインナップに反映していく役割ですね。

――購買部との情報共有はどのように行っていますか。

中野氏:製品ロードマップを作成して、各ブランド(Mouse、MousePro、G TUNE、DAIVなど)の販売計画を、早めに購買部に共有しています。「どのブランドをどれくらい売っていきたい」「次のどの部材の調達が必要になる」といった情報を、できる限り早く出していく考えです。

千葉氏:私たち購買はパーツ単位で在庫や使用量を見ていますが、製品部はモデルやブランド単位で販売状況を把握しています。同じ「メモリ」でも見え方が違うんですね。両方を週次で突き合わせるほか、月次では営業チームも入って需要計画と販売計画を共有します。縦割りではない横のつながりが、弊社の強みです。

――価格については、どのように考えていますか。

中野氏:販売履歴のデータから、お客様が手に取りやすい価格帯を分析しています。とはいえAI需要の影響で、メモリ部材の価格が大きく上がったケースもあり、そのままでは、お客様が買いづらい価格になってしまう状況です。

そこで、これまで快適性を高めるためにメモリを多めに搭載していた構成を、手に取りやすい価格になるよう調整するなど、性能と価格のバランスを毎月のように見直しています。

――中野さんが業務において、大事にしていることは何ですか。

中野氏:お客様の希望に沿う製品をいち早くお届けすること、そしてWebに載せる製品情報が正確であることに責任を持つことの2点です。

  • お話を元にまとめた製品出荷までの流れ ※実際のフローを簡略化したものとなります

    お話を元にまとめた製品出荷までの流れ ※実際のフローを簡略化したものとなります

メモリの供給が不安定になった「DDR5 8GB危機」をどう乗り越えたのか

――直近のメモリの逼迫について、購買部としてはどのような対応をされたのでしょうか。印象に残っているエピソードを教えてください。

千葉氏:メモリ市場全体でのサプライ悪化の兆候を掴んだ段階で、評価メモリ数と認定型番(※)を増やし、調達の選択肢を広げたのです。評価期間短縮のため、開発リーダーが海外パートナーのところへ赴き、評価を進めることもありました。
※マウスコンピューターの製品に正式に採用できる、評価をパスしたメモリ型番

――かなり早い段階から動かれていたんですね。

千葉氏:はい。それでも追いつかない局面では、調達パートナーの経営層に直接アロケーション(供給割当)の交渉をしました。上司による現地交渉のおかげで、一定数のアロケーションを確保できたのです。

現地で直接対話する大切さをあらためて感じました。普段からQBRなどで関係を築いていたことも大きかったと思います。

ただ、こうした取り組みを行っても、DDR5の8GBは特に需給が逼迫し、価格が急騰するなど厳しい時期がありました。

――その際に製品部としては、どんな対応をされたのでしょうか。

中野氏:この時期はノート担当もデスクトップ側に応援に入って、全社的に対応しました。

年度末で注文が増えていたことに加え、法人のお客様は構成に変更があると見積もりや稟議を取りなおす必要があります。そうした事態を避けたかったのです。

一方、個人のお客様向けには2つの対応を進めました。1つは、「メモリ倍増キャンペーン」で、8GB×1枚の構成を、同じ価格で16GB×1枚にアップグレード。もう1つは、メモリ構成の変更で、8GB×2枚(16GB)を、16GB×1枚へ切り替えました。製品ごとに対応を分け、お客様に継続して製品をお買い求めいただけることを最優先に取り組みました。

――結果として、納期や販売にはどんな影響が出ましたか。

千葉氏:12月から26年6月時点で、メモリ関連の欠品は発生せず、なんとか乗り切ることができました。

中野氏:メモリ倍増キャンペーンでは、結果として販売数も伸びました。価格を据え置いてメモリ容量を倍にできたことで、お客様にも喜んでいただけたと思います。

――今回の一連の対応で、千葉さんは四半期の社長賞を受賞されたと伺いました。

千葉氏:はい、ありがたいことに受賞させていただきました。他社さんでもメモリ調達がかなり厳しいと聞いており、そのなかでも先回りで必要量を確保し続けた点を評価していただいたようです。

――とはいえ、「とにかく買えばいい」というわけではないですよね。

千葉氏:そうですね。パソコンのパーツは「生もの」と言われ、世代がどんどん新しくなっていきます。大量に買っておいても、古くなれば価値が落ちることもあるのです。そのため、市場動向やパートナー動向、販売計画などを踏まえながら、調達のタイミングと量を判断しています。

「スピードは品質の一部」の考え方で高品質と短納期を両立

――短納期を維持しながら、品質を担保し続けるのは簡単ではないと思います。マウスコンピューター様ではどう両立されていますか。

千葉氏:弊社の社長からは、「スピード」と「品質」の両方を常に求められています。早いから品質が落ちるのではなく、スピードも品質の一部という考え方です。

具体的な社内ルールとして、「24時間ルール」があります。社内外問わず、メールや問い合わせには24時間以内に一次返信をするというルールです。すぐに結論が出せない件でも、まず受け取った旨を返すことを重視しています。

――品質面では、どのように担保されていますか。

千葉氏:仕組み化することで、人によって品質が変わらないようにしています。品質試験は複数行い、どこかで引っかかれば、出荷はしません。スピードを求めるからこそ、仕組みで品質を担保することが大事になるのです。

国内生産の強みは、お客様への届けやすさと高い信頼性

――マウスコンピューターは国内で生産、出荷されています。国内生産のメリットを、どう感じていらっしゃいますか。

千葉氏:国内に工場があるからこそ、お客様の手元に製品をお届けしやすい、というのが一番大きいと思っています。受注から生産までがスムーズなので、構成変更や緊急対応もしやすいのです。

それから、「日本国内で作られている」という安心感をお客様に持っていただけることも大きいです。サポート体制も含めて、信頼につながっていると感じます。

ーー本日はありがとうございました。

納期だけではない安心して選べる理由

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BTOとは?

国内工場による品質の高さ
製品は長野県飯山市の工場で開発・製造されており、品質管理の面でも信頼性の高い体制を構築。インタビューでもお話いただいたように、「日本国内で作られている」という安心感が、ユーザーから支持されている理由の1つとなっています。

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